はつゆきさくらの原型。新島夕の色がかなり濃い
特に後半は怒涛の新島夕。
メインライター博恵夏樹となっているので敬遠されがちだが大部分を書いているのは新島夕で間違いない。
彼の執筆した文章をメインライターが手直しているため文章はそちらの癖が出ているものの、内容はに関しては、既存作品と比較してもいちにを争うくらいに彼の色が濃い……というか『はつゆきさくら』の原型では?
企画を本人がして、文章をリライトさせなければ、おそらくあれ。
はつゆきさくらで伝えたかったことの解説編、と言っていいかもしれない。
新島夕の作品が好きならぜひぜひ。
購入の際に気をつける点として以下。
・ジャンケンみたいなゲームパートがあり、それが結構難しいのでクリアできない人が出るかも
・ゲームパート敗北=凌辱BADなので基本的に凌辱は回避できるが、回避不能な凌辱シーンもある
評価を落としている点はおそらくここ。
シナリオは良い、けどゲーム部分が難しくて今の時代にはめんどくさい。
あとプレイ時間の短さと抜きゲーを期待した層からの反発かな。
それらを考慮しても、この点数帯にいる内容とは思えないのでデータ数が増えれば上がっていくと思う。
ゲーム部分に関してはクリアデータを拾ってきてあてればスキップ可能。最悪そうするのも手段の一つ。
ただし、ニージェルートで既読と未読文章が入り混じるので、それはそれでスキップする時にめんどくさいことになる覚悟が必要。
という感じで、新島夕作品をコンプリートしたので勝手に分類していこうと思う。
個人的な感想であり、色が濃ければ良いというものではないので悪しからず。参考程度にどうぞ。
▼ 新島夕成分表(数字が大きいほど高濃度) ▼
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
5 『魔女こいにっき』『聖炎天使エレアノール』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4 『はつゆきさくら』『恋×シンアイ彼女』『アインシュタインより愛を込めて』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3 『Summer Pockets』『ナツユメナギサ』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2 『Coming×Humming!!』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1 『キサラギGOLD STAR』『閃光のクラリアス』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【魔女こいにっき】
新島夕版『Forest』。本人の言うとおり実験作。新島作品の中で、かなり異端な作品。手加減せず、やりたいようにやったやったんだろうなぁという一作。
【聖炎天使エレアノール】
処女作なので一般受けするように調整することを忘れていた作品。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【はつゆきさくら】
一般人にも受け入れられるように、うまく落とし込んだ『聖炎天使エレアノール』。
【恋×シンアイ彼女】
ファンタジーなしの挑戦作。キャラゲーを期待した層によって炎上させられたが、恋、それと本人の作家性について追及されていて、新島夕が好きならぜひやるべし。
【アインシュタインより愛を込めて(+APOLLOCRISIS)】
過去作の要素を踏まえつつ新境地のSFバトルを混ぜ込んだ作品。無印は「アクセルを踏み抜き空へ飛んだものの客を乗せ忘れており、滑空する姿を客が見送った」みたいな作品。無料配布のアポロクライシスで客を乗せに戻ってきたので客も満足できるはず。個人的に恋カケの先の物語が描かれている気にするアペンドでした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【Summer Pockets】
物書きとしての技術は向上したが、ブランドのためか、読者受けするように成分を弱めている。
【ナツユメナギサ】
技術的につたない部分はあるものの本人の色がよく出ている。ライターを意識してもらえるようになった出世作。『ナツユメナギサ NOSTALGIE』という新島夕執筆の続編小説の存在はあまり知られていない。番外編ですが、その後の主人公にスポットが当たっていて正統な続編でもあります。好きならぜひ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【Coming×Humming!!】
主人公が『はつゆきさくら』のそれ。やさぐれた主人公が作るあのシュールなギャグが好きなら合うはず。担当シナリオも色がよく出ている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【キサラギGOLD STAR】
鬱を書こうとしたら会社から止められてキャラゲーを強要、ささやかな反抗としてバカゲーに仕上げてきた異色作。彼が似たような作品に挑戦することは、おそらくもうない。逆に稀少かも。
【閃光のクラリアス】
戯画に渡されたプロット通り書いただけかな。キャラの会話に“らしさ”を感じられるが、内容や展開はファンが求めているものではない。色は一番薄い。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
すべて終えて思うのは、『はつゆきさくら』が過去作の集大成として執筆されたものだった、ということ。
主人公には癖の強い『Coming×Humming!!』の主人公を、シナリオの主軸に『聖炎天使エレアノール』を置いて、『キサラギGOLD STAR』のいちかルートも交えつつ、『ナツユメナギサ』で締める。
monetが歌う『Coming×Humming!!』のOPで始まり、monetが歌う『はつゆきさくら』のEDで四季シリーズは卒業を迎える。
『はつゆきさくら』の発売前まで、本人はライター業をやめて裏方にまわるつもりだったようなので、そういう意味でも集大成だったのではないかと今更ながら思う。運命なのか、その最終作が反響を呼び、ライター業を続けることになるわけですが。
とまあ、ライター新島夕に対する所感はこんな感じで。
成分が濃いほど一般受けはしないが刺さる人にはとことん刺さる。
君は届くかな、あの大いなる頂に――――さあ、君も最上階を目指してみよう!