登場人物になり切って世界を探索するRPGと選択肢によって物語を紡いでいくADV、同時に成り立ちえないような二つのジャンルが言葉の最たるもの……会話によって橋渡しされる様は、ゲームの新たな可能性を見せられたようだった。終末SF×群像劇に少女漫画張りの恋愛成分、ミステリ的趣向も盛り込まれた贅沢な作品。ただ、とっつきづらい作品ではあると思う。
発売されてすぐに買ったのだが結果としてクリアまでに2年9カ月かかりました。このゲーム、進め方も勧め方も解りづらくないっすか……? 妙に不親切、というか、ものすごく好意的に解釈するのならば「物語消費へのアンチテーゼ」ってかくらいに分かりにくい。アンチテーゼってそれがどうアンチなのか書くのが感想なんでしょうが言葉に窮しています。面白かったのは面白かったし高評価なのですが、なかなか魅力を説明しにくい。
十三人もの主人公、終末SF、少女漫画要素、ミステリ的仕掛け、錯綜する時系列に乱舞する専門用語、複雑な世界観設定と全体的に難渋なのですが、それに拍車をかけているのがADV部分の物語の進め方。主人公一人ずつ(○○√)の攻略ではなく主人公1-1→3まで行ったら別の主人公が解放、と段々と掘削していくような作りになっているのですがとにかく忘れる。進行の縛りは多く、詰まってしまうとなかなかストレスフル。探索要素とADVの絶妙なブレンドは楽しいのと同時に確かな苦痛を呼び起こすことも分かりました。シンプルに長時間のゲームプレイに耐えられないというのもあるが。ゲームの難易度は高い気がする。人気作でジャンルもジュブナイル寄りですが割と内容もニッチな感じ。
網口→如月→冬坂→緒方→鞍部→鷹宮→南
→関ケ原→薬師寺→三浦→東雲→比治山→郷戸、の順で個別クリア。物語の構造上、というか種明かしの都合上、如何にも主人公ヒロイン然していた鞍部や冬坂が早々に種を明かして終り、ほどほどに謎を残して進行してくれればよかったのだが、最後の方は割と消化不良というか、「登場人物がただ話しているのを第三者視点で見ている」ノベルゲーム色が強かった気がする。RPG(探索)要素が強い個別は新鮮なゲーム体験が出来たと思う。長々しく書くとあれなので本作の魅力は、「主観の操作に根差したRPGと客観的に物語を俯瞰するADVの構造が分かち難く結びついている(44字)」ことだと思います。戦闘とシナリオを徐々に進めていくゲームのパート選択も、メタ的な「ゲーム」を成立させるのに必要不可欠だったと思う。オーディンスフィアのときも感じたのですが、キャラの外観や動いている様子は可愛めですが内容はまあまあえぐい。どこか冷淡な進行ぶりが印象的でした。伏線やどんでん返しも多いのですが、オチや仕掛けはだいたいが何処かで見たことがあるもので新鮮味はほぼ、なかった(もう空想に耽溺できる感性が摩耗している)。
褒めているのか貶しているのか分かりませんが、テキスト読みと探索要素をこういう次元で融合させてくるのか、と純粋に驚き、斬新でいて懐かしいゲーム体験が出来たことは間違いがないです。「登場人物になり切り世界を冒険できるロールプレイングゲームこそが至高のゲームの形」と思っていた中学生時代の自分にこのゲームを見せれば、うまく幻から脱せられたかもしれません。
沢渡美和子というサブキャラ、特に太腿と膝裏の造形は暫く忘れられそうにないです。一番目立ってたよ。