平成という夕暮れの時代が過ぎ去ってもメーカーの色を主張し続けてくれた。じっとりとした読み味の文章、頽廃的な世界観設定、物語全体に漂うペーソス。久しぶりにノベルゲームを嗜めました。
※『さよならを教えて』『腐った果実』はプレイ済み
「ネタバレを食らいたくなかったから」。
ネットに氾濫する『さよ教』のネタバレを踏んでしまった哀れな犠牲者としては、なるべく早めに人の感想や評価などにも触れずにクリアしたかったのでそれが達成できただけでも満足でした。
身体の奪い愛を活かした歪なバトル設定が活きていて良かったです。あれはこうだ、これはああだ、と説明過多な作品が巷に溢れる中で、語り過ぎない美、というか、幾つかのシーンにはある種の凄味を感じました。こういうの好きです。江戸川乱歩の某短編を彷彿とさせる読み味。
「美”少女”ゲーム」を逆手に取ったような種明かし(仕掛け)もあり、桔梗ちゃんの舌ったらずな喋り方や深紅ちゃんの乙女ぶり描写が安易なキャラ付けに留まらない計算されたものであることが感ぜられ、細部にもきちんとした満足感が感ぜられました。過去作をプレイしていると気付きもあり、面白かったです。人物の立ち絵やカットインを画面上に次々と重ねていく演出もさよ教イズムが感ぜられて良かった。
永遠の夕暮れ時に包まれた校舎から、深夜の東京の寂寞とした片隅という舞台の変化も、平成~令和の時代の移り変わりを感ぜられ、その年代を生きている者としては感慨深くもありました。