【ほたる√ノーマルが全て】人によってかなり評価が割れる作品だと思う。主人公の節操のなさを許せますか?
※以前他サイトで書いた感想をそのまま載せています。
「言霊」と呼ばれる、言葉によって周囲の世界を捻じ曲げる力を持つ主人公が、言霊使いの里を抜け出すところから物語は始まる。計画性も何もなく飛び出した主人公は行き倒れてしまい、ヒロインの一人、織部《おりべ》こころに拾われる。
冒頭からして使い古されたボーイミーツガールを感ぜざるを得ないが、本作の真価は、全体的に丁寧な造りの構成にある。
というのも、本作においては美少女ゲームの醍醐味である分岐は各ヒロインの個別ルートへ突入する前の必要最低限に抑えられ、複雑な選択肢分岐を意図的に排しているからだ。こころルートが共通ルートのようなものではあるが、全体が大きな一本の幹となっており、そこから枝に分岐するという形だ。インパクトにこそ些か欠けるかもしれないが、この構成は意図してつくられたものだと、進めていくうちにわかる。
選択肢によるフラグ管理がない分、集中してプレイを継続でき、それが結果的にヒロインたちの掘り下げに一役買っている。次々にヒロインに手を出す節操のない主人公の言動は二役くらい買っていそうだが……。
序盤では、言霊により「こころの兄」という偽りの身分を得て過ごす甘い生活が描かれる。その後も残り三人のヒロインたちと仲良く、なっていくのだが、個別ルート以外のヒロインたちにも易々と手を出し文字通りやりたい放題。
だが、そんな真似が許されるのは最終ルートの直前までである。
つまりは、主人公は最後に誰を選ぶかという問題。
いわば、《《選ばれなかったヒロイン問題》》である。
ここに来て、物語はヒロイン選択の問題に衝突してしまう。
全員と一定以上に関係を持っている主人公くんは一体どうすればいいのか。
簡単なことだ、《《全員選んでしまえばいいのだ》》。正確には、《《一人を選んだ上で》》、《《他のヒロインたちとは緩い連帯でつながればいい》》、ということ。いわば、都合の良い女。明け透けに言えばセフレ。早い話がハーレム。何故に知性にも常識にも貞操観念にも欠ける主人公がここまでモテるのかは永遠の謎だが、それを言ってしまうと大半のオタク向けコンテンツの意義が危ぶまれるし夢見るオタクが死滅するのでダメ。
少しだけ感想を述べるのなら、アマツツミのなかでも評価が高い最終ルート、ほたるルートは、ノーマルエンドとトゥルーエンドで全く別の物語に変貌するのだが、私見ではノーマルの方は比較的現実的な(悪く言えば自己犠牲的な)解決を見せるが、トゥルーの方は割と自由、というかご都合主義メーターの大幅上昇を感ぜざるを得なかった。私はノーマルの方が好きでした。
全員に好かれる、アマツツミの主人公の節操のなさ、お世辞にも一途とは言えない野放図さは見る者によっては不快に映るだろうが(私は割と不快だった)、ヒロイン全員と良好な関係を築き、落胆こそ与えはしても不幸にはさせないようにするには、次々にヒロインに手を出し関係を深めるくらいの胆力と奔放さがなければならないのかもしれない。考えても結局は好みの問題と思うし。まあ、現実にそんな男がいたら本当に最悪なんですけどね。エロゲだから許される。仮にハーレムなんてものが成立しても、肉体的にも精神的にも疲れるだけだと思うんですけど、どうなんでしょう。
雑感
とにかく長い。というのがプレイ後の素直な感想。ヒロインは四人ですが、本作の見所の大部分を占めるラストの「ほたるルート」に辿り着くまでがなかなかの苦行です。多分10か月くらいかかりました。音楽やCGは本当に素晴らしいです。opedも作品の雰囲気に合っていて、たまに無性に聞きたくなる。肝心のストーリーは……二番目の巫女の子が一番好きでしたね。蛍ルートで明かされる真相は、どんでん返し系ミステリを読み過ぎたのか単に私が捻くれているだけなのかわかりませんが、そこまでではなかったかな。