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minami373さんの売春リアルの長文感想

ユーザー
minami373
ゲーム
売春リアル
ブランド
劇團近未来
得点
72
参照数
76

一言コメント

独特なざらついた余韻を残す作品。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

主人公のする売春を、奔放さとして表現するのではなく、何処か虚しい、何をしても満たされない裏返しとしての行為に落とし込んでいるのが斬新と感じた。ラストに救われることもなく、変わる契機となった出来事も瞬時にして崩れ去ったりと、兎に角悲惨。
だが、それで終わらないのが凄い。
たとえば合間に挟まれる主人公の絵日記。ま、いいか、と投げやりで無気力な態度。学習せずに繰り返す売春。
酷い目に遭っているのにもかかわらず、まるで冗談かのような文体と調子。ふざけているわけでも現状認識が出来ていないほど愚かなわけでもないのに、決定的なチャンスは訪れず、最後には冒頭での対比の様に売春までしてほしかったお気に入り商品を逃してしまう。
微妙な心理の機微もうまく、段々と過激なプレイに嵌り落ちていく様は、少しフラテルニテを彷彿とさせた。

この主人公は確実におかしいが、批判することも同情することもできないような、宙づりのような読後感。
けして貶しているわけではなく、こういう切り口は斬新だし、題にある不安定な「リアル」を、たとえ少しでも体現していると感じる。

実際に体を売っている彼女のような女性がどんな心情なのかは私には推し量るほかないが、きっと一時の快楽と金銭と引き換えに、捉えどころのない茫漠とした気持ちを抱えているのではなかろうか。
「趣味がない」という主人公が可哀そうだとは朧げに感じた。
どこまでも落ちてゆくのか、いつか笑い話に出来るくらい成長するのか。悪趣味な余韻を感じさせる、ある種の怪作だとさえ感じる。

作風としてはかなり好みだったので、暫く劇團近未来さんの作品をいくつかプレイするかもしれない。