萌え絵ですが本質はシナリオ勝負の純愛物語。見え見えの展開ばかりですが声優さんの名演もあって話に引き込まれます。ただ、3章以降がなかなか良いだけに、2章までがイマイチなのが残念ですね。 ●絵(良い)●音楽(非常に良い)●シナリオ(良い:キャラで加点)/ネタバレ度:中
●絵について
顔は可愛くて十分萌える絵です。個人的には珠美が一番可愛いと思います(あくまで外見の話)。ただ、立ち絵と比べると一枚絵はやや落ちるような気がしますし、立ち絵でも正面顔はイマイチのような気がします。また、一枚絵ではあまり気にならないのですが、立ち絵では手足がちょっと細すぎるかなと思います。
塗りは、特に背景はベタっとしていて実在感がないですね。2006年の作品とは思えません。人物は悪くないと思いますが、もっと良くする余地があるような気もします。表示もイマイチ鮮明ではありません。このあたりは「Sultan」(2002年、light)の方が明らかに上ですね。メーカーの力の差でしょうか。
CGの枚数は足らないと思います。ブラックアウトやホワイトアウトが多すぎです(^^:
立ち絵も少ないですが、それでも背中向きの立ち絵は思った以上に良いですね。話し相手が変わるたびに、こちらを向いたり背中を向けたり、また、気まずい雰囲気のときに背中を向けたりするのも臨場感があって非常に良いですね。私のプレイした範囲では、これほど背中向きの立ち絵を多用している作品は他にはありません。印象に残っているのはFateのアーチャーくらいでしょうか。この業界には、立ち絵はプレイヤーの方を向いているのが当たり前という常識があるのかもしれませんが、この作品をプレイするとその常識が間違っていることに気づきます。他のメーカーも積極的に取り入れるべきではないでしょうか。
●音楽について
BGMは生楽器主体で新鮮ですね。曲の出来もかなり良いので、BGMに気をとられてテキストに集中できないことがよくありました(テキストがイマイチなせいもありますが(^^;)。ただ、特に弦楽器中心の編成の曲は高尚過ぎて、普通の学園物にはあまり合わないような気もします。
歌も曲自体は悪くありませんし、歌い手も下手ではないようですが、妙に鼻にかかった声というか、癖のある歌い方で個人的には好きではありません。
●シナリオについて
構成は良いと思います。他キャラのエピソードも明穂の問題と上手く絡めていて、全体としては実質的にほぼ明穂シナリオ一本道でよくまとまっていると思います。
【プロローグ~2章】
この作品で一番上手くいっていない部分だと思います。
まずは明穂の死に関してですが、千早が良い子であることを強調すればするほど、単なる嫉妬で人を呪い殺すとは思えなくなるというジレンマを抱えています。確かに千早は過去に人を殺していますが、それは助かる見込みのない病人を楽にするためで、私利私欲に基づくものではありません。そんな千早が、たとえ嫉妬したとしても、それだけで明穂を呪い殺すとは思えないですね。
次に、千早に対する一樹や明穂の言動ですが・・・。千早が明穂を殺したことを知ってなお、千早のことを「僕と明穂の友達だよ」と言える一樹もなかなかのものですが、「しょうがないじゃない、そんなの」と言える明穂は凄すぎです。ここまでいくと、とても生身の人間とは思えません(幽霊ですが(^^;)。個人的には受け容れ難い展開で、正直言ってプレイする気が失せました。きっと、ライターは神のように心が広い人間に違いありません(^^; 本当は千早ルート(6章)のような葛藤をここに入れるべきなんでしょうけど・・・。
この部分に限らず、ライターの都合でキャラの言動がころころ変わっているような気がしてなりません。特に一樹は都合よく敏感になったり鈍感になったりします。肝心な場面に限って「よく、分からない」と言いだす一樹に少なからずイライラしました(^^;
【3章~5章】
見え見えの展開ですが悪くないと思います。3章はつばさ、4章は珠美、5章は明穂メインの話ですが、3、4章とも明穂の存在意義の問題でもあります。3人ともキャラが良い上に声優さんの演技も良いので話に引き込まれます。特に声優さんの演技は素晴らしく、破壊力があるので4章、5章は涙腺の緩い人ならあちこちで泣けると思います。
【6章(個別ルート)】
同じ問題を引っ張りすぎで、ちょっとくどい感じもしますが悪くないと思います。特に明穂ルートとつばさルートのラストはいいですね。少しうるうるしました。涙もろい人なら目の幅涙かもしれません(^^; 設定的に卑怯という気はしますが、きちんと泣ける展開になっているのは良いと思います。