独特の設定は面白く、難しいテーマを逃げずに描き切っていて好印象ですが、終盤が思ったほど盛り上がらなかったのは残念ですね。感動は出来ませんでした。●絵(良い)●音楽(良い)●シナリオ(非常に良い)/ネタバレ度:大
●絵について
基本的な表情は可愛いと思いますが、あまり可愛くない表情もありますね。頭がやや大きめで、特に灯花と璃々子は気になります。目も、璃々子以外の3人はもう少し小さくてもいいかもしれません。また、この絵師に限ったことではありませんが、服のしわを描き込みすぎでちょっと気持ち悪いです。特に、セーラー服はこんなにしわが出来るような素材ではないはずです(^^;
塗りも悪くないと思いますが、灯花のHシーン等、雑な感じのものもあります。
背景は、外の風景がすごいですね。葉の一枚一枚まで細かく描きこんであり執念を感じます。逆に、建物の室内はイマイチでしょうか。
●音楽について
多くの作曲家を使っているようですが、結構当たりはずれがあると思います。
特に、日常の場面でよく使われる「レモン」が全然合っていないと感じたのは私だけでしょうか?はじめはプレイする気が失せるほどイライラしましたが、そのうち慣れてしまいました(^^; また、暗い雰囲気の曲は音量が小さくて聞き取りにくいものが多く、BGMの役割を果たしていないと思います。編曲が悪いのかもしれませんが。その代わり良い曲も多く、特に「わずらい」「夏の花」「溶解」あたりは気に入りました。
歌については・・・。歌い手は下手ではないのかもしれませんが、思ったほど声が出ないですね。特にOPの「紅空恋歌」のサビでは物足りない感じがします。発声に問題があるのかもしれません。
●シナリオについて
特別高等法が法治国家の快挙だというのはちょっと引っかかりますが、独特の設定は面白いと思います。特に、3人のヒロインの義務の設定は面白く、その義務を負うことになった理由を知りたくなります。つかみはOKだと思います。
それに、一見奇抜に見える義務の設定が、実は現代社会の家庭や若者がかかえる問題とリンクしていて、しかも、3つとも難しいテーマでありながら恋愛に逃げずに描ききっているのは素晴らしいと思います。義務解消のきっかけとなるエピソードや話の展開がよく考えられていて、キャラの言動や心理描写も細かく丁寧で説得力があります。おそらく、ライターは観察力と洞察力に優れた人なのでしょう。個人的には、成長物語としては「はるのあしおと」よりも数段上だと思います。ただ、必ずしも恋愛に頼っていないだけに、途中でHシーンを挿入するタイミングがなく、エロゲとしては問題かもしれません。
しかし、終盤で思ったほど盛り上がらなかったのは残念ですね。後述しますが、第五章冒頭の叙述トリックの種明かしは納得できませんでしたし、璃々子の演説の内容自体は良かったと思いますが、合間合間に地の文が挟まっていて(しかもその量が多く)折角の演説がブツ切れになっているのは良くなかったと思います。それに、ラストの竪穴を登るシーンも感動できませんでした。
●璃々子の伏線について
一部で評判の良いらしい璃々子の伏線についてですが、個人的には納得できませんでした。
>賢一「ごめん。この町に来て最初は、お姉ちゃんが気になって、ことあるごとに、あんたあんたと話しかけまくってた時期だね……」
話しかけちゃ駄目じゃん(^^; いくら「あんた」と言ったところで、人が少ない田舎町なんですから、状況から見て璃々子に話しかけているとしか考えられない場面が大部分だと思います。それに、第三者は賢一と璃々子が姉弟だと知らないんですから、「あんた」でも賢一が璃々子に話しかけていると判断するでしょう。現に、第三章で京子は「じゃあ、そのあんたさんのぶんまで、りんごを用意しておきましょうかね」と言っていますが、これは京子が「あんた」=「璃々子」だと判断している証拠です(自爆?)。「お姉ちゃん」と言わなきゃいいというものではないと思います。
また、普通は極刑を受けた人間が自由に町をブラブラしているとは考えませんし(第四章まで極刑の義務の内容について説明なし)、賢一が話しかけている内容も璃々子に対するものとしては不適切なものも少なからずあったと思います(面倒なのでひとつひとつチェックはしませんでしたが)。この叙述トリック?はいかがなものかと思います。
●声優さんについて
さち・・・感情移入が足らないのではないでしょうか。他の声優さんの演技ほど心に響いてきません。ひょっとしたら訛の影響もあるのかもしれませんが、不自然なイントネーションが目立ちます。普通ではありえないところで息継ぎをすることがあるのもよくないですね。
まな・・・やっぱり上手いんですが、他の作品での演技と比べると出来が落ちるような気もします。
灯花・・・一見、舌足らずで素人っぽいんですが、それがいい味になっているような気がします。下手ではなく、むしろなかなか上手いと思いますが、Hシーンはもうちょっと頑張ってほしかったですね。期待していただけに・・・。
夏咲・・・この人は上手いですね。この作品では一番の出来かもしれません。ESのデータを見るとこの作品(とFD)にしか出ていないんですね・・・。
璃々子・・・所々に光るものはありますが、全体的には不出来だと思います。不得意なキャラなんでしょうか?クール=声を抑える、ではないと思います。メーカー側の発注かもしれませんが。
磯野・・・仕方がないかもしれませんが、キャラがつかめていないようでしっくり来ない演技でした。比較的真面目になる終盤は悪くないと思います。
法月・・・もう少し真面目に演じれば(失礼)、もっと怖くなったと思いますが・・・。独特の言い回しが面白くて、思わず笑ってしまうこともありました(^^; すでに完成された芸なので、いまさら文句を言ってもしかたがないのかもしれませんが。
京子・・・安定した演技で声も魅力的だったと思います。Hシーンがないのが残念です。
●まとめ?
シナリオの出来は良いと思いますが、残念ながら感動できませんでした。絵も期待したほどではなかったと思います。個人的には感動できないシナリオゲーは不要なので、未開封の「悠久の少年少女」、「G線上の魔王」とともに処分します。これで少し積みゲが減ります(^^; 紫華すみれ氏はなかなか魅力的だったので他の作品で会えることを楽しみにします。