前作未プレイ問題無し。 一語で言えば「超力作」 稀有なくらい力み過ぎな大作。 ほとんど妥協のない仕事は高評価。 アンチ『君のぞ』の私でも楽しめた。 萌えや恋愛を期待するのは危険です。
まず、作品に触れる前に…
「前作プレイ済でないと話がわからない」と言ってる人の大半は、前作プレイ済です。
実際には、予備知識なしでも序盤からグイグイ引っ張ってくれますし、気分的にも問題ありません。
逆に、前作をやってたせいで評価を下げた人がいるくらいです。
それならば、この『オルタ』自体が長い話なので、時間節約のため前作やらないのもアリでしょう。
_____
では、ネタバレなしで…。
■シナリオ・テキスト
長い、重い、クドい、熱苦しい、大きなお世話。
こういったネガティヴにも見える言葉が並んでしまいます。
ですから、読了後に達成感はあっても、爽快感は得られないでしょう。
ほぼ完全な一本道で、そこから逃れることも許されない。
けれど、それがいい。 そういう作品です。
冒頭でも触れましたが、前作未プレイ者を引き込むだけの文章力はあります。
もちろん少しは「?」な場面も出てきます。
でも、脳内補完できるだけの情報は転がってますから安心です。
作中、並行世界説明の場面が結構あります。
アレは仮定に仮定をくっつけたグラグラ理論なので、マジメに読む必要もないと思います。
流し読みくらいでいいでしょう。
もちろんドップリ浸かりたければジックリ読んで飲み込みましょう。
正直、不満点もありますが、話的には十分合格点のデキでした。
■演出面
[PCゲーム]というカテゴリー内で、こと演出面に関しては最高レベル。
技術的にハイレベルなのは言わずもがな。
それよりも、細心の注意・砕身の努力を惜しまない姿勢が素晴らしいと思いました。
気になる点もありますが、「仕事に対する姿勢」は他メーカーも見習うべきでしょう。
■総評
繰り返しますが、長い、重い、クドい、熱苦しい、大きなお世話。
こんな作品ですから、しっかり身構えてから読み始めたほうがいいと思います。
仕事ぶりに感心しますし、劇中のセリフに感じることもある。
こういう作品はそう多くありません。
「自分には合わないかも?」と思われる人も、手にとってみる価値があるはず…。
私はそう思いました。
どうでもいいかもしれませんが…
作戦実行時、実在の地名を使ったブリーフィングが行われます。
地理が好きな人は、実際の地図と見比べながら進めていくと、よりドップリ浸かれるかもしれません。
【注意】すみません。これより下、決定的なネタバレがあります。【注意】
【注意】不満しか書いてません【注意】
【注意】ネタバレですよ?【注意】
【注意】いいんですね?【注意】
■個人的に「こうしてほしかった」ことを書いてみます。
どうにも「結がダメ」と感じてしまったので。
◇最終章、アッー!っと言う間にオリジナルハイヴ大広間
連載打ち切りじゃないんですから、キチンとやってほしかった。
全世界一斉の作戦なのに、そのスケールがほとんど感じられない。
甲21号作戦以下のような…。
尺が長くなるでしょうが、そのぶん別の作戦を短くすべきだったと思います。
甲21号作戦・横浜基地防衛・桜花作戦、の尺に差がないのは、BWHに差がない女性のようです。
◇冥夜を(あ号標的を)撃つシーン
ここを情けない問答だけで終わらせないでほしかった。
『尊い存在』である冥夜に、感謝のひとつも伝えてほしかった。
覚悟を決めて、笑って?撃ってほしかった。
(せっかくモニターにノイズを入れてるんだから、冥夜に気づかれないように涙を流しながら…とか?)
さんざん冥夜に言われて尚、ウジウジ泣き叫んだ末に、冥夜の断末魔のような悲鳴を聞かされてから、
【武】『あ……うぅ……あ……』
【武】『うぅ……うぅぅ……ッ……』
【武】『--うわああああああああああぁぁぁ~~~~~ッ!!』
…なんて錯乱状態のような撃ち方では、覚悟も何も感じられない。
作中あれだけ『自らの手を汚すことを厭うてはならない』って言葉に重きを置いたというのに。
キメるべきところで覚悟が感じられず、最後の最後でシラけまくり。
ある程度ウジウジするのは許容しても、いくらなんでも長すぎて、武と読者が乖離してしまう。
「結局、人間なんて成長しないから」というメッセージのようでした。
◇武を因果導体にした原因である純夏が絶命していたシーン
このシーン単体なら、それほど文句もありません。
が、冥夜を撃つシーンを情けないモノにしたなら、こちらで覚悟を見せる展開が欲しかった。
武の、自分自身の手で、純夏を排除してほしかった。
そうじゃないと、やはり武の覚悟は口だけか…という印象は拭えないと思います。
話の中盤で、原因が純夏であるのは間違いないと思っていたので、肩透かしにも感じました。
◇エンディングテーマ
これだけ重い話だったのに、チープなラブソングっぽい歌で締めるのは残念。
オルタ世界に関連する詞でもなければ、オルタらしい曲でもない。
最後まで『マブラヴ』ではなく『マブラヴ オルタネイティヴ』であってほしかった。
最後に一言・・・甲21号作戦前夜、伊隅大尉との場面。あの曲がとてつもなく好きです。