映画のよう。「上映終了後、シアターを出てカフェまで歩く少しの時間、お互い口数が少なくなる…」そんなシーンが読了後に浮かびました。演出は高レベル。文章は業界随一。
グロテスク、禍々しさ、疑心、戦慄、狂乱。
その文章は冒頭から読者を引き込みます。
エッジのきいた的確な造形がなされ、描写にブレがありません。
人物の心理・行動を、俯瞰的に描かれる場面が多かったため、
まるでスクリーンの向こう側のような、映画的な印象を受けたのだと思います。
たくさんの絵の具を混ぜ合わせると濁って黒くなりますが、
いろんな色の光を集めると白く透明になっていくような、そんな読後感も抱きました。
温度の低さを保ち、ただただ「綺麗」な作品だと感じました。
画・音・声的には文句がありません。
シナリオと融合して、作品を1つ上のステージに引き上げたと思います。
ただ…やっぱり短いですね~。
もっと長々と書けという意味ではありません。『沙耶の唄』はこれでいいと思います。
別の作品をもう1つ2つセットにして、定価を上げて、『ウロブチ短編集』的なモノを…。
勝手な願望ですけど。
…ダ、ダメっすか?(笑)
最後に。
実はこの作品、「一般人にお勧めでないゲーム」のPOVで堂々の第1位です。
多くは表面的なグラフィック等についての投票だとは思いますが、
冷静に考えて、普通の18歳以上相手にならば、かなり一般に勧めやすいと思います。