ゲームを終えた感想は「…う~ん」の一言。全体として、さほど感動は無く、面白いと感じる箇所も多くありませんでした。
3章に分かれていたので、それぞれに分けて書きます。
■DREAM
この章について言えることは、日常のつまらなさです。
その理由は、別に「大きなイベントがないから退屈…」という意味ではありません。
私は、平凡な日常を彩るものは「他者との関わり」であると思っています。
他者と言葉・行動を交わして、時間や感情を共有すること…などだと思います。
しかしここで関わっていくヒロイン3人、彼女らにはそれを求められません。
主人公がアウトロー気味なのと相まって、真っ当な会話が成り立たないからです。
ですからこの章は、始めの章であるにも関わらず、導入の役割ができていません。
最初は、ただの流れ者でしかない主人公の、「目的」に対する意思も弱く、
プレイヤーは何を目指して話を進めていいかもわからなくなります。
余りにも退屈な日常の中で、主人公の立場がそうなのですから、
プレイヤーの意欲を引き出す作業は、ほぼ放棄されていると言っていいでしょう。
この章で、唯一私が目に涙を溜めたのは、美凪とみちるの別れのシーンです。
相手を想いあう姉妹の気持ちが重なる様は、率直に感動を覚えました。
■SUMMER
突然、まったくの別世界に移ったのには驚きました。
しかし3つの章の中では最も受け入れやすく、一気に読むことができました。
この章に選択肢は1つもなく、翼人にまつわる説明の章と言えるでしょう。
味気ないことを言えば、この章の最後にある『翼人伝』を主人公が持っていた…
との設定で観鈴ルートに組み込んでしまえば、それで済んでいたはずです。
しかし、それをひとつの物語として組み込んだのは、大変よかったと思います。
翼人について、終わらない悲しみ…等々理解を容易にし、イメージも残しました。
そういえば、神奈の魂を探すのに『翼人伝』…役にたってたんでしょうか?
なんだか「血が引き合う」で済まされましたが。柳也が浮かばれないです(笑)
■AIR
今度はカラスになったのに驚きました(笑)
ただ、DREAMの章であれだけ退屈だった日常を繰り返されたのには閉口。
いくら視点が変わっても、退屈なものは退屈でしかないのです。
ここでは観鈴&晴子が、相手を想いあう気持ちを中心に進みましたが、
他の方のレビューにあるような感動は、さほどありませんでした。
泣かせ目的なら、もっと晴子の必死さを際立たせたほうがいいと考えます。
終わり方には賛否あるようですが、私はアリだと思います。
けれど、考えていっても、なぜか私には辻褄を合わせられないこともありますし、
「幸せを望む」ことと「神奈の救済」との噛み合わせも悪く感じます。
「感動するところなんだろうな…」と思い、冷めてしまう感覚もありました。
決して身構えてはいませんでしたので、結局私に合わなかった…のでしょうか?
親子(家族)を描いたものであれば、『CLANNAD』のほうが書ききれています。
とりとめなく長々と書いてしまいました…
この作品、空気は大事にされてると思います。
もっと理解できるキャラであれば、それをもっと生かせたんじゃないかと思います。
それから、やはり特筆すべきは音。
音のわからない人が多いゲーム業界で、実に良い仕事をされています。
個人的に、もっとも大きな功績は「Lia」さんを起用したことだと考えていますが。
3つのヴォーカル曲も素晴らしいものが用意されましたし、
これで彼女のファンになった方は多いことでしょう。
最後に…
私がゲームを評価するのは、プレイしていて感情を揺さぶられるかどうか、です。
その点において、この作品は正直足りませんでした。
ゲームが生活の一部であった時期に、ゲームから離れたいと思わせたほどに。
ただ、歪ながらも、作り手側の熱意は伝わってきました。
よって、keyというブランドを今後も大きな期待をもって見ていきたいと思います。