惰性としての「生」。
生きることは即ち死なないこと。
死ぬ理由が無いから生きている。
死なないことの惰性としての「生」。
そんななかで時紀と透子は、セックスで欲望を満たし、お互いの温もりを感じることを生きるための支えとします。
こんな世界でも、もしくはこんな世界だからこそ、人は支えとなる存在を求めるのかもしれません。
しのぶは透子を、恵美梨は雪緒を、支えに生きていました。
明日菜は時紀を、真帆は功を、支えに生きようとしました。
そして、雪緒はそんな「生」に抗おうとしました。
エンディング。
この作品の特筆すべき点は、エンディングにさえ希望が描かれていないことにあります。
主人公、時紀はヒロインと共に歩み始めます。
しかし、結局は何も変わっていないのです。
この天使のいない世界で、何かを支えとし、それに縋りながら生かされている。
そんな彼らにとって、互いの存在は、生きるための支えにはなっても理由にはなり得ません。
そして、そこにある想いもまた同様です。
「それは永遠でなく、真実でなく、ただそこにあるだけの想い」
この物語に天使はいません。
ただ、奇跡や綺麗事に甘んじず、そんな「生」を最後まで徹底して描ききったこと。
そこにこそ、この作品の素晴らしさがあるのだと思うのです。