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milk.sさんのわたしのありか。の長文感想

ユーザー
milk.s
ゲーム
わたしのありか。
ブランド
JANIS
得点
81
参照数
360

一言コメント

システムがシナリオを阻害している、非常に惜しい作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

死の淵で天使だか悪魔だかわからないものに助けられ、一命を取り留めた主人公。誰とでも簡単に関係を持つことができる力も授けられたが、対価に求められたものはその時に得られる魂だった…

とまあ、導入はこのようなかたちで、個人的には複数人とヤりまくるシナリオはあまり好きではないのですが、主人公も力に対して乗り気という訳でもないのでこの部分は受け入れられました。

◯魅力的なシナリオ、音楽、ボイス
どのヒロインもパッと見ではおくびにも出さないのに、何か心に抱えていたり傷を負っていて、それを主人公がほぐして行く流れ。ありきたりと言えばそうかもしれませんが、まりのあや氏の巧みな文章がそんなことを忘れさせてくれます。暗い雰囲気になるような場面も、コメディチックな場面も書き分けは上手いと感じました。また、登場人物(ヒロイン)が魅力的。書き分けが上手いので、魅力も伝わりやすく、人となりを補完しやすかった。少なくとも"シナリオを読んでいるとき"は没入できました。

タイトル画面で流れる「偽りの狭間」を筆頭に、音楽も良質でシナリオを引き立たせています。ボーカル曲ではEDに使用されている「Shooting Stars」。90年代ポップスのような楽曲で雰囲気が出ています。

声優のキャスティングも良かった。特に萌葱は守ってあげたくなるような気にさせられます。


×システム、話の整合性
マップ形式の選択で進みます。これだけなら何も問題ないですが、適当に選択していると何度も同じシーンを繰り返すだけで話が進まないという仕様の壁にぶつかります。他にも、読んでもいないのにプレイヤーだけ知らない情報がいきなり出されたり…
話を読みたい!と思う人は、攻略サイトを見ながら進めれば多少は和らぐのでオススメします(あくまで多少)。

整合性などはこの方法なので和らぐと思いますが、攻略サイトを見ながら進めることになるので作業感は否めません。
こんなことであれば、マップシステムなんかいらない、話だけ読ませろと、プレイ中何度思ったことか。



 素材(シナリオ等)は良いだけに、それらを上手く組み立てられず、結果としてもったいない作品になってしまったのかなと言う印象です。バグや没入しづらいシステムなんて少しテストプレイしてみれば気づくと思うのですが、中々難しいのですかね。

まりのあや氏が手掛けた前作「東京九龍」では調教SLGとしての側面が強く、シナリオを読むという点ではあまり満足出来るほどの文章量では無かったのですが、今作ではいくらか増えているので、ノベルゲー好きな自分からしたらどうしても今作の方が評価は高くなります。何が言いたいかというと、氏の作品をもっと読みたかったなと。



以下ほんとにネタバレ



○北園ありす
ヒロインやルートの好みなどは人によって様々だと思いますが、私は彼女のルートが一番好きです。(一番完成度が高いのはサファーですが)

低身長・体が発達していないことにコンプレックスを持ち、自身に女性としての価値があるのか確認するために売春している主人公の同級生。
過去の体験から、自己防衛のために他人には素っ気ない態度をとっているが、主人公と関わっていく中で不器用ながらも優しい一面を見せたり、本来の明るい姿を現していく。

広義ではツンデレになるのでしょうか。話自体は短いのですが、エンディングでの彼女の姿に感動しました。欲を言えばもっと浸っていたかった。