完全に設定の曖昧さが、物語に入り込む邪魔をしている。
他のレビュワーの方々も書かれていますが。
確定した、どんなに抗っても変えることの出来ない事象を『点』として、
それに至るまでの変更可能な行動を『線』とする。
どんなに抵抗して線を違う方向に引き進めようとも必ず点に吸い寄せられ通過してしまう。
で、物語の基本的な、根源の設定では『点』と『線』の区別はどうなっているのだろう。
その辺りが曖昧すぎるし、物語のご都合主義に変わってしまうんですよね。
極論かもしれないけれど。
例えば、物語の途中で時間遡行したあと主人公がヒロインを殺したらどうなるんだろう。
その時点で運命は変わってると言えるんじゃないかな。
……きっと殺すのに失敗するんじゃないかって?
でもさ、失敗してもしなくても主人公が逮捕されたりとかで、運命が変わったってことにならないかな。
……漣さんもそう言っていたし、それも含めての運命なんじゃないかって?
そのときに進行している以外のルートを全部否定してるようなもんだよね、それって。
まぁそのくらい、設定がどっちつかずで頼りないってことだよね。
想定外の展開も殆ど無かったかも。
一番の盛り上がりであろう詩乃の恋人一週目も、行動の端々で漣さんに未練ありまくりで、
主人公は詩乃の事を本気で好きにはなってないよなぁって思ったし。
詩乃の言葉の「生きていたいの」から、漣さんの事を回想、お見舞いに毎日は行かないこと、
友達3人組がお見舞いに来たときの詩乃の「うん、一応、ね」で少し違和感があって。
だから「おー、そうくるか。まぁそうだよなー」って感じで。
ここで、あんまりドキッとしなかったのは、おそらく前記した設定の穴の多さで
茶番っぽく感じて、私自身は主人公にあまり感情移入できず、
トンデモ設定なラノベを読んでいるときのような第三者視点で読み進めていたからだろうなぁと思う。
ああ、最後に時計を置いていくことは少しだけ驚いたかもしれない。
そう言う意味では楽しめたのかも。
少なくとも、この作品は嫌いじゃなかったです。