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mifuyu_rainさんのゴーヘルゴー つきおとしてこの長文感想

ユーザー
mifuyu_rain
ゲーム
ゴーヘルゴー つきおとしてこ
ブランド
エンターグラム
得点
79
参照数
392

一言コメント

中盤以降は面白いと思う。UIの悪さと序盤のつまらなさで挫折さえしなければ…。素材も味付けも良いのに、システム面の基本的なところが出来てないためにスタートラインに立てなかったのが本当にもったいない作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「三匹が斬ったり突いたり燃やしたり」の時代からディレクターのいってんちろくさんのファンだったので発売日に買ってプレイしたけど、正直言って出来の悪さが目立つ。
精神的前作のドーナドーナが神ゲーなので比較されると分が悪いのかもしれないけど、かと言ってドーナドーナ未プレイのご新規さんがプレイして面白いかというと、システム理解してない状態では余計につまらなく感じるのではないかな…

不満はUIとゲームシステムに集中してるので、以下、不満点を殴り書き。

【全般】
この種のゲームでCGモード、回想モード無しは絶対ダメでしょ!!!!
せっかくの美麗なアートが見返せないのは価値を大きく棄損している。原画のてつぶた先生はキレて良いと思う。
自分でキャプチャ取れば良いという問題ではなく、CGモードを見ながら「まだ埋まってないのはこのヒロインのこのシーンだ」みたいな予想しながら周回する楽しみも失われてしまい、プレイヤーのコンプ欲も減退させている。
実際に自分は灯ENDだけクリアしてこれを書いているけれど、他のヒロインのENDを回収するモチベーションが湧くかというと微妙…。
強くてニューゲームとか2周目以降ハードモードにチャレンジできるといった、周回を促す仕組みも無い。
隠しボスとかも多分いないのかな…苦痛で攻略投げてしまった人が多いのか、攻略情報があまりに少なすぎるので良く分からんけど。

【戦闘UI】
ダンジョン攻略中にキャラの立ち位置が被ってステータスバーが見えなくなり、ステータス画面に戻らないと確認できないことがあるのが一番不便に感じた。
戦闘そのものがスピーディなのは良いと思うんだけどマスとマスの間の移動のもっさり感は何とかならなかったのかな。

【戦闘システム】
序盤の戦闘のつまらなさは本当にびっくりした…。毎回同じヘルスキルをただ選択し続けるだけ。危うくゲームそのものを投げそうになった。
ヘルスキル・ヘルアームズ・アイテムの数が増えて来る中盤以降は戦略性が生まれて面白い。
デバフアイテムの効果永続が強すぎてラスボスにATKデバフアイテム使うと楽勝になってしまうゲームバランスは流石にどうかと思ったけど。
デバフアイテム弱体化の代わりに、終盤は味方が全体回復使えるようになるとかの方が白熱して面白かったのでは感。
一方で、ドーナドーナでの数少ない不満点だった武器素材のランダムドロップが廃止されたのは素直に良かった気がする。
でもなんか一部ヘルアームズのバフが乗らないバグがあるらしい…

【地獄送りUI】
マップが広い割には全体表示できないので、どこに何の地獄があって誰を配置していたかが分かり辛い。
地獄送りしている亡者にはアイテム使用・会話・処分が出来ない&亡者画面からは呼び戻せないという仕様のコンボにより、マップと亡者画面を何度も行き来するハメになる。
普通に亡者と地獄送りは一つの画面で一元管理させてほしかった。
亡者画面でマウススクロールが使えないのも地味に不便。
属性が干支で表示されているのも微妙に馴染みがなくて分かりにくい。

【地獄送りシステム】
ユニーク亡者のCG出現条件のヒントが作中のどこにも無いのは誰が得するんだ…
一応エンターグラムのツイッター公式アカウントにそのまんま答えがあるけど、これ見たら見たでただの作業ゲーになるというね(ツイッターの記載順に地獄送りにしてもダメな場合、間に「会話」を挟もう)。チャなんとか(チャミアバック)に至っては隠しキャラ扱いだからかそれすらもなく完全にノーヒントだし(カレー→忍苦→大火盆 らしいが未検証)。
三亢システムも、ゲーム性に途中から変化を持たせるという意味では一部成功してはいるけど、自分で攻めに行く地獄を選べないのはストレス。任意の地獄を攻めたい場合、ずっとターン経過させ続けて待つしかないのか? そのせいでユニーク亡者のCGコンプまでの道のりがひたすらに怠い。
あと、はるうられ&ドーナドーナのハルウリでは、人材を使い捨てにするのと育てて行くのの両方の楽しさがあったけれど、今作は一回の仕事あたりの消耗の激しさ&回復手段の少なさから、ユニークであってもCG回収したら使い捨て一択となり、本当にただの作業ゲーと化してしまった。



と不満点を挙げれば枚挙にいとまがないのだが、文句を言いながらも最後までプレイする程度には魅力のあるゲームだったのも事実。以下は良い点を列挙。



【世界観】
「地獄」というあんまりこの種のゲームで見たことのないユニークな世界設定は、ダークとポップのバランスが良く魅力的で、世界の謎がちゃんとゲームを進行するモチベーションであり続けてくれた。
庁を絶対権力として委託の清掃業者達が特に協力したり反目したりして争うという微妙にリアルな「企業モノ」要素を持ち込んだのも面白く、登場人物に感情移入することが出来た。

【キャラ】
ヒロイン勢みんな可愛いしキャラが立ってる。地獄という文字通りに地獄みたいな世界を生き抜いているだけあり、それぞれ良い意味で頭のネジがぶっ飛んでいるところがあって、会話に退屈なところがない。自分のお気に入りはきりく。全裸になってもマスクは取らないで服乾かしてるシーンがエロシュールで好き。男キャラ勢も、明らかに頭おかしい見た目にかかわらず他がぶっ飛んでる人ばかりなので若干常識人枠になりかけてるイアイドーとか地味に好き。強いて言うなら主人公の行動原理は若干よく分からん感じがした。ガツガツ行くタイプのエロゲ主人公みがあるけれど、実際にはエロシーンまで至らないので違和感があると言うか。非常に気を使ってキャラ造形したというドーナドーナのクマと比べると魅力に欠けるかな感。

【音楽】
和のテイストとロック?なテイストの入り混じったBGMの数々は世界観によく馴染んでいた。特に主題歌は素晴らしい。ラストステージでアレンジ曲が流れるのも熱い。

【シナリオ】
序盤のシナリオは低調に感じて、戦闘の単調さと相まって投げそうになる要因だったけど(序盤のボスがGozzやきりくの繰り返しばかり…)、れてぃくるの甘田田も絡んで来て三つ巴になったあたりから面白くなってきた。甘田田は良いキャラだったので救済ルート欲しかったな…(実は探せばあったりするんか?)。Jazzから主人公への謎の激重感情も好物だったしJazzエンドも欲しい。Jazzと主人公の過去の関係とか、実験体・調整体って何?とか、色々掘り下げられそうな魅力的な謎を消化不良で残しつつ終盤は性急にまとめてしまった感はある。けれど、地獄という重い世界観を扱っている以上は単純なハッピーエンドにはしないという一線を維持しながらカタルシスを両立させていて良い終わり方だったようには思う。



以上不満点・良い点それぞれまとめでした。
前半に書いた不満点の数々はゲーム開発のプロが気付かない訳がないと思うので、エンターグラムは開発リソース足りなくなって中途半端なものを世にお出ししてしまったのかなというのが率直な感想。延期一回してるってことはこれでも途中までは何とかした結果なんだろうけどねぇ。料理で喩えれば、素材も調味料も良いのに、下ごしらえに当たるような基本的な部分をおろそかにしてしまったゲームという印象だった…。

最後にこのゲームプレイした人の99%の総意であろう事を一応書いておくけど、これやっぱり18禁で出すべきだったよ。単純にエロいの見たい気持ち抜きにしても、シナリオ・世界観的にも一般でやれないダークな話にもっと振ってしまった方が絶対面白かったでしょ。