点数をつけるのが難しいゲーム
人によってどのCaseが好みなのか分かれそうだけど、
自分的にはCase1とCase2は100点を超えるレベル、Case3は75点くらい、Case0は70点くらい?という印象。
2→1→3の順でプレイして、1を終えた時点ではこのままの勢いで行くと10年に一度の傑作になるぞ…と思っていたのだが残念ながら後半はそこまでは乗り切れなかった。
結局間を取ってこの点数に。
【Case1】
オーバーキルレベルにめちゃくちゃにぶっ刺さりまくってしまったのがこの話。
自分自身、辛うじてオタク熱は失っていないものの、家と職場の往復の伸びきったゴムのような張り合いのない日々を送っている自覚があるために、主人公の境遇が全く他人事と思えなかった。
いやこんな全部を禁止カードで組んだデッキみたいなシナリオある?
一番印象に残ったのはランドマークタワーから下界を見下ろすシーン。
やー、自分も街を見下ろして安心感を感じる方の人種に生まれたかったし、せめて疎外感を理解してくれる人に出会いたかった…(過去形)
名シーンと言えばワイン事件のくだりで凛が出した「鴨とクレソンの鍋」は失楽園モチーフだったんですかね。
親の金で高い買い物することの是非は別としても、おまけシナリオで若干根に持ってる風だったのは文学好きとして元ネタが通じなかった悲しさみたいなのもあるとすればちょっと分かる(?)
OPEDも全Caseで一番良かったけどなぜに宮沢賢治からモチーフを借りたのかはちょっと謎だった、そこは芥川か志賀なのでは
波多野秋房の日記と主人公の心情がシンクロし死の色が濃くなっていく終盤の展開も本当に圧巻だった。
【Case2】
宗教や貧富の差と言った「冷たい壁」に阻まれた男女の悲恋という王道な話だが、ストーリーの随所に盛り込まれた(一部架空の)英国史要素がとても効いており、とても胸を打つ話になっていた。
「真実の愛の物語をご覧にいれましょう」
実際に聞いたら陳腐過ぎて笑ってしまいそうな台詞なんだけれど、ここまで必死にあがき続けたウィルとオリヴィアの物語の積み上げがあり、そして実際に出来上がった「ロミオとジュリエット」は未来永劫人々の心を動かし続ける真実の愛の物語になったんだよなと思うと「真実の愛の物語」というのがスッと心に落ちてくるので凄い。
クリストファー・マーロウとか史実でも実際に諜報活動に関わっていたという説もあるらしく、幕間で出雲からそういう要素を語らせて不穏な予感を漂わせるのとか本当にストーリーテリングが巧いなと思った。
【Case3】
キャラの掛け合いは面白いんだけど、上2つのCaseが良すぎて若干見劣りするかな…というエピソード。
進捗率40%の時点ですももの問題はある程度解決してしまっていて、あとは割となだらかに問題解決していくだけだったので、心打つ物語という感じではない。フツーにイイ話にまとまった感。
【Case0】
異なる時代・人物の三つのエピソードを統合するというノベルゲーム史上例がない(たぶん)意欲的な試みは凄かったし、実際ある程度成功していたように思う。
しかしその弊害なのか設定が山盛りで、ひたすらに設定の消化に追われてキャラが設定に振り回されている感があったのが残念。
メインのストーリーラインからして、世界を救うか少女を救うかというセカイ系的な話、ディストピアの真実を暴くSF的な話、難病に侵された少女という難病モノのお話(しかもその難病も2種類ある)がかなり混線していたしね…。
特に気になったのが基礎欲求欠乏症の予防のために地下都市が生み出されたという設定。
歴史を振り返っても人間の欲求なんて限りが無いものなので、この技術レベルを有しているなら地下に潜るなんて大袈裟なことをしなくても欲求にまみれた地獄のような社会を顕現させるのは簡単なことなのでは?と思ってしまった。
あと、人間の欲求を誘発するようなデザインの都市にするのだったら作中のようなディストピアのような感じではなく猥雑でサイバーパンク的になるのではないかと思った。たとえば生活の隅々までインターネットが入り込んでいてどこを見ても何をするにもぎらついた広告を見せられて消費欲求と承認欲求を掻き立てられるとか(…それなんて現代日本?)
他も色々あるけど背景設定に入り込めないのでキャラの行動にも入り込めずあんまり感情移入は出来なかった。
【補足、システム面的な話】
Caseによってインターフェースが異なるのは普通に凝っていて凄いと思うんだけれど、ボタンの位置がCaseによって違うのは使いづらいので止めて欲しかった
(…このブランドの過去作やったことないけど使い回しなのかな?)
あとバックログを触った時とかに爆音でザザッていうノイズがたまに入るんだけど自分の環境だけなのかな