ループする3日間の日常群像劇を追っていくのが面白い、エロゲ版ムジ○ラの仮面
繰り返す3日間の日常という設定はムジ○ラの仮面を強く思い出させる。あちらは落ちてくるのは月だが、こちらは落ちてくるのは鏡写しのような水星の街。流石に天下の任○堂様の作品と比べるとボリュームは劣るだろうが、ループを繰り返しながら世界の謎を解いていく、あるいは箱庭世界で日常を営む人たちに感情移入する楽しみは本作でもしっかり再現されている。あちらの作品とは異なり、水星の住人たちは世界が滅ぶことを知らないので、みんないつも通りの3日間を過ごしており、結果的に終末モノというよりはサイバーパンク世界観下における日常モノの色彩が濃くなっている。
ゲームシステムは基本的にはただのおつかいで、住人Xの問題を解決→お礼に情報Aをもらう→情報Aを使って住人Yの問題を解決→お礼に情報Bをもらう→……を繰り返していくだけなのだが、地味ながらこれが結構面白い。問題解決には魔法の音楽を使うためにPOWERが必要、POWERを回復させるにはエロイベント発生が必要、エロイベントのためには①メカニカにセクハラしてLOYALITYを消費する、②サブヒロインの好感度イベントを進行する、③拠点エッチで時間を消費する、のいずれか……という仕組みになっている。なので、次の情報提示先を探しながら同時進行でPOWERやLOYALITYを回復させる方法を求めて街中を探索することになり、そこで不意にイベントを発見する楽しみがある。「問題解決イベントに消費するタイムは2だが一日は5タイムある」&「朝にかけた音楽によって出現する住人セットが変わるため、別セットの住人に会おうと思ったら一日を終わらせる必要がある」というゲームデザインもミソで、余った1タイムを効率的に消費する方法を探索する楽しみもある。
ループが始まってからハウダニットを見つけるところ辺までが一番面白く、やめ時の分からないゲーム特有の中毒性があり、自分は一晩かけて一気にやってしまった。ただ、どの音楽がかかっている時にどの住人が出現するか&どの住人が何を欲しているかを頭に入れていないと、なかなか効率よく進めることはできない。せいぜい10時間程度のゲームなので、記憶を保っているうちに一気にプレイするのが推奨されるプレイスタイルとなる。探偵に聞きに行けばヒント(というかほぼ答えそのもの)を貰えはするものの、それだと本当にただのおつかいになってしまうので……。世界観にまつわるクイズを出してくる住民もいるので、(答えを丸暗記でも対応はできるが、)シナリオを読みながら濃厚なSF的世界観をしっかり理解する方が楽しめる。
シナリオ的にもハウダニットが判明するあたりまでが一番面白かったかな。アウターポータルを開いてしまった時の地獄の釜の蓋が開いたようなおぞましさと、それに果敢に挑んでいく草ちゃんの覚悟が熱かった。ホワイダニットはなんかF○teとかでも聞いた設定だったのであんまり目新しさはなかった。フーダニットも、自分的にはモブの一人と思っていたキャラだったので「お前が犯人だと!?」というミステリ的驚きはそこまでではなく……。ラスボスとの対決に至る最後の展開は、前作をやっていたら熱かったのかもしれないけれど、やっていないので、若干置いてけぼりにされた感があった。
サブシナリオでは、ただのチュートリアル用キャラかと思ったら深掘りしていくと思った以上に重い業を背負っている死にうさのシナリオが良かった。あと、ラブグッドのシナリオも非常に良かった。ムジ○ラの仮面で言うところのアンジュとカーフェイのシナリオのような、3日間のタイムラインをフルで使う入り組んだシナリオ大好物です。
音楽はほぼフリーBGMらしいのだが、音楽テーマの作品なだけにこだわって選曲してるんだろうなというのは伝わって来た。自分はフリーBGMへの解像度が低いので、スタッフルームのコメントによると本作品のために録り下ろされたのはOPだけらしい?というのはびっくりした。OP良い曲なので、作中でももっと印象的な使い方しても良かったのではとはちょっと思った。