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mi-naさんの夜明け前より瑠璃色なの長文感想

ユーザー
mi-na
ゲーム
夜明け前より瑠璃色な
ブランド
AUGUST
得点
86
参照数
365

一言コメント

やられたなぁというのが正直な印象。前作までとは違い、逃げることなくきっちりと恋愛とその結末を描いているのに好感が持てる。そしてHシーン周りの強化に感涙。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回はいつものオーガストと見せかけて、色々と変更があります。
そこに触れつつ拙いながらも感想を書いていこうと思います。
(私がプレイしたのはプリホリ以降ですのでそこまでとの比較となります。)

まずやはり共通ルートでの日常描写が大きく削られたことでしょうか。
オーガストは基本的に会話にあまりギャグを交えないため、
日常では当たり障りのない会話が繰り広げられることになるのですが、
前作(はにはに)はそこにかなりのウェイトが置かれており、私はとても退屈に感じていました。
今回はそこを最低限に留めたことで退屈さが薄れています。
その反面、共通の大きなイベントというものがほとんどなく、
単に何気ない日常をいくつか切り取って配置した感じで、イベント同士の繋がりが薄くなっているため、
共通ルートがストーリー上でほとんど意味を成さないものになっているのは少し気になりました。

個別ルートに関しては、前作のようにいきなりトンデモSF展開で話を動かすのではなく、
ヒロインとの恋愛とそれに対する障害を乗り越える話を描いており、
その部分も前々作(プリホリ)のように最終的に決着をつけることから逃げる形を取らず、
ちゃんと最後まで描ききったのに好感が持てました。
今回から採用されたヒロイン視点もその部分の理解度を高めていると感じます。
気になる点としては、相変わらず舞台背景をあまり描かないため、
一部ルートのSF的な展開の説得力が弱いということでしょうか。
それに汚い部分の描写もあまり無いため、
さやかや麻衣ルート終盤でのさやかの家族への強いこだわりが今ひとつ見えてこないのも気になります。
さやかルートに関しては、さやかの心情の変化の描写も弱く、いつ主人公を好きになったのかがよく分からない点も残念でした。
せめてヒロイン視点を入れてくれれば良かったのですが。
素人目にも色々と突っ込みどころが出てくるのは相変わらずですね。
特定ルートの攻略順強制の意味もあまり見えてきません。

次に主人公を中心としたキャラの描き方や性格に触れます。
今までの主人公はわりに軽い性格で悠々と世の中を渡っていく感じでしたが、
今回は真面目で努力家ながらも年齢相応に子供っぽいというか青臭い部分を持っており、
悩んだり、ルートによってはヒロインと衝突したりもします。
この部分は人によってかなり好みが分かれるとは思いますが、
特にフィーナルートでの衝突はお互いに否があり、またお互いを理解するうえで必要なシーンだったと考えています。
私はそういう青臭さが結構好きなので、良い変更点でした。
主人公が生真面目な性格の分、サブキャラの仁がなかなか楽しいキャラで、
主人公を導くうえでも良いキャラになっていたのも私にとってはプラスです。

そしてHシーンですが、今回のソフトで私が一番満足した点はここです。
CGの構図やキャラの表情は今まで以上に扇情的かつ可愛らしく、
かなりこだわって描かれているのが見て取れ、
差分も多く、前の行為でついた精液が次の行為のCGにも残っているのも良い点です。
また、前作までと比べ、ヒロイン達も積極的に求めてくるのが特徴で、連発シチュもかなり多くなっています。
地の文の描写の丁寧さも相変わらずで、セリフも卑語を使わずにかなり上手くいやらしさや愛しさを出していると感じました。
回数も一人当たり4回や5回あるキャラがおり、前作より多めとなっています。
ただ、Hシーンが1回しかないキャラの分が他のキャラに回っていて、総数があまり増えていないのは残念でしたが。

システム面はNscripterの使用をやめたというのが一番の違いです。
クイックロードがちゃんと搭載されていたり、
スキップがかなり高速していたりと細かい改良点はありますが、基本的にはほとんど変わっていません。
そろそろウインドウの透過率も設定させて欲しいところです。

演出関係は一部にちょっと面白い表現があるだけで全体的には地味で、もう少し頑張って欲しかったところですね。
立ち絵は前作同様服装や表情のバリエーションが多く、キャラの魅力を引き立てていますし、
視線で細かな表情を作っているのも面白いです。
音楽にわりと印象に残るものが多くなっているのも嬉しいですね。


今までオーガストのシナリオをまともに楽しんだことは一度も無かったのですが、
今回は不覚(?)にも遊び終えて「面白かった」などという感想を抱いてしまいました。
もちろん前作と比較してという部分もありますし、テキストに退屈な部分はやはりあります。
細かい穴や描写不足だって確かに気になりますが、
最終的に綺麗にまとめているシナリオが多いので、なんだか満足してしまいました。
特に麻衣シナリオはかなりのお気に入りです。
発売前に「シナリオやテキストは諦めている」なんて書いてしまって申し訳ないです。
そして、家族を取り扱った話への私の弱さを改めて実感しました。

・・・というか、フィーナや麻衣の一言一言に激しく萌え転んでいる時点で私の完敗です。
特に麻衣は萌えエロ的にヤバい。
今までオーガストのキャラにあまり萌えたことはなかったのになぁ。
原画や声優、キャラ設定などを含めた「キャラ作り」が上手いメーカーだとは思っていましたが、
肌に合うとここまでになってしまうのですね・・・