「不妊治療」や「血の繋がりと親子」といったデリケートな内容を真摯に描いていた作品でした。何より醜い感情にも目を背けずに登場人物達から語られた言葉が本当に真っすぐでした。楓√が好きでした。
不妊治療、血の繋がり、なぜ親は子を産むのか、不育治療、流産……等々。
どれも扱うにはとてもデリケートな内容で、正直話の内容も重いものがありました。
毒親や親と子の仲が良好でなかったり、自分の親が本当の親でなかったりする部分であったり。
さらに楓√では、中盤まさかの楓さんの展開には、さすがに息をのみました。
正直、自分自身こうした親と子の仲が上手くいっていなかったり、子が幸せではない話は苦手です。
けれど今作は、重いテーマでありながらも登場人物達の言葉がすごい真っすぐで読みやすかったです。
醜い感情や言葉をどうしても抑えきれなくて、相手にぶつけてしまって、それでも幸せになりたいと、二人で前に進もうとする姿。主人公自身が、様々な経験を経て、親と和解する姿。少しでも向き合おうとする姿。
そのどれもが、タイトルどおり「自分よりも大切な存在」のために、と描かれる内容がとても好きでした。
その中でも好きだったシーンが、楓さん√の楓さんの姿。
流産を経て子を失い一番辛いはずなのに、それでも自分の幸せだけでなくて、主人公にも血の繋がりを、幸せになってほしいと願うからこその「もう一度幸せになろうよ」って言葉の強さが......強くて打たれた
また楓√終盤の愛海さんの姿もこの作品らしくて好きです。
かつて好きだった主人公にフラれて、社会人になって。
その後楓さんがいなくなり、主人公と子どもの樹だけになったところで、二人を支えるために子育てを手伝う愛海さん。
主人公のことが好きだから打算的に近づいてしまう自分自身の醜い感情と、ただそれでも幸せになってほしいという想いも確かにあるからこそ助けるその姿がとても好きでした。
こう今作は、醜い感情と幸せになってほしい、なりたいという感情がないまぜになって生きていくようなバランスが本当に上手だと思います。
そしてその後の樹視点がね……これまた本当に好きでした。
様々な視点で、それぞれの家族の在り方だったり考え方が語られていくのも、今作で良かったところでしたね。
とても真摯に作られた作品だと思いました。
面白かったです。ありがとうございました。