考察すればするほど絵麻さんの想いの深さにハマっていく。備忘録として残す考察と感想です。みなさんはあの最後の終わり方を肯定できますか?否定派ですか?
ねえ
教えてあげてもいい?
何処にも行かない気持ちが……
この世界にはあるってこと
『何処へいくの、あの日』
妹である絵麻のための物語でした。
考察すればするほど、絵麻の想いの強さに、魅力に惹かれていくような物語でした。
考察してきたこと、感想を備忘録として残したいために感想を書きます。
そのため、ネタバレ全開です。
未プレイは閲覧非推奨です。
まず、感想を書く前提として、明かされる設定についての考察をいくつか残していきます。
○世界の仕組み、虫食いの現象とは
まずこの物語である世界の秘密は、選ばれなかった「もしかしたらありえたかもしれない可能性の世界」ということであり、現実ではない『嘘の世界』が存在するということです。
それは絵麻が望んだ世界であればあるほど、維持され。
逆に、絵麻がこの世界を強く望まない、想いがなくなった場合『虫喰い』が発生し消滅する。
もしくは、千尋によって消滅されます。
絵麻√までに4人のヒロインを攻略してきましたが、どの√も虫食いend(桐李も多分)になった理由は、絵麻が望まなかったから。
本文絵麻√で虫食いが発生時に、絵麻が慌てて「お兄ちゃん誰を好きになったのよ?」と言及する姿は、恭介が誰かが好きになったから現象が起きた、と理解した発言と思われます(能動的な発動ではないのかも)
○絵麻の能力とは何か
それは、『選ばれなかった世界、可能性があった世界』を見ることができる能力です。
しかもそれは、過去ではなく、未来を見通すことができること。マージよりも強力です。
両親の事故を予知夢したかのように見えたのはこの能力があったから。
しかし、選ばれなかったはずの世界は無数にあるため、どれが本当にあるのか彼女にはわからないです。
『見たはずの世界……何処へ行くのかなって……』
そして同時に、彼女の能力の真髄は、上記で述べたように、『可能性があった世界を強く思えば思うほど維持する』能力です。
ちなみに、この世界の維持する力(虫食いに対抗する力)は主人公に託されています。(手から炎を出す現象など)
★以下本文(絵麻√、恭介と千尋、夕暮れの告白シーン)より
恭介「抑えていた力は……絵麻のものだったんだ。それがどうして俺に……?」
千尋「だってお兄ちゃんだから」
虫食いに対する抗う力は、元々は絵麻のものであり、同時に恭介は主人公にとってヒーローであって欲しいがゆえに主人公に託した力だと思われます。
○千尋の位置づけ、役割とは何か、主人公の殺人とは何か
千尋√より明かされます。
千尋の正体は、上記で述べた異常な世界を調べるためにやってきた存在(本文は『アレ』のためにと述べている)であり、『選ばれなかった世界』を消す、いわゆる『敵』と位置づけられる存在です。
よって、千尋が転校するとき=消えるときは、この世界が消えるとき。
同時に、虫食いの現象を防いだとしても、同時に千尋さんをころさなければ虫食い世界を消えてしまう。
あの夏の思い出のあの日を迎えた後、高校生活を迎えた世界は、全部千尋をころした後の世界です。
(千尋は人間ではないので全ての世界で生きていますが)
主人公の殺人とは、虫食い現象を防ぐために千尋を殺したことでした。
彼女を殺したことは、主人公にとっての罪悪感であり、それが彼を縛る根幹でありましたが、千尋の存在は人間ではないため、殺人ではなくその罪悪感は虚構のものでした。
アレの存在は正直考察材料が少なすぎて不明。千尋の上司にあたる存在か、絵麻による主人公をヒーローにしたいがための敵としての存在か。不明。
○世界の分岐点によってあげられるそれぞれの世界
ごん太さんのレビューがめちゃ参考になるので省略。
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.phpgame=3697&uid=%E3%81%94%E3%82%93%E5%A4%AA
○マージとはなにか
マージとは、本文中を引用するなら
>>>>>>>>
脳の中の認識と、客観的な存在としての外界
その間に横たわる境界を無効にするもの
夢と現実。あるいは、記憶と現実。その両者の間にある境界。
マージはそれを無効にする
マージの夢は個々人の記憶の集積
だから、過去の改変はあくまでパーソナルな範囲に限られる
夢が現実になるわけではない、現実と、夢----記憶の集積の垣根が取り払われるだけ
マージは有り得た可能性を探る、探針のようなもの
>>>>>>>>
と、桐李のお父さんが難しく言っていますが、
簡単に言えば、
過去を見ることができ、同時に過去に自分が行動を起こす可能性があるならば、過去で起こした行動は現実に反映される。というもの。
具体例として自分が過去の当時に殺人を起こす可能性がないなら、人を殺しても殺人は起きないし、木に文字を書く可能性があるなら現実に文字が書かれる、というものでした。
同時に、マージの夢は大衆の記憶の集積になるため、それぞれ個々人の夢が共有され同じ過去を見る(行動を移す)可能性があるというものでした。
このマージのトリックを使って真相が明かされるのが一葉√であったり、幸せな夢のまま起きなくなるのが桐李√であり、お互いがお互いを助けたい生きて欲しいと思うがゆえに、悪循環を引き起こす結果を引き起こしたのが、青井√でした。
マージは過去を遡り変えられる禁断の方法であり、どれも怖い結果しか招かないなと思ったのが、他3人の√を見てきた感想です。3人は、マージによる√でしたね。
以上が、まず把握しておきたい基本的な設定部分です。
以下に、千尋√の感想、絵麻√の感想を述べていきます。
○千尋√感想
千尋の位置づけについては、上記より。
千尋さんは、何度も世界を消す=絵麻の想いを何度も殺してきた ということであり。
でも、彼女にとって夏の思い出は本物だからと思うと、なんて辛い苦しいものかと思います。
★本文千尋√より
恭介くんが手にかけたの、あたしなの
だからだよ、本当はそんな出来事がなかったのは
だってあたし、生きてる。ねえ、サンデー?
(中略)
けど……楽しかった、ほんとうに楽しかったんだよ、あの夏……
友達みたいにみんなで遊んで
ほんとうに……楽しかったんだよ
あたしの目から見たって、恭介くんはヒーローに見えた
あんな夏……あたしの人生には絶対になかったんだ……
なのに……なのに……
あたしは裏切り者で……
本当はみんなの中に溶け込んじゃいけなかったのに……自分を見失った……
>>>>>>>>>>>>
恭介くんには力があった。この世界を維持するっていう強烈な力
だから、『アレ』に打ち勝つことができた
けれど今は
あのね、あたしが『虫喰い』される世界から消えるとき……
あたしも、その世界の人達も、記憶を引き継ぐ事はできないの
「忘れるってこと?」
そう……けれどそれは当たり前の事だった
だってあたしが消える時は、その世界自体が消える時だから
けれどこの世界は残っていて……
あたしもあの夏の事は覚えていて……
それでもやっぱりみんなの中から記憶は消えているみたいだって、安心してたんだけど……
恭介くんは……恭介くんだけは……覚えてるんだもんなあ……
ごめ……ごめんなさい……!
あたし……あたしは別にいいやって……
し、死んだりとか……そういうのは、あたしには……ないから……
ずっとずっと苦しめて……
ごめんなさい……!
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
この物語は、絵麻さんの物語のためだと思います。
でも同時に、夏の思い出を過ごしてきたみんなのための物語だとも思います。
その中の一人である千尋さんのこの想いは、例え『敵』であるという役割があったとしても本物で、かけがえのないものだと感じたシーンです。
だからこそ、後述するTRUEendの千尋さんは幸せそうで、彼らと一緒に過ごせるようになった姿は本当に幸せそうで、
とてもTRUEが好きな一つの理由です。
千尋さんによって真相が語られる面が強い√ですが、私にとってはさらに千尋さんが好きになるシーンが詰まった√でした。
○絵麻√について
共通√では何度も絵麻さんと恭介の繋がりを見てきました。
1週目、何も知らず共通を読みすすめてきたときには、何度も身体を重ねる姿を見ており、ここから他ヒロインにどのように派生するのか、と考えたほどです。
共通時点から、絵麻さんのストレートすぎる想いには目を見張るものがあり。
絵麻さんの料理が必ず手料理な理由は、子供時代(マージ過去より)に桐李が恭介に弁当を食べさせてあげる姿を見て、自分が食べさせてあげたいからって料理が上手になったわけで。
もうこの時点でなんていう愛情の深さか。
しかも、コンビニ弁当なんてもってのほか、常に新鮮な食材で料理したいからと冷蔵庫にはあまり食材を置かずいつも商店街で買い物を欠かさない、主人公が昔和食が好きという理由だけで和食を作るという。
この愛され具合。
普段クールなところ、笑わない姿の中に垣間見える絵麻さんの愛情は本当にくるものがあり、同時に真相を知った今ではもうもうもう(言葉にできない)
こうした姿を知る中、
何度も何度も、何度も何度も何度も。
ひたすらに色んな可能性の世界を見ながら、『お兄ちゃんと結ばれる』世界を探し続けた絵麻さんの想いの強さがどれだけのものだったか。
その一方で、どの世界でも主人公は絵麻のことを妹としか見ることができない、仲の良い妹としての関係でしかいられない儚さ辛さの吐露がとても辛い。
でも主人公も絵麻のことを『妹として』は愛していたのは事実です。
それはED後の妹が亡くなった後の姿で存分に知ることができます。
遊園地の姿もそうでした。
また一葉の『吐き気がするほど、ロマンチックだね!』の言葉に対して、
好きなやつと一緒で何が悪い!という言葉は、まさしく主人公の本意の言葉でした。
主人公は絵麻のことを本当に愛していたのです。ただそれは恋人ではなく、妹として。
絵麻は主人公のことを本当に男として繋がりたいほどに愛していたいと願ってしまった。
この隔たりが何度も繰り返れる世界の正体であり本質。
千尋はそれでも絵麻を応援したいと願い同時に、兄妹であることが悲劇と言う。
同時に兄妹でなければありえなかったこの関係。
★絵麻ED後本文より引用
絵麻……。
俺の妹。
差し伸べてくる手を、俺はどうしても受け入れる事ができなかった。
幼い頃からずっと一緒に居て……、
誰よりも大切だった人。
俺たちは……、
俺と絵麻は……
家族ではなく、ただ男女として在る世界の方が。
他人同士の方が良かったんだろうか?
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
この苦悩、心境の吐露はなによりも辛く儚いものでした。
★絵麻√本文より引用
世界の終わりのそのまた果て。
砂浜で一粒の砂金を探すという、どんな人間も音を上げる果てしない旅に
とうとう最後が来た。
俺は結局、絵麻に与えなかったのだ。
絵麻のこぼしていった悲しみが点々と残っている。
それは涙の跡のように……、
絵麻の歩んだ全ての中に。
歩いて歩いて、そして何処かへと行ってしまう。
……絵麻の心は。
行き着く先は何処にあるんだろう……。
……いくつもの思い出。
楽しかった日々も、そうだったかもしれないというだけで消えていく。
可能性だけをちらつかせ、そして消えていく……。
掛け替えのないあの日は……、
何処へ行くんだろう……。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
ねえ
教えてあげてもいい?
何処にも行かない気持ちが……
この世界にはあるってこと
それでも、その思い出とその感情はきっと、その世界に刻みつけられているのだと強く願ってやまないのが、この絵麻√です。
○絵麻の死による刻みつけられた思い出
別の点として、私が思う絵麻√の感想の一つとしてあげられるのが
『絵麻の死によって絵麻の存在が刻みつけられること』
それは、絵麻が死んだ、選ばれた現実世界の
兄妹として結ばれなかった絵麻の想いの果ての姿。
★絵麻が自殺した世界の本文より引用
誰にもその目を向けないように。
心が決して移らないように。
一歩も先に進まないように。
進んでいく先が、前か後ろかも分からないように。
温もりに触れないように。
人から遠ざかっていくように。
ただ、幻影だけを親しむように。
死んでしまった少女だけを見つめ続けるように。
……あなたが誰も愛さないように。
あなたが過去だけを愛するように。
思い出だけを愛し続けるように……、
だから、自ら死を選んだ。
微笑んで、
あなたの心にくさびを打ち込むために。
それだけのために。
あなたをそんな風にすることだけを願って。
私は……
>>>>>>>>>>>>>
★絵麻自殺後の本文、恭介の胸中より引用
心に爪を立てる。
治りかけた傷に爪を。
忘れないように。
失わないように。
殺さないように。
いつまでも自分の中に居続けるように…。
落ち着ける居場所を胸の中に用意した。
傷口は暗くて温かい。
そこで、写真以上の笑顔を浮かべている。
だから…、
だからそこは…、
あの日と同じに、今もキラキラと輝いている。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
作中で、三木村が自殺することで母親に存在を忘れさせないものにするシーンがありました。
まさに同じように絵麻の死は、主人公にとって存在を忘れさせなくなるものでした。
例え恋人ができたとしても。
絵麻の死によって刻まれた思い出は色褪せることなく、小さな頃の笑顔のままで残り続ける。
それはあまりにも主人公と結ばれたい、一緒にいたいという願いの果てでした。
なんていう願いの強さか。
そして死者によって忘れられなくなる思い出という儚さと辛さが同時に相まって。
心が締め付けられます。
こうした中で作中の『あなた』という視点となり苛まされる姿はまさに絵麻が望んだ姿なのか。
でもこの終わり方、綺麗で儚くて、めちゃくちゃ好きなんです。
まさに作風に合っていてといいますか、今までの共通√等の話があってこの終わり方を迎える展開の綺麗さ。本当に素敵なmoonstoneらしい魅力の詰まった終わり方だと思います。
○主人公の存在の根幹でもある『罪悪感』について
ここからは別の点のおはなしになりますが
絵麻√を語る上で私が深く印象に残ったシーンとしてあげられるのが、
『罪悪感』によって支えられた存在意義というエゴの面 です。
そもそも、『何処へ行くの、あの日』の物語は、主人公が『夏の思い出で誰かを殺してしまった罪悪感』を探し出す物語が要素の一つとして語られます。
そして、本文中で、主人公は何度もこの『罪悪感』について語られるんですよね。
その本文中の中で私が引っかかったところが千尋√でこの罪悪感(殺人)の真相が語られたとき。
★千尋√より引用
俺は不意に恐怖を覚えた。
殺人なんて出来事、なかったならない方がいいに決まっているのに。
なのに俺はそんな誘いに尻込みしている。
俺による俺に対する裏切り。
あの夏から、罪は俺という人間の核になり続けていた。
それをいきなり奪われてしまう。
俺が俺でなくなってしまう。
自分が、自分の知っていた自分ではなかったということ。
それは喜ばしい方向なのだからと自分を慰める。
けれど俺は、罪悪感という寄生体にかすめ取られた年月を思わずにいられない。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
私は以下のように妄想し、解釈します。
皆さんは罪悪感を覚えたことはありますでしょうか。
同時に『罪悪感』があるから、『自分は悪い側罪の人間である』と『罪悪感によって糾弾される』ことに安心感を覚えたことがありますでしょうか。
主人公は罪悪感によって、苛まされ同時に罪を持っていることで、自分は妹を受け入れられない(要素がある)のだと
逆を言えば、この『殺人』による罪悪感によって、自分は妹を愛する資格がそもそもないのだという『妹をなぜ愛することができないか』という理由付けに無意識に安心感を覚えていたのだと感じます。
それは、例えば絵麻さんと身体を重ねるとき、兄妹だからという理由と同時に、過去のことを持ち出すことで自分を否定しようとする場面も見られました。
しかし、その罪悪感がなくなった今、その罪悪感を拠り所にしていた今、なぜ絵麻を愛することができないかという理由に『兄妹だから』という理由以外から逃げられなくなる今。
罪悪感を感じた思い出がなくなる瞬間、それらが取り払われて弱くなる主人公が、何よりも見ていて儚くて、辛くて人間の脆さを感じる1シーンでもあります。
○TRUEendについて
以上上記を述べて終わりを迎えると思いきや。
この現実世界(選ばれた世界)だけで終わることがなかったのが、何処へ行くの、あの日。
TRUE√。
まさかのこの先にもまだ展開があったことに衝撃でしたが、ここも感想を残していきます。
○絵麻√ではなぜ虫食いが起きたのか
まずTRUE√の考察で考えていきたいのは、絵麻√のこの点です。
そもそもの話です。
上記の設定まとめでは、絵麻さんの望んだ世界ではなくなり想いが薄れた時(他ヒロイン結ばれる等)虫食いが起き、世界は消え去る仕組みでした。
では、誰も好きになっていない絵麻√では、なぜ虫食いが発生したのか。
一つの理由としては、千尋を殺さないことを決断したこと。
その決断の理由がTRUE√の要素にあった
『夏の思い出のようにみんなと一緒に居たいと願った』という点です。
きっと彼女が、二人きりの世界でい続けたいという純粋な願いを持てなくなってきたから、
他と同じように願いが薄れ、虫食いが発生したのだと私は考えます。
絵麻√では、最初作中に何度も、
『みんなと一緒にいるよりも、主人公と二人でいる世界が一番最高の時期だった』
と言います。
主人公が、「絵麻が手術が上手く行ったあと、早く自由にみんなと元気に遊べるように願っていた」と願う一方、
絵麻は「手術が上手く行ったあと、健康になるまでの間、お兄ちゃんが自分のことだけを気にかけてくれる時期が一番幸せだった」と言い放つ姿の、なんという兄妹と恋人同士を願う二人のすれ違いか。
こうした強い想いが、彼女の世界(恭介と絵麻が何度も身体を重ね、繋がりを求めようとする世界)を維持するために必要な想いでした。
しかし、何度もマージを通して夏の思い出を探るたびに、絵麻は何度も夏の思い出、みんなと過ごす思い出を体感することになります。
それぞれの枝分かれした世界を見る中で、何度絵麻は夏の楽しい思い出を過ごしてきただろうか。それは、主人公の自分を好きになる可能性を探す数と同時に、途方もないほどの数の夏休みの時間を過ごしてきたということ。
こうした時間が絵麻の『二人きりの世界』でいたい想いより、『みんなと一緒に居たい』という想いに揺らいでいった結果、世界を維持することができなくなり、虫食いが発生するようになったと思われます。
★本文より引用(絵麻√最後より)
私だって……私だって本当はみんなと一緒が……
『やっぱり、みんなと一緒がいい……』
(中略)
けれど、私達は私達の世界を守らなくちゃいけないから
私とお兄ちゃんの世界、守らなくちゃいけないから
だから、敵を倒さなくちゃ
こっちの世界は嘘だから
だから、それに載っている私達はみーんな嘘
本当にしてあげなきゃ
嫌だよね?自分が幽霊みたいな存在だったなんて
耐えられないよね?
自分の生きる世界がなくなるなんて、我慢できないよね?
だから……
だから、千尋ちゃんを倒さなくちゃ
お兄ちゃんが
お兄ちゃんは私を助けてくれるよね?
お兄ちゃんは私のヒーローだから
(中略)
そっか……絵麻ちゃん、本当の『本当』を知っちゃってるんだね……?
※ここでの『本当』は、絵麻が手術に失敗して亡くなった『選ばれた現実』のお話と思われます。
お、お兄ちゃんは……私のお兄ちゃんだから…
だから、私を救って……
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
みんなと一緒にいられるなら、みんなで幸せになりたい。
でも『本当』を知っちゃってる今、ヒーローである主人公に、私達の世界を守らなきゃならないと強く願ってしまう。だから千尋ちゃんを殺して欲しいという『二人だけの世界』の願いと、『みんなと一緒に居たい』願いが天秤にかかったシーンだと思います。
○TRUEendを迎えた理由、要素
これらを整理した点で迎えた
『みんなで一緒にまた生活する』ことを迎えたTRUE。
色々な想いが駆け巡ってて正直感想が難しいです。
一つ一つ備忘録も兼ねて要素をまとめていきたいです。
まずTRUEの世界は本当に選ばれた『本当』の世界かどうかという点がありますが、
ここはTRUEという点も踏まえ、現実世界を塗り替えた『本当の世界』になったと仮定します。
では。
なぜTRUEのような世界を叶えることができたのか、なぜ選ばれた世界として健在できたのか。
それは大前提の一つとしては、『可能性としてありえた世界だったから』
(こう考えると、絵麻が主人公と結ばれる世界がありえなかったと思うとこうくるものが)
そして、全ての可能性を探し出して取り戻したから。
最後に、今まで何度も絵麻の能力、またマージによって見てきた世界で、記憶は残らなくても、
『みんなと一緒に過ごしたい』という感情や思いが蓄積されて、
叶えたいと強く願うようになったからです。
★TRUE本文より引用
実はね
ワタクシ、勘当されまして
職権乱用で人助けをしたからなんだ
サンデーの野生の勘で、前に命を救ってくれた事のある女の子がわかったの
その子の弟だからね、今度はこっちが助けてあげようって事になった訳
でも、絵麻ちゃんの方こそ頑張ったね?
取りこぼした可能性を取り戻すの、なかなか大変だったはずだけど(千尋)
きっと、少しずつ心の中に蓄積していったんだと思うよ(絵麻)
記憶には残らないとしても、感情だとか思いだとかは残るのかもしれないね(千尋)
うん。……多分、見ているだけじゃ嫌っていう気持ちが溜まっていったんじゃないかな……(絵麻)
練習……してるだけ……
久しぶりな気がするから……だから……練習しないと……(絵麻)
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
上の引用、一気に語られるわけなんですが
まず、勘当されたことで千尋さんは見事人間になります。(制服がキリガクでしたね)
サンデーの野生の勘で救ったのは、トモのこと。
絵麻が全ての可能性を探り、取り戻して実現させたこと。
そしてここからは私の妄想ですが、最大の要素としては
参加している全員がマージによって『あの夏のように一緒に過ごしたいと強く思ったから』ではないでしょうか。
主人公と絵麻の二人だけの世界の願いは、あくまで絵麻だけの願いでした。
しかしマージは夢を共有することができ、私達は何度もあの夏の思い出を、それぞれのヒロインの世界で見てきています。それらの過去が同時に『あの夏』の願いが何度も蓄積していった結果。
あの『夏の思い出』が現実に転嫁し、現実世界を塗り替えるようになったのだと思います。
まるでマージのように。
また最後の練習、何を練習してるかって絵麻さんの笑顔なんですよね。
絵麻が笑顔をなくした理由は、何度も世界を消していくうちに心が磨り減ったからでした。
そんな絵麻さんがまたみんなと一緒に過ごすために、笑顔を練習する姿のなんて可愛いというかもう絵麻さんほんとうに。
しかもここでのシーン千尋さんは、『お仕事終わったぞー!』って喜ぶのが、絵麻の思いをもう摘み取らなくて済むという喜んだ姿を見るのがまた嬉しい。
そしてなんといっても絵麻の笑顔のセリフ
『身体が健康になってみんなと一緒に遊べるようになって、ほんとに良かった』
『今年の夏休み、すっごい楽しかったよ』
っていう姿を見ると、もうここで私はリアルにもうくるものがありましたね。
★TRUEend本文最後の言葉より引用
私に残った
最後に残った
暖かくて
眩しくて
嬉しくて
そしてちょっと寂しい
たった一つの大切な……
>>>>>>>>>>>>>>>>>>
寂しいけれど、でも暖かな終わり方。
『総評』
○みなさんはTRUEend肯定派ですか?それとも否定派ですか?
すごいみなさんに聞きたいのが、みなさんはこのTRUEの終わり方が好きですか?
という点です。
ほんときっとすごい賛否両論だと思うんです。
まずTRUEendの終わり方は、絵麻さんは『兄と妹は結ばれる可能性はなかった』という点が大前提にあって、それでも『心の底にはみんなと一緒に幸せになりたかった』という気持ちがあったから幸せになれたという一つの答え。
私は正直(卑怯だとも思いますが)どちらも好きでどちらも甲乙つけがたく。
TRUEの前に挙げられた、妹の死を乗り越えず、死によって刻まれた、あの狂おしいほどの想いの強さは、まさに妹が結ばれたいと願う感情の成れの果てとしてとても美しいとも思うし
でもあの彼女の姿を見てきて、そして千尋の姿を見てきたから、あの幸せそうな日常も見たかったというのも本音であって。
こうこうこうどちらも見たかったので、どちらも嬉しいんだけど。
きっと発売当時感想、すごい割れたんじゃないかなぁという私の勝手な予想です。
きっと妹が好きな人は、TRUEを認められないっていう人もいるだろうし。
純粋に彼女の幸せな姿が見られた、という点で肯定できる部分もあるだろうし。
素直によくこの二つが作り上げられたなぁとも思います。
そして作品の総評ですが、いやぁ面白かった。
久々に考察しがいのある作品でした。
特に千尋√、絵麻√に入ってからの考察が面白くて面白くて。
考えれば考えるほど、絵麻の想いの深さにはまっていく。魅力に魅入られていく。
絵麻さんにとっての本当の幸せはどちらでしょうね。
心を独占し続ける、繋がりを求めた成れの果ての姿か。
兄妹の関係を受け入れ、みんなと一緒に楽しく過ごしていく姿か。
と考えればさらに考えるほど絵麻さんのこの深みにはまっていく。
これが私にとっての『何処へ行くの、あの日』です。
OPの最初にも出てくる
何処にも行かない気持ち とは
どちらのことを指しているのでしょうね。
そして、選ばれなかったはずの世界にも、きっと何処にもいかない気持ちが、今の世界にもあると思うと。
絵麻さんのどちらの想いも、どちらの世界にも混在してどちらの絵麻さんもあり得るのだという
どちらも絵麻さんの本当の姿だと思うと、あぁより絵麻さんの想いにはまっていきそうです。
本当に素敵な物語でした。
ありがとうございました。