自分の居場所を探すために、変わりたいと一歩踏み出した少女の成長の物語。そばで優しく寄り添うだけではなくて『あなたの事が大切だから』こその展開がとても丁寧で。ピアノのBGMと雰囲気も相まってとても綺麗で優しいお話が素敵。全部読み終えた後に染み渡るOP、EDの歌詞がずるいです。
──────────────────
この町で、リセットする。
間違った道に進んでしまった私の人生を──
「最初から、やり直すんだ」
──────────────────
過去に受けた傷により、心の殻に閉じてしまった少女のお話。
色々好きな所はありますが、何よりも一番好きなのは、
『優しいだけではなくて、本当に大切な友達だからこその言葉を贈る』物語がとても綺麗でした。
深菜の『陽毬ちゃんにお店を継いでもらいたい』という思いが、本当に自分がしたいことではなくて、『この見つけた居場所に逃げたい』と沙波に見抜かれたのが後半の展開でした。
だからこそ、沙波は、そして蘭は、沙波がかつて蘭を突き放したように、今度を深菜を突き放す。
蘭自身ももっと深菜と一緒にいたいのに。
でもそれは深菜のためにはならないから。彼女が大切だから。
蘭「自分のことは、自分で決めるの。決めていいんだよ」
大切な友達になった蘭と一緒に過ごして、最初の深菜と蘭の関係とは違う。
だから深菜には未来を自分で決められるようになって欲しい。
お互いに大切な存在だからこその蘭の言葉。
優しいだけじゃないからこその距離感が、もう本当に素敵すぎて。
そして最後の祭り。美智子さんからの卒業証書。陽毬からのプレゼント。ハーバリウム。
電車の別れのシーン。もう最後の詰め込みっぷりがね。とても綺麗でした。
これら全てを読み終えた後で、OPの歌詞、EDの歌詞を聞くと、色々とこみ上げるものがあります。
OP「Convallaria」より
──────────────────
ここからが始まり。
長い夜の終わり。
さよならなんて、ほんとは寂しいけど。
一歩踏み出す勇気を、君が教えてくれたから。
もう大丈夫。私が選ぶ明日へと。
歩き出すから。
──────────────────
歌詞の蘭と深菜の心情描写とのリンクがもう卑怯すぎます。
この物語は、確かに二人の少女の成長を描いた物語でした。
今作の特徴と言えば、スチルを沢山使った(マルコやminoriのイメージ)演出であったと思います。
ただそれは沢山使うだけでなくて、一つ一つの心情描写に合わせた遠近の丁寧さが本当に素敵でした。
心を隠したい所では表情が読めないような目元を隠したり、蘭と深菜が対になる部分では表情を全部写さない等。
そのシーン一つ一つの心情描写に寄り添ったような丁寧なスチルの使い方が、よりこの作品の綺麗さを際立てているのだと思います。
更には、声優さんの丁寧な演出、ピアノ調によるBGMの雰囲気作りもとても素敵。
話の内容自体は、派手さがない王道な内容だと思います。
でも、だからこそその一つ一つにとても真摯に寄り添った作品だったとも思います。
私にとってspriteの初めての作品でしたが、とても楽しめました。
同時に、自分がもっと学生時代や若かったらもっと刺さった内容だったんだろうなとも思います。
こう考えてる時点で多分もう老いてます。
またOPの動画で浸りたいと思います。
以上です。
ありがとうございました。
ハーバリウムが、その瞬間を閉じ込めるけれど、同時に1年しかもたない。
だから毎年ハーバリウムを作っているんだ という陽毬ちゃんの描写のこの作品のリンクさがとても好きです。