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merunoniaさんの終わらない季節の真ん中での長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
終わらない季節の真ん中で
ブランド
Lopt software
得点
93
参照数
134

一言コメント

『幼馴染達の夏の青春模様』を描いたまっすぐなお話でした。それは『かけがえのない時間』で、羨ましくて、眩しくて、懐かしくて、けれど『あの頃は良かった』と否定するものではなくて、『あの頃があって今の時間があるんだ』と優しく肯定してくれるような作品でもありました。とても楽しかったです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前半ネタバレなし
後半ネタバレあり



『終わる季節の真ん中で』
コミケ100で発売された同人ゲーム。ビジュアルがとても綺麗で、また舞台が岐阜ということもあってプレイしましたがとても楽しかったです。
まず何よりも登場人物みんな可愛い……。立ち絵の豊富さそのどれもが可愛くて、一枚一枚のCGの出すタイミングからが雰囲気に合っていて、登場人物みんなが優しくて愛着がわいちゃうのがとても良かったです。
特に水鉄砲で遊ぶシーンの臨戦態勢の立ち絵が一番好きでした。夏、青春!って感じです。

また内容は、『幼馴染達の夏の青春模様』を丁寧に描きながら、青春を過ごすかけがえのない大切な時間は、羨ましくて、眩しくて、切なくて、素敵な物語でした。
同時に、夏の思い出の時間は決して『あの頃は良かった』と今を否定するものではなくて、『あの頃の時間があったからこそ、今の自分に繋がっているんだ』と優しく肯定してくれるような物語でした。
内容についてはネタバレになるので後述になりますが、終わり方も、夏の切なさと優しさが詰まったお話でとても爽快感のある終わり方だと思います。

何よりも、作者さんが『かけがえのない大切な青春の恋愛、時間が本当に好きなんだ』って想いが本当に溢れて伝わってくるんです。
かくれんぼから、好きな給食の話、プールでの遊びから水遊び、祭りの時間等々、『どんな場所でも幼馴染達と一緒ならかけがえのない時間になる』っていうのが、一つ一つの出来事に親近感が湧くほどリアルに溢れているんですよね。
だから彼彼女たちの青春模様が、本当に眩しくて、羨ましくて、素敵でした。

本当に読めて良かったなと思います。



以下はネタバレありで感想になります。
①この物語の感想(記憶保持のネタバレ込み)
②大好きだったキャラへの感想(葉桜ちゃんとツナギちゃん)
③この物語で感銘を受けた青春模様
④地元ネタ溢れたあるある小ネタ
⑤最後に

①この物語の感想(記憶保持のネタバレ込み)
この作品がどのようなお話だったかを考察・感想込みで書いていきます。

そもそもこの『終わる季節の真ん中で』がどのようなお話だったかを振り返ると、
主人公である『マツリが理想の世界から元の世界に戻る』決断をするまでの優しい物語でした。

(1)理想の世界に残りたいと願う
序盤は『幼馴染達と疎遠にならず仲良しのまま過ごした』理想の世界を過ごしていくことで、『理想の世界に残りたい』と願うことが最初の想いでした。
幼馴染達と同じ学校で、一緒にかくれんぼから、プールで遊んで、花火を見て、祭りを楽しんで、時には勉強でみんなと必死になって……。
どれもが夢にまで見た青春模様で、一つ一つが眩しくて。
いや本当に一つ一つが見ていて親近感が湧くほど懐かしくて、読んでるこっちも楽しかったんですよね。
何といっても、好きだった子(花火)と一緒に過ごすことを夢に見ていたマツリにとって、この日常はどれだけ素敵なものだったか。
『もしあの頃のままでいられたら』と過去を想いつづけたマツリの想いを考えると、『理想の世界に残りたい』と願うことは当然だと思います。
むしろ、ここで元の世界に戻ることでこの幸せな日常を失くすことは怖いに違いなかったと思います。

けれど、この序盤の日常を過ごす中で、同時に『この世界の俺はどれだけ完璧だったんだろう』等と、俺と『俺』を比較してしまう一面も時々垣間見えるのも特徴的でした。

(2)花火の答え
しかし、物語の転機となるのが『理想の世界に残りたい』に対する花火の答えでした。
──────────────────
『またみんなで一緒にいたいって。
 そのためにマツリは何をしたの?
 マツリ、立ち止まっていても何も解決しないよ』
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全てを読み終えた後だとこの答えの意味合いが変わるんですけどね……。
この答えに対してマツリは、『やはり俺ではなくて、この世界の『俺』じゃないとダメなんだ……』と拒絶されたと思い込んでしまうのが悲しい。

──────────────────
でも俺でもいいって言って欲しかった。
せめて、みんなと一緒にいてもいいって……認めてほしかった
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(3)幼馴染達のアドバイス
ここで、とても頼れる幼馴染達のアドバイスが素敵なんですよね……。
エコー
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『感情に流されてまま決めることじゃないってこと。なにせ自分の将来に影響するからさ。
理想の世界が魅力的なのは当たり前。だけど、祭はそれと同じものを元の世界でも感じてる。だったらそれをはっきりさせたないと。今度は元の世界が理想の世界になるかもしれないよ』
──────────────────

ヒマ
──────────────────
だけど、それを花火に言われたからで決めてほしくない。
花火に言われて変えちゃうくらいの決心だったんだ?
祭に宿題。なんで花火があんなことを言ったのか本心を考えること。
花火が祭を傷つけるためだけにあんなこと言ったなんて、そんなこと祭が一番思ってないでしょ?
──────────────────

エコーからは、自分が今理想の世界にいないと思っているがゆえに、『元の世界を理想の世界にできるかもしれない』って答えがもうイケメンか!!!っていう。
ヒマは、幼馴染で花火のことを理解しているがゆえに、『花火の答えの真意』は何だと思う?と優しく諭してくれるのが彼女らしいと思います。

ツナギ
──────────────────
未来は可能性に満ちています。現在を頑張ればその未来に辿り着けるかもしれません。だけど、それを支えてくれるのは過去だと思うんです。成功も失敗も。自分の全てが過去には詰まっていますから。
──────────────────

そして、ツナギちゃんからは、未来と過去どちらが大切かという話に対しての答えでした。
理想の世界を願って移動したのは、過去が大切だと思っていたから。
未来を変えることができるのは、今までの積み重ねがある過去があって自分があるから。それは未来を変えるためには、過去は決して蔑ろにするものではないという考えでした。
私の中で、未来を語る上でこういった答えはとても新鮮でした。

こうして、ツナギちゃんと、幼馴染達によって、マツリは『この世界には思い出が、過去が、ぽっかりと穴が開いたように無いのだ』と、かつて風鈴先生が言っていたように、自分はどうしても『結果より過程を大切にする人間だったんだ』と気づくようになる流れがまた好きなんですよね……。


(4)マツリの自分で出した答え
そして、もう一度ツナギちゃんの前で答えを出します。
理想の世界に残りたいか。元の世界に帰りたいか。
マツリ
──────────────────
夢が出来たんだ。
またみんなで一緒に遊びたいって夢。
この世界じゃなくて、俺たちの世界で。
(略)
でも、この世界には俺はいないよ
結局は他人が作った世界だから。それを俺がなぞったって、きっといつまで経ってもどこか負い目を感じるだけだと思う。
──────────────────

ここで、理想の世界を知りつつ元の世界に戻ることを選べたマツリ君がどれだけ眩しかったか……。自分だったら選べるだろうかと思うと、本当にすごい。
また、このシーンでのツナギちゃんが本当に素敵なんですよね。
マツリのことが幸せになってほしいからこそあえて問いかける厳しい言葉。
ツナギ
──────────────────
角を立てずに残る方法なんて簡単です。
先輩は、魔法使いを見つけられなかったと。もっともな言い訳をすれば残ることが出来るんです。
(略)
先輩の選んだ道は紛れもなく茨の道です。
(略)
その未練は、後悔は、一生付きまといます。それこそ、今まで以上に
──────────────────

先輩に本当に幸せになってほしいから、後悔してほしくないから、だからこそ生半可な覚悟ではなくて、本当に『自分の選択』をしてほしいと願うからこそのツナギちゃんらしさがあるシーンだったと思います。
ツナギちゃんは優しくて強いからこそ、良い子だと本当に思います。
この作品のメインヒロインは花火だろうけども、けれど同時にツナギちゃんがいたからこそ、マツリが最後に決断ができたのだと思う本当に素敵なヒロインでした。

またこの後の魔法使いの正体が明かされるシーンも素敵。
本当にこの作品はCGの一枚一枚の使い方が、綺麗でぐっと引き込まれるんですよね。その中でも、先生が二人を抱くCGはトップクラスで大好きです。
風鈴
──────────────────
『二人のやろうとしていることはすごく簡単で、すごく難しいこと。
足がすくんで動けなくなることもあると思う。
誰にも気づいてもらえないこともあると思う。
その難しさを分かってくれるのは、二人の想いを分かってくれる人だけだから。
でも、勇気を持って一歩を踏み出せば何かは絶対に変わる。私が保証する。
だからね。祭くん、ツナギちゃん──
──頑張れ。きっと二人になら出来るよ。』
──────────────────
二人を見守り続けたからこその、想いが詰まった言葉でした。
彼女だからこそ、彼女にしか言えない言葉だったと思います。


(6)最後の夏休み
最後は、ツナギちゃんが先に元の世界に帰り、幼馴染達と最後の夏休みを過ごす終盤でした。
ツナギちゃんの最後の別れはとても名シーン……。
『この魔法のような夏に当てられていないといえば嘘になるかもしれません。
この気持ちがそんなことから生まれたのだとしても。それでも、この想いは嘘じゃありません。運命だって思っちゃダメですか?』
あのCGと一緒にツナギちゃんの想いを聞いてしまったらもう、心打たれるに決まってるわ……という内容でした。

その後の最後の中学校での授業もすごい楽しくて、終わってほしくないけれど、最後の思い出作りのような楽しさがありました。
ツムギちゃんの意地悪さ(誉め)から、葉桜ちゃんの照れ顔要素に、花火の正妻ムーブから、エコー&ヒマの幼馴染タッグまで全部が詰まった面白さ。
サッカーから、料理対決から、英語から何から何までずっと見ていたいくらいには好きでした。

そして最後の授業終えて、最後の思い出作り。
花火との『手持ち花火』で遊ぶシーンの台詞がとても好きです。
──────────────────
祭「でも、夢ならいつか醒めなきゃだね」
花火「そんなこと、わたしがさせないから。
これが夢だとしても、醒めなきゃいけないなんて嘘だよ。だってせっかく楽しい夢なんだから。
思い出の中にずっと残しておいて、いつだって帰られる楽しい場所にしないと。
この思い出は絶対に醒めない。一生マツリの心に残してあげるんだから!
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何が一番刺さるかって、この作品で何度も語られた『思い出はあの頃は良かったと否定的なものではなくて、思い出があったからこそ今があるんだ』って最後に想わせてくれる言葉なんですよね。
あの頃は楽しかったよねっていつでも楽しい気持ちにさせてくれるものだって。
そしてこの先もきっと楽しいことが待ってるよって。
何よりその時の花火さんが本当に本当に可愛いんですよ。(重要)
だから、ヒロインの可愛さも相まって、青春の眩しさも相まって、優しく思い出を肯定してくれるような作品で本当に好きだなぁと思えるシーンでした。

(7)別れとはじまり
そして、最後の別れ。
それは夏らしい向日葵が一面に咲く向日葵畑でした。
花火
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マツリはバカだよ。忘れるはずなんてない。
……マツリが自分のことをどう思ってるかはなんとなく分かってるつもり。幼なじみだから。
強くなくてもいいんだよ。でも、一人でいるのはダメ。
悲しませても良いんだよ。でも、あとで笑顔にしてあげてね。
傍にいてあげて。それだけで、きっと幸せだから。
いつかもう一度、わたしに……『わたし』に会いに来て
──────────────────

そして元の世界に戻り、元の世界の花火に挨拶をする、
それはかつてのマツリの姿から新しく変わろうとする姿であり、
『過去を現在に帰るために。夢を現在に変えるために』
それがこの物語の結末でした。

フルカラー本にも書かれていたように、『咲花との別れの物語』まさしくその通りだと実感します。
花火さんとマツリの関係で何が素敵だったかって、最後まで、マツリを『元の世界のマツリ』として見ていて、肯定して、好きだって伝え合う関係性なんですよね。
──────────────────
『マツリがどんな風に過ごしてきたか分からないけど、わたしがいなくても成長できたんだね。えらいえらい』
『他の誰でもない……今ここにいるマツリのことが大好き』
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今の世界の祭ではなくて、元の世界の『マツリ』のことをずっと見てくれていた、好意を最後まで寄せてくれていた姿がありました。
この夏休みの短い時間の間でも、二人の積み重ねがあったからこそ、最後の言葉
『わたし』に会いに来て という言葉の切なさがたまらなく好きです。

花火の好きな人は『今の世界の祭』で、同時にマツリの好きな人は『元の世界から理想の世界に変えた後の花火』で、二人の恋愛は今の世界で叶うことがなくて。
でも彼彼女たちの好きな対象と同じくらいきっとお互いに好きなはずで。
お互いがお互いを応援するような形が、本当に大好きな最後の別れと再会の結末だったと思います。
また後日、お互いの世界を自慢できるような、笑い合えるような再会があることを願って。

そして最後に重なっていくED『いつか君に送る詩』の歌詞がたまらなく最高にリンクしていくんですよね。
「もしも、あの日に戻れるなら──」、「もしも、あの時こうしてたなら──」
こうした想いも、彼女達に出会えたから、花火に出会えたから、また明日に一歩踏み出すことができて、振り返る過去も色とりどりの思い出に彩られた景色があって、それは君がいたからで。
ツナギちゃんとの対話で、マツリが花火ことを好きになった理由として、『たくさんのはじめてを教えてくれたから』とありました。
きっとこの先も、色んなはじめてを二人で歩んでいくと思います。
本当に素敵な物語だったと思います。

②大好きだったキャラへの感想(葉桜ちゃん)
どうしても、感想でもう一人残しておきたいのが、葉桜ちゃん。
もううううううううううめちゃくちゃに可愛かったです。
何度可愛いいいいいいいってなって悶えた事か。
恋心なんてないから、って態度をしつつも、どんなことでもマツリのことが好きなんだなぁって思えるような仕草があるたびに、ずっときゅんきゅんしてました。

そんな彼女ですが、何よりも好きだったのは、やはり
『人を好きになるってどういうことか教えてほしいの』のお話でした。

──────────────────
「あたしはね、言葉に弱い人が好きなの。
 言葉の意味をきちんと受け止められる人。きっと祭には分からないだろうけど。
 だって祭の周りにはたくさんいるから。
 でもね、あたしの周りには……あたしの学校にはほとんどいない」
 人を好きになるってどういうことか。葉桜の言っていた問いの意味に少し近づいた気がした。
 自分の周りに自分が好きになれる人がいないと悲観しているのだ。
(略)
ともするとこちらの『俺』には分からないかもしれない。この数日を過ごしてきただけで、出会った人は良い人ばかり。葉桜の言う言葉に弱いという人ばかりだ。
そんな人達に囲まれて過ごしてきたなら分からないだろう。それは無知ではなく幸せな場所に居続けられた結果なのだから。
でも、俺は違う。俺はその場所から逃げ出した。戻りたくても戻れず、行動にさえ移せなかった人間だ。
だからこそ分かる。今の俺の周りにいるのは、葉桜の嫌う人達ばかりなのだから。
(略)
葉桜風に言うならば言葉に強い。それはつまり人の言葉に耳を貸さないということだ。
──────────────────

今の世界の祭だと本当の意味を理解してあげることができないかもしれない。
それだけこの世界の祭は幸せな日常を過ごしてきているから。
だけれど、その苦しみを知っている『今のマツリ』だから理解してあげられるっていうのがまたすごい良いんですよね……。
『少しだけ……ホントに少しだけ、好きになるってどういうことか分かった気がする。祭のおかげ(笑顔)』
このシーンの葉桜ちゃんの笑顔が本当に可愛くて可愛くて仕方なかった。
彼女には幸せになってほしい……幸せなマツリとの高校生活の青春を過ごしてほしいと何度、何度思ったことか……。

葉桜ちゃんの√を妄想しながら沈む……。

③この物語で感銘を受けた青春模様
上記で述べたように、彼彼女たちの青春模様って本当に眩しくて、羨ましくて、懐かしくて、切なくて……全てが刺さるんですよね。
幼馴染達との時間は、どんな場所でもかけがえのない時間になるような。
缶蹴りや鬼ごっこで遊んだ時間、みんなで夏祭りで騒いだ時間、給食の好き嫌いで騒いだ時間、登下校で遊んで、授業のバカ話をするような時間。

実際の自分にも、この作中ほどキラキラしていなくても、これに近い物はきっとあって。
小学校時代の登下校で遊びまくって遅くなったり、帰りの公園でゲームを持ち合ってモンハンしたり。高校時代にみんなでゲーセン行ったり。
今社会人になってしまった自分自身も、時々あの頃は楽しかったなんて話を時々(本当に時々会う)友人と話をしたりしちゃうような。
実際に中学時代の友人で、コミケにお互い行くことが分かって、コミケでしか出会わないような友人とか、本当に時々出会う高校生時代の頃の友人とか、大学時代の友人とかと、けっこう過去話ばっかりしちゃうのもあって。「あの頃は楽しかったよなー」って話何回もしちゃうんですよね。
あの頃過ごした友人とは全員とは連絡は取り合わないけれど、でも数える程度の数人とは連絡を取り合う仲として残っていって。思い出話をしてしまうような……。

そんな思い出を思い出してしまうような、リアルな親近感の湧くような青春話ばかりなのが本当に刺さって刺さって仕方がなくて。
作者さんの、青春模様ってこんなにも楽しくて、素敵な、かけがえのない時間なんだよ!っていう熱意がこもっていて本当に眩しくて。
その中でも、刺さりに刺さったのが、主人公の独白と風鈴先生の言葉でした。

マツリ
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『みんなと過ごした思い出は二年くらいだけ。今思えばすごく短い時間だったんだけどね』
ふとした瞬間に思うことがある。たった二年一緒だっただけで、なんで俺はこんなに心を奪われているんだろうと。
人生で一番幸せだった瞬間はどこかと訊かれれば間違いなくあの頃で、それが更新されることはこの先きっと無いだろう。
たった二十分足らずの時間でドッジボールで遊んだり、五分の休みで廊下中を駆け回って。時間の感覚が今とは違うあの頃だからこそ、その二年間は今の二年間とは重みも濃さも何もかもが違った。
──────────────────
風鈴先生の最後の授業の言葉
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『でもね、みんな。これから先、どんなことにだって終わりは訪れます。今日みたいに突然悲しい別れが訪れることだって、みんなが大人になっていく上で避けては通れない道の一つだから。
そのたびに時間が巻き戻ったらいいのにって願うかもしれません。少なくとも、私は何度そう願ったか数え切れません。
だからこそ、あえてみんなに辛いことを言います。
時間は決して戻ることはありません。
だけど、思い出の中に帰りたい時間を待つことは出来ます。
あんな日々があったから今を頑張れる、あの時の自分があったから今に自信を持てる。学校とはそういう思い出を分かち合える仲間と出会う場所で、青春とはそういう時間を作る時間だと先生は思っています。
そして、このクラスで経験したことは、誰かの心の中でずっと支えになってくれるはずです。
そんな思い出をみんながこれからもたくさん作れるように、先生は心から願っています。』
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過去の思い出は、『あの頃は良かった』けれど、今は……。じゃなくて、
『あの頃は良かった』過去があったからこそ、今の私がいるんだって優しく教えてくれるお話だったんだと思います。
だから作中のマツリは、過去がある元の世界を望んで、そして元の世界を理想に、夢を現実にするような姿がありました。
花火たちとの青春模様を過ごして、夢のような時間を過ごして、ドキドキするような恋心を抱いて。その姿は、今までの積み重ねの過去があったから。

だからこの作品を読んだ私自身も、過去の青春や思い出の時間を思い出していいんだって、今の自分を肯定してあげていいんだって思えたことが一番刺さった理由だったんだなって思います。
これだけの感想を抱くことができたのも、作中の青春模様が本当に楽しそうで、羨ましくて、素敵だったからなんですよね。
あぁ年々青春の物語に弱くなってきている自分がいる……と痛感します。

④地元ネタ溢れたあるある小ネタ
ここからはもう地元あるあるネタの備忘録。
自分自身が、今回の舞台の岐阜県民(岐阜市民じゃないけど)なこともあってあるあるが多すぎてわかるわー!!ってなりました。
なりすぎて、プレイ終わった勢いで、聖地巡礼するくらいにはプレイ中楽しんでました。これをきっかけに初めてだったり、小さい頃以来に赴いた場所もあったりしてけっこう楽しかったです。
今数えるだけでも、メディアコスモスからメモリアルセンターから、岐阜駅ネタから、遠くには高山の某アニメ聖地ネタから、下呂の橋の下の露天風呂の話からもう何から何まで、わかるーーーーと言いながらプレイしてました。
めっちゃわかるぅぅって書き方してるからもうね……。
その中でも、ついつい思っちゃったのが、彼彼女たち、華高(某県下一の進学校)なんですけど、岐阜県民の自分にとって、この高校、もう天上人クラス(頭良すぎて)の学校だったので、こいつらやべえ……って感情抱いちゃうんですよね……。
主人公であるマツリ君が、この華高の学力に追いつくように、って頑張るシーンがあったりなんですけど、いや無謀すぎるやろ……って何度思ってしまったことか……。
あとは高山本線に乗って1日で高山から下呂を楽しんで、川原町で泊まるコースも、すごい元気……ってなっちゃったり。すごい温泉旅行したくなる話でした。
それらは余談だったとしても、岐阜市民じゃない自分でもこれだけの楽しさがあったので、本当に岐阜市民であそこらへんに住んでる人がプレイしたらもっと共感できるんだろうか……と思ったり。
他にも地元ネタ以外に、プロポーズ大作戦ネタがあったりして、本当に青春が好きなんだなぁって思うようなお話もいくつか。
それくらいには楽しかったです。

⑤最後に
本当に素敵な作品でした。
『私の青春は最強なんだ!大好きなんだ!』って込めに込められた熱意のある作品だったと思います。登場人物みんなが可愛くて、優しくて私自身が、青春の思い出を優しく肯定できるようにまたなれた作品でもありました。

フルカラー本では次回作もあると書いてあってびっくりしました。
確かに、伝達役の人だったり明かされていない部分もあったりするのはありますが、これだけの作品をまた作られるのは、読み手である私には計り知れないほどに、本当にすごい労力のいるものだとも思います。

ぜひ作者さんには、プレッシャーにならないよう決してご無理なさらず、けれど今回のような『好きな物は好きだ!』と思えるような作品をまた作られるなら、ぜひ見てみたいとも思います。
また、『この終わる季節の真ん中で』の別のお話だったり違ったお話も楽しみだったり……。
けれど今回みたいに、作者さんが一番楽しんで作品を作ってくださるのが一番だとも思います。

以上で感想(備忘録)になります。
ありがとうございました。


※※余談※※
私のバグかもしれないですけど、CGでドレスシーンを作中見ていなかったり、アルバム回想から、文化祭?みたいなCG部分が見れないんですよね……。パッチは当てたつもりなんですが……めっちゃ見てみたい‥‥。