『あなたを愛します。無条件に、そして無制限に』 姫風露さんの優しさにとろけた。これはオートマタや近未来を舞台にしたヒロインの、『姫風露』の愛の心の物語でした。素敵でした。
『あなたを愛します。無条件に、そして無制限に』
『Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~』感想(備忘録)
前半はネタバレなし、
後半はネタバレあり(自分のための備忘録)で記録。
突然ですが
ロボ、アンドロイド、AI、オートマタ……etc
色々な表現がありますが、これらを主題にした物語ってワクワクしますよね。
例えば、心無きアンドロイドが、人でありたいと願うがゆえに葛藤する物語。
例えば、アンドロイドがゆえに無機質味かつ忠実な萌えヒロイン。
例えば、アンドロイドが人と触れ合うことで、人間嫌いから人間が好きになっていく物語。
例えば、アンドロイドのヒロインを主軸として、壮大な設定の伏線回収を見せていく設定ゲーな物語。
……etc、etc。
今まで過去に様々なテーマが語られてきました。
今作の『Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~』も、オートマタである『姫風露』を中心とした物語です。
主人公である人間の正伍は、オートマタである姫風露に出会い、様々なヒロインと出会い、そして圧倒的な姫風露のオートマタとしての優しさに触れ合いながら成長していく物語。
母性あふれるオートマタとしてのヒロインが大好きならきっと満足できる作品だと思います。私は圧倒的な姫風露さんの母性に包まれて蕩けました。
姫風露さんなしじゃ生きていけない。(QPボイス)
逆に、近未来な設定はあるものの、設定ゲーや伏線ゲーではないです。
ロボット三原則を基にした倫理階層やクロスリンクの設定等SFらしい設定はありますが、むしろそれらを主題にした、『オートマタと人間の違いは、愛情の差異はあるのか』といった物が主題になります。
なので、オートマタのヒロインが好きな人はぜひ買いましょう。
一緒にとろけましょう。
『あなたを愛します。無条件に、そして無制限に』
そして、不器用で、不格好でわがままで、それでもまっすぐなな愛情を感じてください。
きっと満足出来ると思います。
※以下ネタバレ感想
ネタバレ感想では
○それぞれのルートの感想
○総評
に分けて書いていきます。
○プロローグ
まず何よりもこの最初の掴みで、姫風露さんの魅力にやられました。
姉さんの過去の事件もあって、誰にも心を開くことがができなくなった主人公。
彼の元に現れた『姫風露』というオートマタと出会って触れ合うことで家族になっていく。
何よりも『クロスリンク』が良いですよね。
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『オートマタには本来解釈できても理解できないはずの感情を、あなたの脳が教えてくれる。あなたの意識と混じって、私は感じることができる。
だから正伍さん、私が今『嬉しい』って感じることのできるこの気持ちは、私と繋がった時のあなたが『姫風露が目覚めて嬉しい』と心の底から思ってくれていたから。
そして何よりあなたを『愛おしい』と思うこの気持ちは、あなたが優灯さんを愛する想いそのものだから、私はあなたを愛します。無条件に、そして無制限に。
だって私の想いは、最初から、全てあなたのものなんです』
──────────────────────── ※姫風露と主人公の会話より
姫風露と繋がりあうことで、お互いの心を通じ合い共有できること。これにより姫風露は学習し様々な感情、心を知ることができる。
そしてこのクロスリンクによる主人公の語りによって、姫風露は、『主人公の経験を元に』感情を覚えていく、蓄積していく。つまり主人公の感情=姫風露の感情
つまり、姫風露の感情、優しさは、かつて主人公が姉に抱いていた愛の想いと同義であり。
姫風露の優しさが大きければ大きいほど、それは主人公の姉から受けた、姉に向けた感情経験が蓄積されたものであって。
もうこの時点で、個人的にやられたぁってなりました。
オートマタの話で、たびたび『感情』、『心』はテーマにされがちなんですけども。
オートマタの感情は本物なのか、アルゴリズムで定義された感情判断は、人間の心とは全く別ものなのか、色々物語の中で議論されてきたものです。
今作はこうした課題を、『主人公から受け取った感情』を元に感情を表現することができるという設定。
だから、主人公も姫風露の感情は『姉に向けた感情』と同義だから信じられるんですよね。
それは家族と同じだから。
姫風露が家族になっていく。
なんて優しい世界だろうかと。
『私には正伍さんがなくしてしまったものの代わりはできません。ですが、怪我したところをふさぐ絆創膏くらいにはなれるはずです。『なりたい』と、総思えたんです』
『明日になっても、正伍さんのお傍にいますよ。明後日も明々後日も、あなたが望む限りいつまでも』
この時点で、姫風露さんがもう可愛くて、私の中で完璧すぎて、もう姫風露さんにどハマリした最初でした。
○晶ルート
『だから、なぁ、相棒。あたしと約束してくれよ
これから先もあたしといるって。同じ速度で隣を歩いてくれるって』
『遠くに行くなら、一緒に行こう。危ないことを、一緒にしよう。
あたしたちは抗う海賊、いい人じゃない。一蓮托生、リスクもリターンも一生山分けだ』
かわしまりのさん×姐さんキャラ っていうもう私の中で得過ぎる組み合わせ(そもそもヒロイン枠にいるのがもう嬉しい)なので最強なのはさておいて。
晶さんの話は、波乱万丈に飛び込んで未来を冒険する道を選ぶルートだったのだと思います。
そもそも、晶さんは言葉の力を信じておらず、自分が見てきたもの、自分が経験してきたものが全ての基準。全ては自分の物差しで善悪を判断することを至上とする性格。
もうこの時点で、クロスリンク真っ向から否定しているあたり、姫風露さんの存在と相性が悪いですよね。
姫風露さんは、主人公が傷ついたときに『帰るべき場所』であり。
晶さんは、主人公とともに『未知の世界へ飛び出す相棒』であり。
相棒とともに駆け出す二人はかっこよかったです。
初心な晶さんも可愛かったしね。
晶さんのセリフは全部映画みたいでかっこいいです。
また、晶さんを選んだときの姫風露さんの姿がもう必見。
元々、主人公に危害が加わる可能性のある晶さんの『相棒』は、姫風露の考え方からしたらありえないものなんですよね。
────────────────────────
『ですが晶さんが、あなたの正義とやらを貫き通すおつもりなら、そのときはどうぞ、お一人で。正伍さんを巻き込まないでください』
────────────────────────
人間の幸福を願うオートマタが、一人の幸福を願うがゆえに、他の人間に悪意を抱く描写。まさしく姫風露が人間らしい一歩を踏み出したのは、晶さんとの対立だったのではないかと思います。
主人公の安全を願うがゆえに、晶さんを敵視するけれど、
主人公の行動は制限できないと知るや、自分が悪役にあえて徹することで、
主人公の背中の後押しをする姿がもうもうもう。
主人公の幸せこそ絶対至上主義な彼女の優しさがあふれるシーン。
姫風露と主人公の関係が少しずつ変わっていくはなしでもあります。
素敵でした。
○ひなルート
『おにいちゃんは、ひなが『かわいそうな子』じゃなくなっても
わたしに会いにきて、くれる?』
ひな√に入る前段階の話ではありますが、
ひなを主軸としたエリーゼたちとのやり取りがこれまた面白かった。
ひな方面の話の全貌は、オートマタであるエリーゼの彼女らが、倫理階層における根源のレイヤー0『不確定な未来において』『自分たちの好意を肯定し』『幸福という名の報酬を与えてくれるもの』が存在しなくなったがゆえに、行動不能になる前に、幸福の対象の代わりとなる『神』を作ったことで暴走したのがきっかけ。
解釈すると
エリーゼは病院に勤め上げる看護師のようなオートマタであり、彼女たちは幸福を与える存在として創られたため、奉仕行為がレイヤー0(存在意義)に定義されているけれど、ひなちゃんへの好意はひなちゃんにとって迷惑であり、全て奉仕としては逆効果。
これららそもそもが意味がなさないゆえに、行動不能になるところが、行動するために代わりの存在を作り上げてしまうという皮肉。
これがまた、行き着く先が『人間たちの考える宗教の神様』と同じなのが皮肉が効いていてほんと面白かった。
人間も同様に、絶望したときや突然の理不尽に襲われたとき、理解をするために『神様』という代替の存在を置くことで理解し諦めることができる。
今回の話もエリーゼたちも同じで、『どうしようもなく追い詰められた心が、最後の寄る辺として生み出したもの』
まるで宗教の成立と同じで、人工知能が作り出した人工天使な皮肉が最高に好き。
このお話の解決法として。
その暴走を止めるためには、オートマタである彼女たちに『私はすでにあなたたちのおかげで幸福ですよ』と伝え、彼女たちの存在意義を認めてあげることが解決の手だった。
ただし、暴走状態の彼女たちには上辺表面だけなんて通じない。ここで感情を共有できるクロスリンクの出番。ほんと便利。
神様という言葉は、どんな状況でも言い訳にも使え、絶望の時の言い訳にも使える、便利すぎる言葉がゆえに、人間たちの英知が結びついた大偽典図書館とつながると、『人類が作り出した神の履歴が蓄積されているため』どんな存在にもなり得てしまう存在でもあったというお話だけど
宗教というオートマタには一見無用に思えそうなお話が、『倫理階層』という、彼女たちの存在意義と絡めることで結びつけるお話は、素直に面白かった。
一番最高の皮肉は、『神様という概念は、金額無記入の小切手にも等しい』『人類が作り出したもっとも高性能な道具』
こういうこと考え始めると無限に考えれるので大好物です。
クロスリンクによる心の在り方の話も面白かったが、今回も面白かった。
そして、ひな√のひなさん自身のお話は、退院して、『普通の女の子』としての在り方を知ってしまったがゆえに。
自分の寿命を犠牲にしてでも主人公にとって『普通』な姿でないと主人公と恋ができない、と思い込んでしまったがゆえの全ての体を義体に換えようとしてしまうお話でしたね。
ひなちゃん自体、恋をするということ自体が初めてだったため、暴走してしまったお話でしたが、せっかく助けた命なんだから、もっと大切にしてあげて!って心の中で叫びましたね……。
ひなちゃんの外見じゃない、『ひなちゃん』自身が好きなんだよって説得する姿は、他ルートでも共通して見られる結末でしたね。
ひなちゃんは、他ルートでも諦めずにおにいちゃんを大切な人として奮闘する姿が一番可愛いです。
余談ではありますが、エリーゼが主人公に危害を加えようとするときに、姫風露がエリーゼを完膚なきまでに消滅させようとする憎しみの冷たさが垣間見えるシーンがあるんですけどこれまた本当に素敵。
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『正伍さんに不埒を働く出来損ないのオートマタは、
姫風露がネットワークに侵入して人工知能を焼き払います。跡形も残さず根絶やしにします(無表情)』
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全ては主人公の幸福のために、自分を我を出していくシーンがもうね、垣間見えるのが本当に姫風露さんどんどん好きになっていくシーンの一つなんですよもう最高。
○遊離ルート
『できるものならそうしたいよ!!私だって!!
あいつに好きだと言ってほしかった。あいつに愛してほしかった!!』
だけど無理なの。私はウソツキだから。
どんな心も欺いてウソにできるけど、本当の願いだけは、どうやったって叶わない!!
だって、本当なんだもん。
あいつを好きなのは、正真正銘私の気持ちなんだもん!!
いまさら本当のこと言ったって、信じてもらえるわけないじゃん』
もーーーーーーただただ遊離√は、遊離さんがめんどくさくて、不器用で、
可愛いが詰まった√だと思います。
まずこの話で外せないのが『エディデッド』
先天的な遺伝子操作をほどこされて誕生した人間のことであり、美しい容姿、健康な肉体、高い知性全てを持って生まれてきた人間のことでした。
エディデットの彼女は、周りの全ての物事がまるで『運命は最初から決まっていた』のごとく、自分の都合の良い展開にしかならないがゆえに、いつ乳歯が抜けるのか、からいつ恋をして、いつ結婚するのかまで人生の全てが決まっていた。
だから彼女は運命が嫌い。
あたりのアイスが嫌いなのも、そんな彼女の一面でした。
遊離さん自身が主人公のことを好きなのも、運命によって決まっている、『自分』ではない創られた運命だから主人公のことのことを殺すことで、自分は『自由』になれる証明となるため、散桜花を利用し主人公のことを殺そうとする遊離さん。
……というのは、さらに『自作自演』
遊離さん自身が
①「旧世代(エディデッド)の自分が第三世代姫風露の役割の代わりになり、散桜花を排除することで、旧世代より優秀となること」、かつ
②「姫風露と主人公のふたりがくっついて幸せになる」ことで、自分の『定められた初恋』は失恋になり、『本当の自由を手に入れることができる』かつ、
③さらに死んだとしても『主人公には、姉ではなく自分の死の傷により、自分のことをいつまでも忘れられなくなるようにしたい』
という三個の理由から散桜花と戦うっていう
これ究極のところ、主人公のことが大好きで仕方がない、幸せになって欲しいっていう
もうこの時点でほんと不器用すぎて可愛いホント可愛いめんどくさい可愛い。
しかもしかも、このあとの戦いの後の問答がまた本当に素敵で
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遊離「私が今から嘘をつくから、そしたら君は、『もう騙されないぞ、ウソツキめ』って私を叱って?」
「珠木くん……私ね、あなたのことが大好きだよ」
珠木「……うん。騙されてあげる。何度でもまた」
遊離「な……っ、なんでよ。私の話聞いてた!?それじゃ意味ないじゃん。意味ないんだよ……っ」
「私の話、聞いてなかった?ウソだよ、初めから全部、何もかもウソっぱちなんだよ!?」
珠木「知ってる。それでも僕は、僕を嫌いな君のことが世界で一番好きなんだ」
「せっかく好きだと言ってくれた君の言葉を、たとえ僕の中でも、真実だと思いたい」
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このほんと不器用な告白のめんどくさ可愛さなんなん!????
って発狂しましたねほんと。
主人公もまた受け答えがかっこよくてですさ
もううううううめんどくさい可愛い!!
また遊離ルートに入った後も主人公と遊離さんの恋愛模様が描かれるのですが、
特に遊離さんにとって優灯の存在は本当に大きかったのだと思います。
主人公には『優灯の影としてしか自分は見られていないのだろう』という思いは、最初の初Hシーンから存分に出ていたし、
『優灯ではなくて遊離自身の自分を見て欲しい』という願いは、本当に見ていて可愛かったです。
こうしてもう何度もいろんな形で『本当に自分は好きなんだろうか』
っていう思考を繰り返すわけなんだけど
その度に、でもなんだかんだ照れちゃって本音が垣間見えるのが可愛いし、
また主人公の受け答えがイケメンなんですよね。
特に、最後のチェス戦後の、
遊離さんは主人公の姉とは違う君が好きになったんだよって伝えるシーンがもうイケメン。
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珠木「相手が姉さんなら、通じなかったやり方だ。姉さんは強がりじゃなかった。
泣き虫じゃなかった。」
「自分のよりも僕の願いを叶えようとしてくれた」
「だけどね、遊離。僕が愛してるのは、強がりで泣き虫で、譲れない強い願いを持ってる、君なんだよ」
遊離「……あのね、珠木くん。私、今から『大嫌い』ってウソつくから、そしたら『僕も嫌いだ』って答えて。」
「そうじゃないと、私……」
珠木「大丈夫だよ。ウソツキの君は僕がもう、殺した」
────────────────────────
この問答、遊離√はいる手前でも似たやり取りをしているわけなんですけど、
遊離さんは、エディデットで恵まれすぎて不幸になっていたがゆえに、
何度も主人公の心を確かめずにはいられないほど繊細で可愛いヒロイン。
これからもきっと何度も繰り返しては照れて悶えてるんでしょうね……もっとみせてk
まとめると
遊離さん可愛いに尽きる。
で終わるのもあれなので、この作品の彼女の√の位置づけを振り返るんですけども
やはり、遊離さん√は、姫風露さんの√との対比なんだと思います。
言ってしまえばオートマタに対する『人間』の恋愛代表というか。
姫風露と主人公は、クロスリンクによって互いの感情を隅々まで互いに共有することができるがゆえに、本来だったら知り得ることができないことまで全て相手のことを知ることが出来る。
逆に遊離さんの√は、お互いの感情の真意を知り得ることができないから
何度でも確かめずにはいられない、不器用で可愛い√。
でもそれは人間の恋愛をするうえでは当たり前のことで。
だからこそ人間同士の恋愛めんどくささと、それらのよさを描いたお話だったと思いますし、姫風露さんには絶対ない魅力あるヒロインを描けたのだと思います。
あえて『クロスリンクがある』この作品で人間の恋愛模様をやることで際立つ可愛さ。
『本当の私を見て』と伝えることがどれほど難しいことか。
だからこそ共感できる部分も多くて面白かったといいますか。
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『じゃあ、もう一つ正直ね。私、キミの困った顔が二番目に好き』
『今みたいな優しい顔。私を助けに来てくれるとき、
キミはいつも、そういう顔してる。
一番大好きで、一生愛してる、って思える顔なの』
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嘘つき少女が正直者になれる、可愛い物語でした。
○姫風露ルート
姫風露ルートは、他三人のヒロインとの、結ばれるはずの選択肢を全て選ばれなかったからこその最後のルート。
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『私には、あなただけです。
初めから、正伍さんしかいませんでした。
ですがあなたは、私以外の誰を選んでも良かった。
にも関わらず、あなたはこうして私を選び、自信を持てない私のために『君が一番だ』と何度も言葉を尽くしてくれる』
────────────────────────
主人公にとって姫風露は、『帰るべき場所』であり『家族であり』
姫風露がいたからこそ、晶さん、ひなちゃん、そして遊離さんと関わることができ、それぞれの問題に介入できた。そして隣にいつづけてくれた彼女が報われた瞬間の至福といったら、読み手である私自身も幸福な気持ちに包まれたのは、今でも思い出します。
そして姫風露さんの話で外せないのが
オートマタである彼女が『人間と同じように恋心を抱き、嫉妬し、主人公の気持ちよりも自分の感情(恋心)を優先してしまうことに葛藤する』お話でした。
オートマタのお話で、人間の感情に戸惑うお話はよく見られるものですが、姫風露さんの場合は、『主人公の幸せを願うことこそが至福の喜びであるのに、自分の感情を優先して強いること』と『主人公と一緒にいたい、自分を好きと言って欲しい』という感情のせめぎあいがテーマでした。
姫風露さんが恋心を自覚したときの可愛さから、恋心に戸惑ってしまい主人公の前に出れなくなる可愛さから、そして一線を超えて主人公全力ラブモードになったときからもうもうもう可愛さ全開でしたね。もう何度悶えたことか!!
この時点で、彼女の恋心は、人間と同じ魅力に映ります。
────────────────────
君はかつて、僕しかいなかった君の愛より、
他の誰を愛しても良かった僕の愛のほうが尊いのだと言った。
僕にとって、君がくれる愛情よりも大切なものなんて、
何ひとつ存在しないっていうのに
だから僕は今、世界を君に返そうと思う。
ひとりぼっちだった僕を、二人ぼっちにしてくれた君に
二人ぼっちの世界から踏み出して、
もっと広い世界を手に入れるべきだと諭してくれた君に
僕が手に入れた二人ぼっち以外の世界を全部、君に返そう。
今、もう一度二人ぼっちになって、僕は君のためだけに踊ろう
愛してる。愛してる。僕だって何度言ったって言い足りない言葉を、
君がくれた数だけ、返し終わるまで
────────────────────
『正伍さん、私ね、生まれてきて良かった』
この言葉が聞けただけで本当に本当に良かった。
姫風露ルートは、ただただ姫風露が可愛くて可愛くて仕方がないルートでした。
○TRUEルート
姫風露さんと主人公が幸せにステップするところでめでたしめでたし、
と行かないのがTRUEルート。優灯さんの問題が残っているのでそのお話。
主人公は、プロローグで見てきたまま、優灯姉さんの人格が残っていると知るや否や、会いに行っちゃいます。
姫風露さんがいるのに行っちゃうかーというこの賛否両論間違いない展開で少し苦笑いしたのは内緒。
その後のチェスバトルの熱さは、もうこれでもかっていうくらいノベルゲームの良さが詰まった演出でしたよね。
挿入歌から、駒の動きから、主人公に対する姫風露の心の叫びから。
本来将棋と比べてチェスは最善手を出し続ければ絶対に勝てるというゲームで、オートマタでかつ大偽典図書館と繋がる彼女が負けることはそうそうにない戦いで。
そんな彼女が、主人公との問答に動揺し、主人公を傷つけたくないがゆえに悪手を連発し、負けるのは、まさしく姫風露さんが人間と同じである証明なようで。
あのシーンは本当に熱かった……。
実は、姫風露さんの狙いは自分に優灯さんをダウンロードさせることで、優灯さんを復活させることが狙いだったという。
主人公への恋心がゆえに、主人公の一番になりたいからと、優灯さんの存在を消そうとしているのかと思っていたら、実は主人公の幸せを最後まで願っていたという、もうなんていう天使というか。
この相手に悟られることなく自分を犠牲にしてでも相手の幸福を願う不器用さ、遊離さんと全く同じなんですよね。
まんまと自分も騙されましたが、やっぱりそこは優しい姫風露さんだったという。
○優灯エンド
優灯を選んだ場合は、メリーバッドエンドといいますか、主人公と優灯さんが電脳空間で二人幸せそうに過ごす中で、姫風露さんは主人公を膝枕しながら永遠と過ごすのだろうと思われる終わり方。
彼女たちの中では幸せのままでいられるという終わり方、一つの切ない終わり方。
とても綺麗なのだけどそれでも、結局優灯さんは『死人』であることには変わらない。
あれだけ、晶さんとの触れ合いや姫風露さんに贈る指輪等、過去ではなく『未来』を歩むことを学んできた主人公が、最後の最後に過去を選ぶ選択肢は、私の中ではありえないもので、受け入れられない終わり方でした。
でも同時に、優灯さんの切なくも嬉しい表情、自分を選んでしまったことへの感情。
優灯さんの『未来予知』ができるがゆえに、自分がいる未来が存在しないことを知ってしまったがゆえに、最後の最後にワガママをやめて良い子でいることをやめて、弟と一緒に生きたいと強く願うがゆえに残った残滓。
本当に、優灯さんって素敵な姉キャラなんです。他の誰よりも最愛の弟を選ぶ。
最初のオープニングで素敵すぎて、本当に打ち抜かれたのは覚えています。
その強い想いが叶ったことの優灯さんが一つの形で『報われた』ことに、良かったと感じてしまった自分(私)が許せないと言いますか。
それでもあくまで優灯さんは『死人』でしかない。過去ではなく前へ進むことを姫風露から、あの優しさを受け取って、今度はその優しさを返すと主人公は宣言したのに。
だから、あそこで優灯を選ぶ選択肢は私の中では許せない受け入れられない終わり方なのです。
○姫風露(TRUE)エンド
姫風露を選んだ場合。
────────────────────────
正伍「姫風露を失ってまで手に入れたい幸せなんて、そんなものあるはずがない。
僕の幸福の半分は、いつだって彼女のものだ」
優灯「よくできました。それでこそ私の、自慢の弟だ。
……愛してるよ、正ちゃん。あなたに会えて、私、幸せだった」
────────────────────────
切ないけれど、姫風露と共に生きてくれることがやっぱり嬉しい。
姫風露の最後の終わりの感想は後述で記載。
○藍視
この物語の悪役ポジでいるのが、主人公の叔父さんでもある藍視。
TRUEで彼のことも語られるが、この物語では外せないので記述したい。
藍視はこの物語で優灯を殺しつつ、散桜花を使役しながら、遊離のことを憎んで殺そうとしたのが真相。
藍視は昼夏(妹)のことを愛していたが、エディデッドである優灯が生まれた後、昼夏がありふれた母親の顔になってしまったことに絶望。
『いつだって希望や理想を求め、未来に焦がれて輝いていた彼女の目は、その日を境に失われてしまった』
『昼夏の肉体が死んでも、不思議な事にさほどこたえなかった。
彼女の物語は、優灯によってすでに殺されていたんだから』
かつ、藍視にとって、遊離の存在は、優灯と同様に昼夏を思い出させるものであり、存在を許せるものではなかった。
────────────────────────
『エディデッドが呪われた子だというのは、本当なんだな。
消えた優灯の影を追って、彼女と同じ姿をした別のまがい物が、僕の前に姿を現した』
『どうして消えてくれないんだろう。どうして昼夏の物語を、彼女のもとで眠らせてくれないんだろう。いいかげん、目障りなんだよ……』
────────────────────────
藍視にとって、もう昼夏との物語はすでに『エピローグ』状態なんですよね。
すでに終わった後の後日談をずっと幸せに生きている。
その後日談に昼夏と同様の姿で登場した、優灯や遊離の存在がじゃ前押して許せなかった。
自分が理想とする昼夏の思い出のままでいて欲しかったという。
物語中に、叔父さんは主人公に語りかけます。
────────────────────────
藍視『ズルイじゃないか。どうして君だけが、自分の物語を取り戻せるんだ』
正伍『僕と叔父さんの違い、たったひとつです。
僕は姉さんに自分の物語を預けたけれど、姫風露が僕に、彼女の物語をくれたから』
────────────────────────
本当だったら、主人公も姉の優しさ姿だけを幻視しながら過ごすはずだった。
それでも姫風露と出会い、姫風露の優しさで、自分の物語を描く生き方ができるようになった。優灯ではなく『姫風露』自身を見る生き方ができるようになった。
藍視は、いつまでも、優灯や遊離自身を、昼夏ではなく『優灯や遊離』であり別の人間なんだと見ることができなかったんですよね。だからずっと囚われる。
主人公は、最初こそ迷いはあったものの、遊離のことを遊離自身の魅力として見ることができたし、姫風露のことを『姫風露だから好きなんだ』と生きることができる。
『彼女たち自身』を『彼女たちだから』と自分で生きることができるか
が藍視と主人公の明確な違いだったのでしょう。
まさしく、藍視の存在は、『姫風露をオートマタではなく人間だからではなく、姫風露だから好きなのだ』とする主人公の想いとは対局に位置する、魅力を持った悪役ポジションだったと思います。
藍視の散桜花へのセリフの中で
『君が羨ましいよ散桜花。君は、君の物語の中で死ぬんだね』
最後に自分の意思で自分の生き方ができた散桜花への一言。
藍視は、彼自身の物語を取り戻す方法がなくて、主人公は姫風露によって物語を取り戻すことができて、そんな彼がきっと羨ましかったのだと実感します。
○姫風露のレイヤー0
最後に、姫風露の終わり方について。
姫風露を選び、藍視との決着がついた後は、幸福なエピローグを迎えられる……!
と期待したところで、まさかの姫風露が壊れてしまうというあの展開。
コアの話をしていた時から嫌な予感はしていたけれど、あの瞬間の絶望さといったらね
ほんとね。本当にね。マウスを思わずぶん投げましたよ。やりやがったと。
いや当時プレイしていた自分に、もうちょっと先進めるまで落ち着けと言いたいけれど。
またその後のレイヤー0に隠された真実がもう最強すぎて。
かつて、主人公が姫風露に禁断の質問をしたときがあったのだけど、
『ねえ……もしも姫風露が僕じゃない、誰か別の男の人のところへ送りとどけられていたら、姫風露はその人のことを愛したと思う?』
に対しての姫風露の回答が
『…………きっと、愛でたのでしょうね。
私の倫理階層に刻まれた原則に従って
……でも、私はきっとその人に、何も望んだりはしなかったでしょう
求められることだけに満足して、私のほうがその人をこんなに求めることは──
恋い、焦がれることは、決してなかったはずです。
愛が機能なら、機械の愛はマニュアル通り誰しもに平等です。
ですがこの恋は、私の恋はあなただけのもの。
私はこの恋を、誇りに思います。
大好きですよ、正伍さんあなたのことが 』
という回答だったんです。
しかし明かされた真実は、姫風露に刻まれたレイヤー0は、『空白』だった。
姫風露の行動は全て『彼女自身』が望んだからの行動であって、正伍だから姫風露は恋をした。この真実を明かされた瞬間はもう主人公とシンクロしましたね。
○姫風露との再会
その後展開は、姫風露は、人間となって再会という展開。
この展開は賛否両論がありそうですよね。
オートマタの彼女だからこその魅力があった物語の最後に、人間となって再会する。
結局人間になってしまうのか、という結論でもあったと思います。
でも、この物語の主軸は、『オートマタでも、人間でも、心の在り方は、愛の在り方は変わらない』だと思っている私には、この結末はすごい納得できるものでした。
もはや、姫風露の心は、どのような器であったとしても、変わることはない。
『元の器は壊れてしまいましたけど、私を満たすこの『愛してる』は、今も変わらず、あなたがくれた『愛してる』です』
この結末を見せたいがゆえにこの物語があったのだと、すごいすっきりした気持ちです。
そして何よりも、姫風露さんと主人公が幸せなエピローグを迎えることに幸せを感じます。それこそこの後日談を見てみたいほどに、二人の幸せな日常がまた繰り返されることがとても嬉しいです。
人間になった姫風露は、もう主人公とクロスリンクはできないけれど。
でも言葉を介して心を通じ合わせて祝福な日常を過ごしていくのでしょう。
────────
これからもっと、キスをしよう。
前よりももっと、言葉にしよう
『──私はあなたを愛します。
無条件に、そして無制限に』
────────
人間ではない、オートマタではない、『姫風露』の物語。
素敵なお話でした。
○総評
最初でも述べましたが、題材が『オートマタのヒロイン』ということもあってワクワクしてプレイし始めたんですよね。オートマタのお話、どんな話だろう。設定ゲーかな、壮大な伏線がある近未来の物語かな、無口系ヒロインなのかな等等。
蓋を開けてみれば、それは勘違いでした。
『オートマタ』の物語ではなくて、『オートマタ、人間』の垣根を越えた『恋の在り方』の物語であり『ヒロイン自身』を見つめる物語だったんだなと実感します。
作中でも、『遊離』と『姫風露』は似た者同士と表現されるように、姫風露の不器用でそれでも主人公のことを愛してるが故の行動は、もはや人間の心の在り方と同様でしたよね。
エリーゼの宗教の話の皮肉さも、人間と同様の皮肉が描かれていましたし、究極的にオートマタも人間も、心の在り方は変わらないのではないか と教えられたのが今作でした。
そして、何よりも、姫風露というヒロインが本当に魅力的で。
いつでも無条件に、無制限に優しさを与えてくれる姫風露さんのなんて魅力的なことか。
私ってバブみを感じたことってあまりなかったんだけど、あぁこれがバブみかと。
そんな彼女が、そして優しさを受け入れていた主人公が、成長していく物語がとても眩しくて、寂しくてでもう楽しくて。
そのような物語だったのが、私にとってのミシクロでした。
素敵な作品だったと思います。楽しかったです。
ありがとうございました。
最後に、姫風露さんとのセリフで、印象に残った大好きなセリフ集
『選択の幅を狭めるなら、私はあなたのレンズで世界を小さくしたい。あなたの好きなもの、もっと知りたいんです』
『正伍さんは私に何をお望みですか?
その質問に対するあなたの答えが、私の在り方の全てです』
『他の誰に誤解されたって、姫風露はいつだって正伍さんの優しさを信じられます。他の誰が誇らずとも、私があなたを誇ります』
『姫風露がおります。私だけはいつも、いつまでも、あなたのお傍にいますから』
※晶さんがいなくなった時の一言。
『神様であれなんであれ、あなたが信じるものを私も信じます』
※正伍が姫風露に「神様を信じる?」と質問したときの回答
『私はいつも通り、この家であなたの帰りを待ちます。
あなたがどんな間違いを犯しどんなに人を傷つけようと、
私だけは無条件に、無制限に、あなたを赦します。
世界中の誰があなたを見捨てようと、
この身のある限り姫風露だけはあなたを愛します
だからどうか、存分に戦っていらしてください。
あなたが本当に望むものを、勝ち取って。
辛くなった時には迷わず逃げてきてください』
※このセリフの想いがあるからこそ、帰るべき場所があるからこそ、主人公は多くの『正義の味方』になれるのだと思います。
『はぅう……。全ての苦労は今、完全に報われました……。』
※主人公に褒められてからのとろけ顔。可愛いはい可愛い。
『ありがとうございます。正伍さん。
あなたの言葉は、いつも魔法のように私を満たしてくれる。
私が偽神を必要とする日は、永遠に来ないのでしょうね』
『もしも私が、あなたのお傍で、いつだって笑っていたら
あなたの優しさは、いつか私だけのものになるのでしょうか』
正伍「ねぇ姫風露。僕は何度だって訊いてしまうよ。どうして君はそこまで──」
『愛してるからです!!愛してほしいからです、あなたに!!』
『あなたを想ったのと同じだけ、あなたに想ってほしい
あなたに捧げたのと同じだけ、あなたの心を分けてほしい
あなただけの私であるように、私だけの、あなたでいてほしい』
あぁ姫風露さんのようなオートマタと触れ合う日常がもっとみたい。
おしまい。