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merunoniaさんの世界一、受けたい虚○を。-Really, Another Imaginary. -の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
世界一、受けたい虚○を。-Really, Another Imaginary. -
ブランド
3 on 10
得点
85
参照数
61

一言コメント

世界で一番受けたい虚○が確かにありました。綾瀬さんという、素敵なヒロインに出会えたことが何よりも心に残る作品となりました。恋する少女のお話。面白かったです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私にとっての3on10作品2作品目になりました。
(1作品目は妹アプリケーション)
私の中で「3on10作品=超斜め上なハイテンションギャグの掛け合い」が魅力的となりつつありますが、今作もこの魅力は健在でした。

読み始めからすぐに、主人公である会田君と井上さんの超ハイテンポな掛け合いがすっごい楽しくてすぐに夢中になりました。
特に今作はテキストウィンドウが2行縛りなのもあって、短文でひたすら応酬していく掛け合いがすっごい楽しんですよね。さらに、声優さんの叫び等の演技も相まって、すごい笑った記憶。
読み進めるほど、会田君と井上さんのお互いに両想いなんだろうなぁっていうのも分かってきて、「お互いがお互いいつまでも会話を続けたいから、とりとめのない話を続けるんだろうなぁ」っていう甘酸っぱさも分かってきて、すごい青春らしくて。
タイトルの『世界一、受けたい虚○』も、井上さんにとって受けたい嘘は、会田君からの嘘全部なんだろうなぁっていうアオハルな感じがもう微笑ましかったです。

と、こうして1周目を終えたわけですが。
ええ、自分は3on10さんの作品が周回前提なことをすっかり忘れていたわけですよ。
そもそも自分は前情報がなさすぎて、ヒロインが1人しかいないと思い込んでたのもありまして。
おまけモードの回想やCGが全然埋まってねえ!!ともなりまして。
いざ他のCGを回収するために、もういちど『はじめから』を選んだら。
『綾瀬』さん登場。「誰!?!?」となり。
この綾瀬さんが井上さん以上に超ハイテンションなキャラですっごい可愛くて、すぐに好きになるキャラでした。「マグローーーーー!!」と叫んだりするのすっごい好きです。
ただ、会田君の席の後ろが、1周目では井上さんだったのに2周目では綾瀬さんになっていたり、井上さんが全く登場しなかったり、違和感がすごいあったんですよね。この時点で並行世界の話なのかな?とも思ったり。

ええ、この綾瀬さんに、プレイ後にここまで囚われるとは、この時点では思いもしませんでした。
ここまで、この『会田君と井上君の青春物語』には、『絶望な恋に恋する少女のお話』があるとは全く思いもしませんでした。
綾瀬さん編で繰り広げられた『綾瀬さんと会田君の物語』は、全てウソノートに書かれた虚構のお話。ウソノートに書かれた嘘は本物になる。ただし75時間だけ。という魔法が見せた物語でした。
一度綾瀬さんが会田君に告白して振られて。それでも会田君と恋人同士の時間を過ごしたいと願った世界が、綾瀬さん編の真実でした。
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3月16日(水)~18日(金)晴れ
卒業式から終業式までの3日間が終わりました。
綾瀬は会田くんから一番遠い席で、会田くんと井上さんが幸せな様子を眺めていました。
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このウソノートに書かれたことで、綾瀬さんは会田くんの一番近い席で過ごしたのが、綾瀬さん編の真実でした。

あぁ、あぁ辛かった。自分にとって、綾瀬さんのあの健気な姿、恋する少女の姿が本当に可愛くて好きだったので、本当に辛かったです。それでも、会田君へ想いを一心に向けるその姿が、何よりも綺麗でした。
絶望的な恋に恋をする彼女が、何よりも綺麗でした。
その綺麗な姿に、ここまで心にダメージを受けるとは思いもしませんでした。それほど綾瀬さんというヒロインがとても好きだったのだと思いました。
以下に綾瀬編で好きなテキストを備忘録で覚えていたいので、抜粋します。
長文の抜粋になってしまいましたが、それでもいつまでも覚えていたいと思うくらいには大好きな綾瀬さんの想いであふれるテキストがとても好きでした。

以下、綾瀬さんと会田くんの屋上シーン(綾瀬編2周目にて)
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望みはないと、絶たれていると、すべて、すべて。わかっていて、わかっていたとしても。それでも。
綾瀬は綾瀬の。他ならぬ、綾瀬の恋への憧れによって『あなたに恋しています』とだけは、伝えずにいられなかったのです。
どうあっても、会田くんにフラれることはもう、わかっているのですけど。
会田くんと過ごす、この仮初の3日間が。楽しくて。楽しすぎて。もう一回。
もう一回だけ、過ごしてみたくなっちゃいました。
もしこれで、この次でも。綾瀬と会田くんとが、たとえ結ばれなかったとしても。
綾瀬にとっては。それは、それは。まるで、まるで。
ウソでも、とても素晴らしい。世界一、受けたいウソが。確かに、ここにありました。
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以下、綾瀬さんと会田くんとの掛け合いより(綾瀬編3周目にて)
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綾瀬には、思い残すことは何もない、わけではありませんが、これで。
ひとまずは、これで。
綾瀬は、綾瀬の恋心を。諦めることが、できるのかもしれません。
正しく失恋することが、できるのかもしれません。
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以下、エピローグ『ネバーエンディング恋よ』
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あの場所に。会田くんのとなりの、あの場所に。
あの場所にいるのが、もし、綾瀬だったら……。
何度。何度、そう思ったことでしょう。
何度、そう夢見た事でしょう。
何度、そう憧れたことでしょう。
──ですが、ええ、ですが。
叶ったことは、少なくとも。綾瀬の、記憶にも記録にも、ただの一度もありません。
この世の中は、いったいぜんたい、なんなのでしょう。
あやふやで、あいまで、ぼんやりしていて。まるで、雲でもつかむような。心許ない、この日々は。いったい、いつまで。いつまで、綾瀬は。この恋を、こうして。
こうして、繰り返し続けるのでしょうか。
あふれる涙で、視界が滲む、この失恋を。
いったい、いつまで。いつまで、綾瀬は。絶望的なこの恋を、繰り返し続けるつもでしょうか。
恋よ。絶望的な恋よ。
教えてください。綾瀬に教えてくだし綾瀬。
綾瀬は、綾瀬です。恋に恋する花とゆめ乙女です。
恋は絶望とともに始まり、憧れとともに終わりを告げます。
憧れはまた新たな始まりを告げ、絶望的な恋が萌芽します。
恋よ。絶望的な恋よ。
繰り返し。繰り返し。抑えの効かない、化け物じみた荒波よ。
それはもう、それはもはや、恋ですらないのかもしれません。
避けられない、逃れられない、どうしようもない、その感情を。
その感情を、いったい何と。綾瀬は呼べばよいのでしょう。
(ジャバウォックの声とともに、桜が突如咲き誇り)
恋よ。絶望的な恋よ。
もしかして、おまえが答えてくれたのでしょうか。
おまえがこうして、桜を咲かせてくれたのでしょうか。
だとしたら、ああ、だとしたら。おまえは。
おまえは、とてもすごく意地悪です。
だって綾瀬に、こうして、再び。
立ち上がる。また頑張る。憧れる。
新しい、絶望的な恋をまた告げるのですから。
恋しています。
綾瀬は、ずっと、恋しています。
綾瀬の恋は、綾瀬の恋の果実が実るのは、あと、何年でしょう──
綾瀬「──あ、会田きゅんっ!」
恋よ。絶望的な恋のまま。
綾瀬は、また。
このまま、咲き続けるのです。
ここから、走りだすのです──
──────────────────

最初は、失恋からまた新しい恋に歩み出す少女のお話になるのかなって勝手に思っていたんですよね。そして綾瀬さんの姿がとても辛いって思っていたんですよね。
でも最後まで綾瀬さんの姿を見て、それは間違いで。
例え目の前で自分の恋心が叶わない世界の姿があったとしても、また何度でも絶望的な恋をし続ける、その綾瀬さんの一心な姿を描き続けるのがこの作品のでした。
感想を書いている今でも、綾瀬さんが幸せになって欲しいという想いが強いです。
その分とても辛いです。
それでも、ウソノートという繰り返し続ける方法ではなくて、その幸せな『世界で一番受けたい嘘○』の世界で幸せになるのではなくて、真実に向き合ってそれでも恋をする綾瀬さんの姿が、とても、とても綺麗に思えました。
けれど、きっとその恋心の想いは、『世界で一番受けたい嘘○』のあの綾瀬編の二人の掛け合いがあったからこそだとも思います。
やっぱり最初から最後まで綾瀬さんのことが好きだなって思う作品でした。

○まとめ
綾瀬さんが大好きだなっていう感想ばかりになりました。
ただそれ以外にもこの作品の魅力はたくさんあったように思います。
その第一にあげるのが、『周回する行為が物語とリンクしている』ことでした。

そもそもこのゲーム自体が、全ての回想を埋めるために周回が必要で、井上編、綾瀬編を何週もしますが、最初は、何もよくわからずプレイヤー(メタ)も周回で読み進めますが読み進めれば進めるほど

・あの何度も見てきた井上編は『綾瀬視点』から見てきた二人の幸せそうな姿であり
・そして何度も見てきた綾瀬編は『綾瀬さんがウソノートを使って過ごした幸せな75時間』で
・そして最後の綾瀬編は『ウソノートを使わない』として、最後の幸せな時間を過ごすと決めた彼女の時間で

回想を埋めるだけじゃない、プレイヤー自身が繰り返し読み進めるこの事自体が、綾瀬さんの想いの積み重ねとリンクして、彼女の恋心への理解が深まるという、最後に綺麗に分かる構図なのがもう~~~~~~~本当に上手でした。
それ以外にも、なぜ井上アフターで、主人公の会田くんが4月1日まで会えないかだったりのお話だったりもなるほどな~~となる面白さがありました。
ここは、本当に最初何も知らずにプレイしていて、最後にプレイし終わった後には「やられたな~~~」という面白さです。

それら以外でも、テキストのハイテンションと声優さんの演技の丁寧さがとても感じられたり、スキップモード中のシナリオのコメントだったり、BGMであったり、随所で丁寧さが感じられた作品でした。

ただ何度も言いますが、やはり私にとっては、綾瀬さんという魅力的な登場人物に出会えたことが何よりもプレイして良かったと思います。
それほど素敵なヒロインでした。

正直に言えば、結構心に引きずるくらいダメージを追っていますが(SAN値ゼロ)、それくらいに感情を与えてきた作品でもありました。
他の3on10作品もやりたいなと思います。

以上です。
ありがとうございました。