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merunoniaさんの見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYSの長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS
ブランド
PULLTOP
得点
83
参照数
289

一言コメント

本編をプレイしてから4年たった今、また優しい平和な物語に触れたくて、FDをプレイしましたが、楽しかったですね。とても丁寧な作品だと改めて思います。特にころなちゃん√と先生√が素敵でした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

見上げてごらん、夜空の星を FINE DAYS
本編をプレイしたのが発売当時の2016年頃だったのもあり、久しぶりに触れました。
本編を思い返すと、ほんと思わず冬の夜空を見に行きたくなるような物語でしたよね。
輝く星空を眺めて余韻に浸る情景や、主人公たちのむつらぼしの会の暖かさと。
私がFDをプレイしたきっかけは、あの時の暖かさを久しぶりに味わいたかったのと、先生√を知人にガチ推しされたのがあったのですが。
いやぁ久々にプレイしたけれど、今回も健在でしたね。pulltopはほんとこういう雰囲気づくりが丁寧で優しい世界で、安心できるというか。
色々あーそんなこともあったなぁと思い出しながらのプレイで楽しかったです。



〇全体を通しての感想

特に全体を通して感じたことの一つは、部活物『先輩から後輩へと引き継がれる青春』
もうここが一番好きでした。
かつてのプロジェクトスターライトを終えて、織姫先輩から、吉岡会長による主人公世代、そしてさらに後輩たちのころなちゃん、ひなみん、たまたまと世代交代されていく中で、様々な想い入れが語られるFDっていうのがもう本当に暖かくて。
でもそうした世代交代でも『星の魅力を伝えたい!』、『星が好きという気持ちは変わらない』、方法や会の在り方はその時で変わったとしても、中心となる想いは変わらないという彼ら一人一人の違った想いが本当に好きで好きで。
まさに部活物の青春面を感じさせてくれたのが、今回のFDでした。

織姫さんから吉岡さんに世代交代したうえでの、二人の互いに思いあうが故のやり取りだったり。
幼馴染3人組(等)から、各学校での後輩たちに引き継いでいく姿の中で、かつての会長、先輩たちのようにむつらぼしの会を引っ張っていこうとする姿、特にころなちゃんとか、主人公たちの暖かく見守る姿とか、その中でも暴れちゃう織姫さんも彼女らしくてもう好きだし。


またそれだけじゃなくて、幼馴染たちの関係性も暖かくてよかったですよね。
ひかり√アフターでは、ひかりさんと結ばれた未来があったとしても、その中には沙夜さんがいるという安心感。沙夜√アフターでも、沙夜さんの可愛さに溺れるような√だったけれど、その中でも沙夜さんはひかりさんのことが好きなんだって思えるシーンがたくさんあって。
たとえどちら一方を選んだとしても、幼馴染としての特別な関係は変わらないんだと思わせてくれる安心感と暖かさが感じられたのが、また本当に楽しかったんですよね……。

特に、ひかり√アフターの主人公の独白。
──────────
最近になって、気付いたことがある。俺たち三人は、昔からこんな感じだったんだなぁ、と。
沙夜とひかりの関係を、俺が羨ましく思うように、沙夜は俺とひかりを、ひかりは沙夜と俺のことを、羨ましく、時にちょっと焼き餅を妬きながら見てしまう。
─────────
ひかり「あたし……通い妻できる沙夜が、羨ましかったんだ」
(中略)
「……えへへ。押しかけ妻になっちゃったね」
─────────

もうこれらの会話が私の中ではとても印象的です。
ひかりにとって、主人公と沙夜の関係は、ひかりが海外にいた空白の時間に蓄積された二人だけの関係によるやり取り、空気が羨ましくて。
沙夜にとって、主人公とひかりの関係は、かつての幼少時代の主人公とひかりの間にしかないような、二人だけの息ぴったりな仲の良さを今でも見かけるのが羨ましくて。
でもそうした姿に焼き餅を『あえて』しあえるような関係が、三人ともとても互いに大好きで。なんだかんだ三人ともお互いに好きなんだって思えるような描写が、ひかり√アフターでも、沙夜√アフターでも見せてくれたことが、もう何よりも本当に暖かくて楽しかったなぁって。
そう思わせてくれたのも、いやほんとさすがpulltop。

全体を通して思った感想が主に上記2つです。
こうした中でもねぇいやぶっ刺さったのが、「ころなちゃん√アフター」と「先生√」
でしたね。

〇ころなちゃん√アフター感想
ころなちゃん自体は、本編プレイの時から一番大好きだったんですよね。
ころなちゃんの、「アキ兄!」って慕う姿はもうもうもうもう超可愛いですし、幼少時代には「みんなのことが羨ましかったんだ……仲間になりたかったんだ」っていう独白にはもうほんとめちゃくちゃきゅーんっとなりましたし。
そして最後には自分のやりたいことを見つけて、夢に向かって目指していく姿。
もう部活における青春ものとしても、キャラの可愛さとしても一番大好きでした。

そして今回アフターでは、本編の内容を踏襲した内容で、今回もぶっ刺さりすぎました。

織姫先輩がいなくなって、主人公たちも先輩になっていって、ころなちゃん自身がむつらぼしの会を引っ張っていく立ち位置になる中で。
ころなちゃん自身悩みぬいていく姿が本編同様に応援したくなるんですよね。

ころな「でもね、それって天文の楽しさなのかなぁ?ころなはただ、みんなとわいわいやるのが好きなだけで……」
「ころな、わかんなくなっちゃった。天文のなにが楽しいのかって」

ころなちゃんにとって星空を好きになったきっかけは、主人公からもらったハッブル宇宙望遠鏡による写真集だったから、本当に星を見る楽しさを知っているのか。
星を見る楽しさも自分はわかっていないのに、むつらぼしの会の目的の一つである、みんなに星空のすばらしさを伝えることはできるのか。
流星電波観測という地味目な研究を軸に悩む姿。

それでも、悩みぬいて、織姫さんや吉岡さんの姿のようにって、私ならむつらぼしの会をどうしていくかって考え抜く結論がもう好きなんですよね。

ころな「ころなのはじめてのワクワク。こんな世界をもっと見たいと思った、きっかけだから」(写真集を見せながら)
「ころな、もっと見たいよ……ここにあるのぜんぶ、見えないけど見てみたいよ!」

吉岡さんの会長代理の姿になって、みんなを楽しめるものにしなきゃ!!ってデート天体観測を企画する姿とかがもう青春ど真ん中でね。ころなちゃんがみんなを引っ張っていくシーンや提案するシーンにはもうもうもうほんと(言葉が出ない

それでまたここでの織姫さんの言葉がまた素敵なんですよ
織姫「ここにいるのは、あなたの仲間よ。頼るのを恐れてはだめ。一つになったつもりで、みんなと共に戦うの」
主人公自身もかつてはころなちゃんと同じだったことを伝え、ころなちゃんは一人じゃないよって伝えてくれるこの暖かさ。もう部活物の醍醐味といいますか。

ころな「お願いします!一緒にこのピンチを乗り切るために、ころなに力を貸してください!」
と伝える姿がもうとてつもなく好きです。

──────
「でも、ころなは平気だよ。だからもう迷わない。」
(中略)
「でも、やるだけやってみるよ。アキ兄も、応援してね」
(中略)
「うん……ころな、もう迷わないよ。
みんなと一緒に頑張っていけるから」
(ころなちゃん終盤シーン)
──────

はーーーもう好き。
ころなちゃん自身も大好きなんですけど、ひたむきに自分の夢に悩みながらも追いかける姿から、部活物である先輩から後輩へ受け継がれる中での自分が引っ張っていくんだ!って姿がもうほんと応援したくなるんですよね。
ころなちゃんの魅力ってその頑張りだと思いますし、こうした魅力を本編と同様に引き出してくれたアフターには、もうわかってるぅです。

本編のころなちゃんを思い出させてくれたアフターのお話に私はもう満足です。
ころなちゃんの笑顔大好き。



〇先生√
もう一つぶっ刺さったのが先生√。
元々私自身、こうした年上キャラがめっちゃくちゃ大好きなのもあるので、あー刺さるんだろうなぁと思ってはいましたが、まぁぶっ刺さりました。
晩酌しようよー!って絡むダメ年上っていうんですかね、主人公に甘える姿とか、もう大好きすぎて。

とキャラ的に最高なところ、話の内容はどうなんだろうと思ってたんですけど、まぁ蓋を開ければ異質な√でしたね。言ってみれば中身は救済√でした。
そもそも部活や三角関係だったりが中心となる中でそれらを解決していくのが本編の主題でしたが、先生√は全く別物。彼女だけが、かつての幼少時代の出来事に囚われ取り残されたまま。
こうした彼女を救い出すのが彼女の√でした。

そもそも、彼女自身は時にニートなことをからかわれたり、働きたくない!ってのが彼女のキャラでしたが、それは彼女自身が人一倍責任感があって、優しいが故の、姿ということがわかったのが、プラネタリウムでの彼女の独白。
私が一番好きなシーンです。
以下は私が忘れたくないシーンです。(備忘録として記録します)

────────────────────────
暁斗「もうひとつ、伝えたいのは……感謝です」
  「先生のおかげで、今の俺がいる。星の美しさに魅せられ、星を見るようになった。今こうしているのだって、先生が──」
美晴「違うでしょっ……!」 
  「あたしは……無力だったのよ。暁斗の心を、大切にしてあげられなかった……」
  「傍から見ればくだらない意地でも、あたしが何とかしてあげなきゃいけなかった。それが、あたしの役目だったのに……」
  「でも、何もできなくて……暁斗は星を見るのをやめて、みんなの心が離れ離れになっちゃって……」
暁斗「でも今は、立ち直りました」
美晴「……あたしは関係ないでしょ」
暁斗「あたしが関わらないところで、あんたは勝手に立ち直ってた。箒星たちのおかげでしょ。その間、あたしはどうしてた?ぐーたらニートして、仕事から逃げて……結局先生らしいことなんて、やってない」
  「もう、あたしのことは放っておいてよ。昔も今も、何もできないままなんだから……」
暁斗「そんなことないんです。俺たちは──」
美晴「やめてよそういうの!もううんざりなのよ!」

美晴『そんなキラキラした目であたしをみるな!』
──────────────────

この時の先生の心の叫びがあまりにも悲痛、あまりにも印象的でした。
いつもの彼女の姿からは見えなかった、後悔。過去と今の姿のギャップが彼女の持ち味でしたが、それは過去の傷があったからこそで。
先生にとって、むつらぼしの会の姿が、純粋な主人公たちの言葉一つ一つがどのように見えていたのか、寂しくて、でも立ち直ったことの喜びと、自分への後悔と、すべてがないまぜになった姿だと思うとつらい。
正直、自分が社会人ということもあってなおさらにこう心にくる。

──────────────────
暁斗「沙夜から渡されたつぎはぎノートを見て、先生がどう感じたか。忘れたなんてことは、ないんでしょう」
美晴「……当たり前でしょ。あんな辛いこと、そう簡単に忘れるもんか。何とかしなきゃいけないのに、どうすればいいか分からなくて……。何もできない自分が、たまらなく嫌になった……。忘れるわけ、ないじゃないっ……」
暁斗「でも悲しむだけじゃなかった。大切な教え子のがんばりを、なかったことにはできなかった。だから、コンクールに提出した。」
  「見た目はぼろぼろで、中身もちゃんと揃っていなくて、それでも……伝えようとしたんだ。」
  「自分の教え子が、こんなにがんばっていたんだって。消えてしまいそうな光を、見つけてほしいって……」
  「だからこのぼろぼろのノートに込められているのは、俺たちだけの想いじゃない……。」
  「それを誰かに見てほしいと願った、先生自身の想いだって、ここにあるんだ!」

『天文クラブの子供たちと、それを見守っていた先生。両方がいて始めて、今の俺たちに繋がっているのだから。』

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暁斗「でも、これだけは忘れてほしくないんです……先生のおかげで、救われた俺たちがいる」
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暁斗「だから、先生に伝えたい言葉があります。」
  「ごめんなさいと、もうひとつ」
  「他の誰でもない、美晴先生に。心から感謝しています」
  「あなたが、俺たちの先生でいてくれて……本当によかった」
  「先生……ありがとう」
──────────────────

いやもうここで美晴先生大号泣なんですけど、見ていたこっちも涙が出てしまいましたよ。
ずっと後悔し続けていて、それでも前向きにひたむきに進む教え子と自分を見比べて傷ついて。でもそれは先生の優しさがあったからこそ、かつての幼馴染たちの絆は繋がれていたんだと。
そんな彼女にとって、暁斗の「ありがとう」の言葉はどれだけ彼女に染み入っただろうかって。
かつての教え子の前で、大人が子どもの目の前で大号泣する姿。
でも決してそれは弱さじゃなくて、彼女の言いたくも言えなかった本音が心の姿がさらけ出せた瞬間で。本当に美晴先生のことが好きになれた瞬間だと思います。

こういう大人の人が、自分の素直な感情を叫ぶ姿って本当に好きなんですよね。
どんどん大人になるにつれて、自分の素直な姿って出せなくなるんだと思います。
でもだからこそ、自分たちのやりたいことができる部活であったりの主人公たちはとてもまぶしくて優しくて暖かくて。羨ましくて。
そんな物語の中にいる先生だからこそ、より大人という存在はとても浮き出ていて、でも先生がいたからこそ、教え子たちは今の姿があるんだって。
救いの話というかあぁもう本当にとても良い話でした。

美晴先生の「はぁ、もう……歳を取ると涙もろくなるって、本当ね」
って言葉がその通りだと思う今日この頃です。

その後はまぁ普通の展開なので割愛。でもいちゃらぶもっと見たかった。
子供生まれたときの最後がめっちゃ可愛くて最高でしたけどね!!!
その後のアフターはよはよ!!!!!!


〇最後に
以上が私にとっての見上げてFDでした。
本編をプレイした時も思ったんですけど、ほんと天体観測やプラネタリウムに行きたくなりますね。
久しぶりにこの物語に触れられて素直に楽しかったです。

また見上げてIF?も近いうちにプレイしたいですね。

ありがとうございました。