ErogameScape -エロゲー批評空間-

merunoniaさんのMaggot baitsの長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
Maggot baits
ブランド
CLOCKUP
得点
83
参照数
2713

一言コメント

「この世にある、綺麗なこと、美しいこと。それを嘘にしてしまうのはいつだって私たちの方だから」グロが全面に出やすい作品ですが、抜きゲーとして、同時にシナリオもよくできていました。本当にお世話になりました・・(意味深)。グロが苦手だと厳しいかもしれませんが、グロありき、エロゲーだからこその作品。面白かったです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

CLOCKUPより11月に発売されたグロゲー枠。
『Maggot baits』
プレイ時間から言うと、10時間~20時間ほどの量でそこまで長編ではない今作品。
ただ、購入してから、1週間ちょっとと、なかなかに時間がかかりました。
というのも、今作品、本当にエロシーンが素晴らしい。何回もお世話になりました。
まごう事なき「抜きゲー」でした。
ただ、それだけの面ではなく。 
ダークヒーローとしてのバトルシーンもよく出来てて面白かったです。
人によって、様々な面白さがありそうだと思いました。
良いリョナゲーでした。

そういった点も含めつつ、良かった点、気になった点、シナリオについての感想
を述べていけたらと思います

 ①良かった点

(1)エロシーン&グロシーンにおける声優の名演技
 
 まず、最初にすごいと思ったのは声優の演技力でした。
 今作品グロシーンがやはりインパクトありますが、絶叫という言葉が生ぬるいほど叫ぶ、喘ぐ、阿鼻叫喚。
 本当に声優は、そこをやりきってて、最後のスタッフコメントでは
「お疲れ様でしたっ・・・・!」という言葉しかありませんでした。
 
 いきなり話は逸れますが、私はこのエロゲの前に「BackStage」という芝居を舞台にしたエロゲをしていて、
 その作中で印象的な言葉がありました。
  
  >「死んだことがないのに、
    殺される(殺す)演技は難しい。  
    なぜなら、それは想像の世界でしかなく、実際に経験することはできないからだ」
 
 今作品にも言えることでした。
 首を切断される瞬間、自分の喉元まで血液が這い上がってきて溺れそうになる瞬間、
 自分の○○を引き出される瞬間・・・etc。
 一つ一つの拷問などは、まさに想像でしかないシーンで。
 本当にこちらが震えるほどの演技には感嘆の声しかなかったです。
 この声優の演技があったからこそのマゴベだったと感じました。
 一番きつかったのは、人間たちの見せしめシーンかな・・。
 まだ触手だったりはいいけれど、本当に悪の塊というか、アリソンちゃんのシーンが一番きつかった。
 ただ、設定が魔女というファンタジー面があるおかげで、ある程度許容できるのが大きかったかなと
 思います。

 また、エロシーンとしてもかなり良かったです。
 BADエンドのモンキーハウスによるふたなりラッシュは、仲間同士犯し合ってる姿だったり。
 また他にも通常シーンで触手によるカーラだったりも良かったし・・。
 グロリアが乳牛化&搾乳だったりも「わかってるじゃねーか・・!」の一言。
 
 声優は当然のこと、はましま薫夫さんの原画の塗りが今作も良かった。
 アヘ顔を始めとして、汗が玉水ので表現されるエロい塗り。 
 
 テキストも♥が使われることにより、ヒロイン自身が感じていることもわかるような感じで
 より好みでした。
 とてもいい抜きゲーでもあったと思います。

 個人的に好きなシーンは、キャロルの純愛シーン、グロリアの搾乳
                 カーラの脳姦、モンキーハウスのふたなりラッシュ....etc

  回数が二桁に行くくらいには、本作品のエロシーンはお世話になりました。

 (2)BGMの使い方

 OPはかっこいいことは言わずもがななんですが。
 個人的にはBGMの狂気を表現したような使い方が好きでした。
 凄惨なシーンで流れる聖歌、アヴェ・マリア 。
 現実味がない乖離したような世界観にマッチしてて、震えた記憶が強いです。
 
 一番好きなBGMのシーンは、A&Bの子供を産む、分娩作業のシーン。
 彼らにとってはずっと続けられた、当たり前の日常となった行為。
 それを象徴するかのように日常でも流れてもおかしくない、平和的なBGM。
 鳥肌が立ちました。
 世界観を表現するための手法がとても上手だったと思います。

 他にも、システム面は、なかなか他では見ない親切さであったと思います。
 射精カウンターから既読率表示のオンオフ、ジャンプ機能と、親切でした。

 ②人を選びそうな点(グロゲーでなにを言ってるんだと思わないでもない)

   テキストです。
   難しいです。宗教史からギリシャ神話、銃火器の構造や現象とバンバン出てきます。
  自分の頭が弱いというのもあったかもしれませんが、難しい漢字もなかなかに多く、
  どういう意味なのかを調べることも多々ありました。
   雰囲気を醸し出すという意味合いでは良かったかもしれませんが。
  TIPSなど補足もなしにバンバン出されると、なかなかに読むのにも疲れたかなと。
   
   またテキストのタイプも固定ではなくfateのように画面全部で出されるようになったりと
  つい流し読みをしがちになってしまったこともありました。
   こういう点から、読みやすさかどうかで言われると、読みにくいテキストのタイプだったかなと思います。

  ※以下、シナリオについてネタバレ全開になります。



 
③シナリオや設定について(ネタバレ
 
  グロがインパクトあって、かつ抜きゲーとして大きな印象が残る作品だったけど、
シナリオもとても面白かった。
まだ正直整理しきれてないけど、どういった点が面白かったか、
項目ごとに書く事で整理できたらと思いつつ。

 (1)魔女(無名以外)という生まれたての存在など生きる目的が違うキャラたち

 魔女たちは記憶もなく、この街に生まれ落ちる。
 その時、彼女たちは、生きる目的もわからず、この街に生きることになる。
 そういったことを強調するテキストが最初から印象的だったかなと今思い出す。
 
 キャロルは主人公のため。彼の道具として生きる。
 ウィルマは魔女とは何なのか、書物を糧に真実を探求するため。
 グロリアは自分の中で、善と悪と二分論することで指標とし、生きる。
 アリソンは「せいぎとへいわ」のために。そして星になりたかった彼女。
 サンディは、魔女の真実を知ってもなお、輪廻の理から脱出するがために生きる。
 
 また無名の魔女は、イエスの絶望の世界から超えるために、最大の試練を乗り越えるため。
 至門は、キャロルと似たように、彼女に魅了(言葉として正しくないかも)され、
 彼女のために生きる。
 
 芹佳 はお金のために。かつての過去を精算するために。
 ヴァレンティノス は、自分の信仰する神の使徒として。
 
 ブライアン 、そして主人公である角鹿は、かつての信念とも言える大事なモノをすて。
 それでもやるべきことがある、と未来と過去を捨て、作中で言う蛆虫として生きる。

 ただいきなり生きてしまった以上
 何かに縋る 
 パッケージにもあったように、「這い上がれ、蟲のように」と。
 各キャラの信ずることに対する行為や振る舞いが面白かった。

 そして同時に、このような信ずる世界に対して裏切られ、不条理さを描ききった作品は
 クロックアップならでは。
 そういう意味では、エロゲーでした描くことができない、エロゲーならでは。
 どうしてもおざなりになっているキャラはいたけれど。
 それでも各キャラの垣間見えるような背景、振る舞いには
 プレイ中も考えさせられたなと思う。

(2)角鹿とキャロル、無名の魔女と至門

  角鹿とキャロルの関係性が良かった。
 スタッフコメントで、各声優も言っていたように「純愛」
 道具として生きると決めたキャロルの葛藤をはじめとして、
 悲劇とも言える展開でも、彼女にとっては絶望ではなく「希望」であった物語。
 
 特に後半はキャロルの迷い、感情の揺れ動き。
 また、主人公に明かされる真相からの、主人公の揺れ動きは本当に面白かった。
 
  主人公はかつての事件で救えなかった無念さ、無かったことにされる正義の無力さ。
  守りたいと思った最後の彼女ですら、実は苦しみを与えていたと思い込み。
  ただどうすることもなく、あの事件の首謀者を殺すために蛆虫として生きる。

  こうして、様々な魔女を手足として使うことになるが、
  その魔女たちは実はかつて守りぬけなかった存在たちだった。
  理不尽とも言える悲劇。
  こうした中での主人公の咆哮はこちらもゾクリとするほどだった。
  
  主人子はこうして、ただキャロルだけは守ろうと。
  かつては道具であった彼女、ただその道具としての意味合いは代わり。
  自分の道具だからこそ、自分が使い潰すと。彼女の存在が自分の中で大きかったのだ
  と気づく展開は良かった。
  
  またキャロルに関しては、道具であれば良いと思っていた。
  道具でいることは、彼女にとっては同時に防衛本能で。
  使い手と道具という一線を超えなければ別れに痛みなど生じないと。
  
  どんな拷問にも絶望せず、ただ主人公が死ぬことには絶望した一週目が印象的だった。

  同時に二週目での、無名の魔女が絶望だと思い込んだ、悲劇の展開。
  彼女にとっては、伝えられたこと、そして彼のために死ねたことが希望であったと。
  キャロルにとって名前通り祝福の歌が流れたところでは、ゾクゾクした記憶。
 
  彼女の最後の言葉は「ありがとう」だった。
  主人公は、あの時一人救えていたのだと。
  キャロルは子供を授かり、絶望を描く中での希望的な終わり方。
  神に対する絶対愛ではなく、人間としての愛を信ずる終わり方。

 「この世にある、綺麗なこと、美しいこと 
  それを嘘にしてしまうのはいつだって私たちの方だから」

 自分の中の世界を肯定するのは自分自身。
 共有することはできないのだから。(リアルブートできないですし)

  一週目では、神の愛による世界でも、悲劇の彼女が描かれ。
  それすらも愛してしまうという世界。
  二週目では、人間の愛として生きる世界のあり方。
  面白かった。
 

  同時に至門の存在も、自分の中では大きかった。(正直こんな話に関わる人物だと思わなかっry)
  無名の魔女に拾われて。彼女のためにありたいと、キャロルと同じ立場であって。
  しかし、キャロルと違ったところは、至門は無名の彼女に愛されてなかったこと。
  彼の言った、一言「悔しいなぁ」(ずりぃなぁだったかも)
  というキャロルに銃が引けなかった主人公を見ての一言(一週目)
  は印象的。

  こう思うと、今作品は、本当に対比表現が上手だったなと。
  各キャラの生き方の対比。
  至門とキャロル。
  主人公とブライアン。
  人間としての愛と、神による平等の絶対愛。
  スタッフコメントの言葉をお借りして、「世界救済系の悪役と我欲追求系の悪役」

  こうして、比べていきながら展開されていくお話として、特に後半は面白かったです。
  人間としての醜さ、醜悪さが描かれていくからこその、愛だったり、我欲だったり。
  こういう意味でもエロゲならではだった物語。
  
  こういう作品はなかなか最近では出せなくなってきたと思うのですが、
  描ききったことに素晴らしいの一言。
  シナリオとしてもよくできていたのではと思います。



 ④総評
 
  グロシーンってどうしても直視できなくて、ウッってなりますよね。
  ただ、同時になぜか目が離せない。
  小学生の頃、図書館で、戦争の過激な写真が載った本から目が離せなくて。
  みんなで読み合っていた思い出がフラッシュバックされます。
  あぁいうグロだったりに目が離せないと同時に、人間の悪意だったり醜悪な話って
  こういっちゃなんですが面白いです。(語弊が生まれそう)

  こういった醜悪さが描かれるからこそ、純愛だったりが描かれたり。
  一つのエロゲだからこその作品を見せてくれたと思います。
  非日常を刺激的に与えてくれる作品として、面白かった。
  私にとって久しぶりのグロゲーでありましたが、いい作品でありました。
 
  人間としての心理を突いた作品というか、
  綺麗事では済まさない作品でもありました。
  こういった作品があるのもエロゲの醍醐味ですね。

  ありがとうございました。
  
  
 別記 声優コメント本当に爆笑しましたwwww
     橘まおさんの「お前らより私の方が15倍疲れているんだぞっ♥」だったり
     至門さんの「通報されました」 は本当に吹きましたwww
 
     同時に声優って本当に大変な職業だなと痛感したり。
     タオルをびちゃびちゃにしたりとか。
     上記でも述べましたが、声優さんが特に大変だったんだろうなと思いつつ。

     スタッフコメントは必見ですよ!