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merunoniaさんのつよきすFESTIVALの長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
つよきすFESTIVAL
ブランド
CandySoft(きゃんでぃそふと)
得点
91
参照数
2252

一言コメント

セーシュンの価値、楽しくも切ない時間。さかき傘氏が描くつよきすの物語。10周年の集大成として恥じない出来。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

CandySoftより、つよきす10周年記念、つよきすNEXTのFDとして発売された
『つよきすFRSTIVAL』

まさしく、10周年作品ということもあり、これまでのつよきすの集大成を見してくれました。
本当に面白かったし、感謝の言葉です。


感想については。
前半は、「つよきすFESTIVAL」という作品の特徴、概要。
タカヒロ氏とさかき傘氏が描くつよきすの違いについて。
(ネタバレ薄め)

後半にネタバレ込みで
勝気ルート、カニルート(2015)の感想
から見た、つよきすフェスティバルの感想

を述べていけたらと思います。


①つよきすFESTIVALという作品の概要。

 このつよきすフェスティバルは、主に以下の3つの要素からできています。

 (1)ナギ主人公編の「勝気」と「きつね」の新ヒロインストーリー
 (2)NEXTヒロインとサブキャラのアナザー・アフターストーリー
 (3)レオ主人公編の伝説世代のアフターストーリー(社会人編)
  (ひとりづつ10分ほどのお話。Hシーンあり)

こういう風にみると、つよきすNEXTのFD的立ち位置かなという感じですが。
実際に中身を開けてみると、とにかく、伝説世代と次世代キャラが入り乱れて、
まさに「お祭り」という作品になっています。
NEXTで出し惜しみしていた伝説世代のキャラをいかんなく出していきます。

本当になつかしいキャラぶりには、懐古厨的な感じで感慨深く、
本当に同窓会のような作品になっています。
スバルやフカヒレ、カニとの会話に、プレイ中には泣きかけました。

逆から言えば、つよきす無印(2学期・3学期)とNEXTをやっていて、
そうしてやっと楽しめる作品になっています。

ただし、さかき傘さんらしさのある「つよきす」の世界観になっていますので、
NEXTが合わなかった方には、回避推奨だと思います。

ただ、(1)に関して、今作の新キャラ「勝気ルート」の出来は本当に素晴らしく、
より、さかき傘さんらしさの出る「つよきす」のキャラでよく出来上がっています。
さかき傘さんの「つよき」な女の子とはどういう物語なのか、一見の価値ありです。

(2)に関しては、NEXTの補完としてはよくできていたと思います。
正直NEXTって、すみかルート以外消化不良なところがありました。
個別4人は、物足りないところで終わり、
最後のTRUEは、正直あまり面白くなかったです。

今回のつよきすフェスティバルでは、その後について
十分合格点ほどにかけてました。
特に子羽ルートアフターのスバルとの話、はかりルートアフターの生徒会長としての最後の話
この二つは必見です。とても良い出来でした。

また、エロシーンに力を入れています!と言っているだけあって、とてもエロかったです。
天海雪乃 さんの描くエロシーンは本当に目元から表情が素晴らしい。
とろんとした目だったりがエロくよくできていました。
ビュッシュ、ノエル、ビュッシュ&ノエルと個別に分けてエロシーンを用意してくれたのもグッド。
ただ、この二人に関しては、もう少し尺をとって欲しかったなと感じます。
それ以外は、尺もある程度とってあり、エロくてグッドでした。

ただエロシーンに関して一言いうと、ちょっとチン○が変なところから出ていたり
というところが惜しかったな・・・という不自然なところが時々あったのもあります。


(3)に関しては、再び伝説世代を見せてくれてありがとう、という思いとともに切ないです。
ナギ編を終えたあと、社会人となったレオとヒロインとの姿を見て。
子供から大人になったあとの感慨深さ、でもそれでも楽しさはつながっていく。
当時のつよきすのキャラたちが変わっていく姿、それでも変わらない部分。
特にカニアフターの、あの頃の4人のお話は、本当に切なく、でもいい話でした。

なんというか、さかき傘さんのテンポは健在で、楽しかったけれど。
それ以上に、再びあのなつかしいつよきす伝説世代に触れられて「嬉しい」という感情。
そしてNEXTの世界間の楽しいが織り交ざって、本当に気持ちがいいんですよね。

まさしく懐古厨のような感じになってしまっている自覚はあります。
ですが、本当にまた「つよきすワールド」を見せてくれてありがとう、という気持ちでいっぱいです。
楽しい時間でした。

つよきすファンならやって損はしないと思います。



②タカヒロ氏とさかき傘氏のつよきすワールド

つよきすフェスティバルの感想を書いていくうえで、
自分なりに、「タカヒロ氏が描くつよきす」と「さかき傘氏が描くつよきす」
この二つにどのような違いがあったのか、整理していけたらと思います。

(1)タカヒロ氏のつよきすキャラ(主につよきす伝説世代のキャラについて)
まずタカヒロ氏のつよきすキャラの特徴は、とにかくキャラが濃い。
つよきすフェスティバルで、伝説世代キャラが出てくるとより感じられるあのキャラの濃さ
(わざとそういう風に描いているかもしれませんが)
正直、NEXTのキャラを食ってしまうほどに強烈でした。
乙女さんと瀬麗武のはちゃめちゃぶり、フカヒレの強烈さ、エリカ嬢の規格外さ・・etc

ただ、その分、さかき傘氏のつよきすと比べると、外面というか
つよき(物理的)な女の子が描かれていたんだなと思います。
当たりが強いというか。だからそのキャラルートごとにも、そのキャラの内面を描くというよりも
外で起こる事件に関して、そのキャラとの物語を描くというか。
いい意味で、主人公を中心としてその周りとのキャラ達との関わりを描くタイプだったと思います。
(マジ恋などしかり)

当然10年前の作品でもあり、当時の風潮もあったのだと思います。



(2)さかき傘氏のつよきすキャラ
それに比べ、さかき傘氏の描くつよきすキャラは、内面重視だったかなと。
「つよき」という思いに関して、素直になれない、つよきになれないという部分に重視をおいて。
だから、つよきという意味合いも、物理的な強い女の子というよりかは、
素直になれないところだったり、距離感だったり。
マイルドなキャラになっていると思います。

だから、共通ルートなどをみると、正直伝説世代のキャラに食われてしまっているというのはありました。
ただ、ルートに入ったあとの、そのキャラを描いていくのはさすがに上手い。
特に、「勝気ルート」の「つよき」とはなんなのかを描いていくのは面白かった。

さかき傘先生の物語は、主人公中心ではなく、ヒロインを中心として、主人公は支えるという面
が強いのだと感じます。
だからこそ、ヒロイン自身の成長だったり、変化だったりを丁寧に描く。

共通のはちゃめちゃぶりや、キャラメイク、主人公中心の世界観ではタカヒロ氏が上手で。
そのヒロインごとの内面を描くことや、ヒロインを立てた物語はさかき傘氏が上手だと感じます。
ただ、どちらも共通しているのは、キャラごとの会話のテンポ。掛け合い。
ここは二人共本当に素晴らしく面白いと思います。


(3)その二つを合わせたつよきすフェスティバルという作品
 ふたりの特徴を述べましたが、そして今作のつよきすフェスティバル。
この作品は、二人の良いところをバランスよく合わせた作品だと感じます。
序盤の共通は、タカヒロさんの伝説世代や世界観の個性を活かしつつ、しっちゃかめっちゃかに
楽しめる作品。
後半のルートに入ったあと、さかき傘さんらしい、ヒロインの内面を描き、かつヒロインを立てる話。
伝説世代と次世代のバランスも後半からよく仕上がっています。
食いすぎたりしないといいますか。
3学期では、さかき傘さんらしくアレンジしているようでしたが、
今作では、メインに持ってくる必要がない分、好き勝手に動かせるため、
そういったやりやすさもあったのではと思います。

よくできている作品だと感じます。

つよきすとは、私の中では、「素直になれない、思いとは別の言葉がでてきてしまう」
という女の子を描いた物語が、魅力だと思います。
そういう意味では、私はさかき傘氏が描く「つよきすワールド」の方が好きです。
今作品では、そうしたさかき傘氏を中心として、タカヒロ氏のおいしいところも取り入れた、
まさしくいいとこ取りの作品だと感じます。













!!───以下ネタバレありで感想を書いていきます──!!


以下は、個人的に良かったと思う
勝気ルート、カニルートの感想を書いていきます。






③勝気ルート

世界一の天才で、泣き虫で、大胆で、強気な彼女のお話。
とてもよくできていました・・・。
さかき傘氏にとって「つよき」な女の子とはどのような子なのか
答えを出してくれたルートであったと思います。

前半はボクシングパート。つよきになるための物語。
実は泣き虫で、精神的にお嬢様で。
人を傷つけることに敏感で、少し臆病で、でもプライドは高い。

タカヒロ氏の描くお嬢様(エリカ)と、さかき傘氏の描くお嬢様(勝気)の違いが本当にわかりやすいです。

そんな彼女でも泣き虫と根性なしは別。
泣くことはおかしいことじゃない。
大事なことは、耐える心が「つよき」なこと。

「つよき」になる物語。とても面白かったです。

 >痛いのはあきらめた。
   泣いちゃうのはあきらめたから
 
 >「お前も泣けッッ!」

きつねに決めるシーンは本当にかっこよかった。
王道な話ではありますが、面白くありました。
勝気ナイスファイト。
そして、その後に介抱する、エリカと勝気の関係も大好きです。


話は前後しますが、バスケの試合の話も好きです。
弱い人間がチームワークで勝つ話はいいです。
エイチたちよく頑張りました。




変わって後半はイチャラブパート・・もとい伝説世代VS次世代
もといセーシュンの物語。

キスにテンパる勝気ちゃん本当に可愛かった・・・www
さすがにマウスウォッシュを飲むのは笑いました。
でも、キスシーンCGだったりは本当に可愛くて可愛くて。

そして勝気をエリカから取り戻すお話へ。
ここもはかりさんといい、乙女さんといいはちゃめちゃぶりは笑いすぎてお腹痛かった・・・。
瀬麗武はぶっ壊すし、フカヒレはいつもどおりだし、子羽とスバルは、相変わらずニアピンするし
めっちゃくちゃで、だけれど笑いました。
その後の決めゼリフ。

 >言ってやれ
  俺との半年は100兆で買えないって

>セーシュンってのが何兆円よりはるかに価値があることを教えてくれたわね
  感謝してる

 >私のセーシュンを買いたいなら
  一秒100兆円でも安いわよ!!

 セーシュンの価値、エリカが味わってきたものだからこそ伝わる決め台詞。
 元学園ヒロイン(失礼)と、現学園ヒロインの間のセリフだったからこそ、
 こっちにも何か感じるものがありました。
 
 「つよき」のための物語、「セーシュン」のための物語。
 一粒で二度美味しいようなルートでした。
 とてもよくできていたと思います。面白かったです。




 ただこのルートでもう一つ印象深い会話があります。
 それはフカヒレの姉ちゃんと、スバルの会話。

 >「当時の人間関係が今も続いているのは素敵ね」
 
 >「いうほどじゃないぜ。卒業してからあったのも数えるくらいだしな」

 >「数える程会えてればいいわよ」

 >「大人になるってね。残酷なことよ。
   当たり前のように隣にいた子が、いつの間にかすごく遠くにいってしまうの。
   自分たちで離れたわけじゃない。
   それまでと同じように隣り合って歩いていたはずなのに、
   いつの間にか隣りに誰もいない。それが普通。
   そんな普通を、無理やり縮めちゃえるんだから、いい友達を持ったわね。」

 つよきすフェスティバルは、面白いのだけれど、時々こういうところが刺さります。
 学園物語から卒業後の友人同士で会える距離だったり。
 他にもある、こういったセリフをちょこちょこ入れてくるのが、さかき傘さんらしいというか。
 眩しいです。ある意味まぶしすぎます。






④カニルート(2015)

 カニルートと言いますが、彼女のルートアフターは、どちらかというと
 レオの学園生活と社会人の環境の違いをリアルに描いています。
 その中で印象深かったシーンがありました。
 それはレオが、ピュア子や華砲を見ていったセリフ。
 (長文になります)




 >「昔は一度駄弁ると2時間3時間当然だっけな。
   むしろ10分で別れるなんて変な感じだったものだが。
   
   いつからだろう。こっちのサイクルに慣れたのは。

   楽しそうな学生たち。
   羨ましいと思ってしまうのはいいことだろうか?よくないことだろうか。
   時計の針は戻らない。学生時代にどれだけ思いを馳せても、
   俺たちはもう二度とあの頃には戻れない。
   
   それは悪いことじゃないはずだ。
   例え思うたびどこか物悲しくなっても、悪いことじゃないはず・・・。

   あいつともすばるとも、もうほとんど一緒にいる時間はなくなった。
   会えることはほとんどないし、一緒に話す時間もほとんどない。
   でもこれ、原因は俺たち自身にある。
  
   約束しないんだよな。
   いついつ会おう。いついつ時間作ろうって。
   また会うことに約束はいらない。
   示し合わせる必要なんてない。
   どうせすぐ会える。
   そんな感覚が、まだ身体に染み付いている。
   ずっと染み付いてたものがまだ変わらない。
   
   『俺たちが大人になりきれてない部分だった。』

   そのまま4人は、笑ってまだ蒸し暑い夜の中へ消えていく。
   楽しそうに、消えていった。
  
   うん。俺は今幸せだ。
   大人になって──色々考えるようになって
   ひとつだけ確かに思うのは、もう若くないな。



    
今作品は、NEXTと伝説世代で祭りのように騒ぐ影で、
こうした大人になってしまった環境の変化と、変わらないものも同時に描いていました。
他ルートでも、時々そうしたことを感じたセリフを混ぜていくように。
青春の残り香といいますか、どこか切なく感じさせるような作品になっています。
さかき傘さんらしさが出ているように思います。

でもだからこそ、この青春の時間に価値があるものに感じて。
色々な思いを味あわせる作品でした。

これも、つよきすという作品が10周年という重みがなければできなかったことだと思います。
つよきすワールドの集大成を見せてくれたように感じます。
本当にこの世界観がすきでした。

続編が出れば嬉しいは嬉しいですが。
きっとこの作品が一区切りの作品であったと思います。
セーシュンの価値と、楽しい時間を味わうことができました。
CandySoft様。楽しい時間をありがとうございました。