前半ネタバレ薄めでおすすめポイント。後半ネタバレありで各ルート感想。『丁寧』に時間の流れを積み重ねていく、「良いなぁ……。」と染み入る作品。決して派手さはないももの、配慮された演出はしんみりと。ころなちゃんとても可愛かったです。
※前半はネタバレ薄めで、本ゲームの概要やおすすめできる点。
後半はネタバレ全開で各ルートの感想を書いていこうと思います。
「PULLTOP」より発売された『見上げてごらん、夜空の星を』(以下「見上げて」)
今作ライターの紺野アスタ 先生でPULLTOP作品といえば、
前作の『この大空に、翼を広げて』(以下「ころげて」)が代表作として挙げられます。
ころげてでは、主人公たちとグライダーによる大空を舞台とした、青春部活ものとして、スポ根ものとして、爽やかな物語として仕上がっていました。
それと代わって今作の『見上げて』
舞台は同じ空ではありますが、「星空と天体観測」になります。
きらびやかな星空のもと、思いを馳せる物語。
同じ部活ものではありますが、前作とは全く作風が異なります。
゛別れと再会、新しい出逢いを経て、再び夜空を見上げるようになった暁斗は、
取り戻していく。
もう二度と戻らないと思っていた、大切な思いの数々を。
そして知っていく。
未だ出逢ったことのなかった、特別な夜を。
仲間たちと宙を見上げ、星々を巡りゆく青春の日々が、また始まる。゛
(公式サイト Story より)
今作では、昔から変わらない星空の中で、過去の大切な日々や思いに馳せながら
今の日々を実感して、遠い懐かしさを感じさせる、ノスタルジーなお話です。
『変わっていくもの。変わらないもの。』
共通ルートから「過去の小学生時代の回想」を何度も重ねていくことで、より絆を感じさせる時間の重みに深みを与え、じんわりと染み込んでくるような作品。
それに合わせて、ヒロインとの距離感を感じさせてくれる「バイノーラル録音」。
夜空を埋め尽くす煌く星々を表現した、星空作成ソフト。
冬らしい閑静な美しい背景と、キャラたちを意識した視点移動。
今作では、読み手を意識した、雰囲気作りに徹底した『丁寧』を意識した作品でした。
決して、最大瞬間風速がすごいだったり、すげぇ!!やべぇ!!という作品ではありません。ただ、共通ルートからの丁寧な積み重ねにより、個別ルートに入ってじんわりと「良いなぁ……」と染み入るような作品。
丁寧に描くからこそ、登場キャラの行動原理や胸中の複雑な思いを味わうような作品です。
ですので、『ころげて』が好きだからといって、『見上げて』が合うかどうかは別問題。
回想描写による幼馴染の絆や変わらない思い。
天体観測による繋がる思い。
すっきりとした爽快感ではなく、まったりとした雰囲気が好きな方は買いましょう。
また、イチャラブという面で期待して買うのは注意です。
今作、織姫・ころなルート、と幼馴染ルートで分かれています。
前者のルートはまだイチャラブは多少はありますが、幼馴染ルートはイチャラブはあまりありません。その分を、ヒロインの胸中のわだかまり、そこから魅せるつながりに当てており、あくまでイチャラブは二の次です。
むしろ主人公と、または幼馴染たちとの繋がりに「良かったね……。良かったね……。」という気持ちになるエロゲです。
他に上げるとするならば、主人公は基本受身です。(一部シーン除いて)
うじうじする行動しないタイプというマイナス面は感じませんが、それよりもヒロインを中心にして物語が繰り広げられていくため、主人公はフォロー側にまわるといった印象。
ですので、主人公かっこいい主体が好きという方は注意。
私自身の感想としましては、プレイ後には充足した気持ちになって面白かったです。
過去の回想を丁寧に丁寧に描いた分、個別ルートの話には自然と染み入るような形で入ってきて、言葉や演出による一つ一つのシーンに重みが加わって。
最後には、納得した形で終えることができました。
こういう面では、『ころげて』より『見上げて』の方が私個人としては好きです。
見上げての方が、より身近なものでリアリティのある世界観であり、また子供時代からのギャップ、高校生らしさの願い、そしてその街に生きる大人らしい現実のあり方、こういったものがとても自然でした。
何度も同じ言葉を繰り返しますが、本当に『丁寧』な作品でした。
素敵な物語だったと思います。
星空を眺めたくなりました。
(以下 ネタバレありで攻略順に各ルートの感想を書いていきます)
ヒロインルート感想は、前半ヒロインの良さ、後半はシナリオで書きます。
①共通ルート
共通ルートから、繰り返し回想による過去パートが繰り返されていました。こうした中での、沙夜ちゃんの通い妻っぷりや、過去パートでの沙夜ちゃんの可愛さはなかなかにすごいものがありましたね……。おでーん!が可愛かった。
また、ころなちゃんのまっすぐっぷりもとても魅力的でしたし、姫先輩のお嬢様キャラでありながら、暴走気味でおちゃめなところもよく現れていて、プレイ中は2828しながらプレイできました。
お話の内容としても、やはり一番面白かったのは、望遠鏡ドブソニアン。主人公のトラウマを完成した望遠鏡を眺めることで乗り越えていく。あの星空を眺めた瞬間の美しさとそこからRitaさんのOPの入り方の鳥肌は今でも覚えています。
共通では本当に何度も何度も回想を入れていく共通で、今時珍しいなぁと思います。
②白鳥織姫 ルート
姫先輩はなんといっても、ギャップらしさが可愛かったなぁ・・・www
普段はお嬢様キャラな言葉遣い、でも実際には好奇心旺盛、おちゃめで、だからこそ行動力の溢れるリーダー気質。姫先輩がいればなんとかなる!というあのオーラは本当に魅力的でした。(特にひかりルートの姫先輩登場による、前向きさは貴重。幼馴染ルートで姫先輩が離脱したのには、山場となる展開に姫先輩の立ち位置がいるとやりづらいからなんだろうなと、今更ながら思います。)
それに反して、恋愛になると純粋で初心で。実は人一倍の甘えたがり、自分の恋人にだけ魅せる甘えん坊な姿には本当に悶えました。それに加えてHが大好きになっちゃうとかもうね。強い。こたつあーん最強。おこた足コキ is justice
基本受身体質な主人公な分、こういった気の強い姫先輩のようなキャラがよくハマるのだと思います。
シナリオ面に関しては、正直無難。というのも仕方ないと思います。
彼女は共通から関わりはあったものの、過去の回想には一切登場せず、今作品の注目ポイントである、「時間の積み重ね」という表現ができませんでした。共通ルートではどうしても関わりが薄くなってしまうのが痛い。
ですので、個別ルートからの話は、全て新しい事柄からのお話。
プラネタリウムによる演目、卒業旅行計画など様々なお話が展開されていきました。
一つ一つのお話は面白かったのですが、どうも目的の一貫性が見られない、ちぐはぐさがあったかなぁと正直思います。
「プラネタリウムの準備期間が一番楽しかった」というテキストもありましたが、実際にそこまで準備期間の描写が薄かったりが残念だったかなぁとも。
一つ一つのイベントにつながりがあったりしたらもう少し面白かったかなとは思います。
もしくは、過去に少しでも姫先輩のつながりがあったらなぁと。素人意見ですが……。
ただ、卒業旅行編の姫先輩と吉岡さんのお話は素敵でした。
織姫先輩自身の星を見る素晴らしさを、後輩に継承するこだわりのシーン。自分が卒業していく哀愁と、それを後輩に託すことでの自分の存在意義を表すシーンは綺麗でした。そして新たな後輩のころなちゃんを迎えることで、むつらぼしの会は続いていく。部活物の一つのあり方として、面白かったです。
彼女のテーマは部活物における『部長としての証明と継承』でしょうか。
また、彼女のルートにおいてもう一つ魅力的だったのが沙夜の失恋描写。
゛それとあっくん、もう差し入れはしてあげられないからね。
これからは白鳥さんにお願いしなきゃダメだよ。
これでもう、わたしも『通い妻ちゃん』卒業だね゛
゛今までありがとうな、沙夜。
沙夜んちのおでんの味、ずっと忘れない゛
゛そんなのとっとと忘れちゃいなよ゛
沙夜は笑っていた。
最後まで笑っていた。
卒業旅行で不安を感じる暁斗を見た沙夜
゛ごめんね。でも今だけだから……。゛
(ゆるしてね)
わたしはもう、十分元気をもらったから平気だよ。゛
それでも沙夜を元気づけられたことに、俺は安らぎを感じていた。
沙夜ちゃん、彼女は、主人公が「幸せな姿」でいることを強く願います。
だからこそ、主人公のことが好きだからこそ最後まで笑顔のままで。
儚くて、心が握りつぶされるシーンです。
沙夜ちゃんスキーに怒られそうですが、彼女は本当に゛選ばれなかった゛ときほど輝くヒロインであると感じます。
他ルートでしっかりとヒロインと決着をつけるところ、評価できます。
③ころなルート
ころなちゃん、いやぁめちゃくちゃ可愛かった……。
天真爛漫、自分の気持ちに素直で、好き好きって猛烈に主人公にアタックする姿は元気っ子後輩スキーな私にはダイレクトヒットで撃沈。
彼女の一生懸命さには、「がんばれ!」と応援したくなる気持ちが自然と湧いてくるものでした。
女の子として見てもらいたい!と懸命に主人公にアピールする姿や、星を見て素直に感動する姿、沙夜のことを嫌い!と言いながらほっておけない姿、「アキ兄!」と慕う姿にはほっこりしまくり。
最後に主人公と成就したときには「良かったね……。良かったね……。」と満面の笑みでプレイしていたことを今でも覚えています。
Hでイチャイチャするころなちゃんのあまえっぷりったらもう!!!!
ヒロインの中では、ころなちゃんが一番好きでした。
シナリオに関しては、テーマは『仲間の中に入ること』、『自分のやりたいことを見つけること』という自発的な行動がテーマでしょうか。
(仲間の中に入ること)
共通ルートでのころなちゃんは、過去では主人公たちの後ろ姿を追っている立ち位置でした。そのため、幼馴染3人だけの思い出、鉄道の聖域には踏み入ることができず疎外感を感じています。
とくに、様々な思い出が語られる中でつぶやかれる、「いいな、なんか羨ましい……。(列車の中を初めて見たシーン)」や、「やっぱりみんなの輪の中に入りたい!」であったり。「そっか……アキ兄も同じなんだ……えへへ……」という共有できたときの笑顔は、ころなちゃんの過去を感じさせるだけに切なさもありながら、今度は一緒に活動ができることへの微笑ましさがありました。
とくに、ドブソニアンの活動でむつらぼしの会に入ってイキイキとしている姿、「ころなもやる!」という姿は、過去の一緒に遊べなかったお話も相まって、より楽しそうな姿がとても印象的です。
こうした環境は、ころなちゃんが、やっと後ろ姿を追うことから、一緒に並ぶことができたという喜びと、同時に私には自分から並んだはいいものの、自発的に何かしようと思ったことはないと気づくきっかけにつながるものでもありました。
(自分のやりたいことを見つけること)
ころなちゃんにとって、主人公は憧れの存在であり、主人公が本当に好きで天体観測をしていることに、自分への疑問が沸いてきます。流されて今まで生きてきた中で、そんな自分が嫌で、夢中になってやれることを見つけたい。そうした中で、一つのきっかけになったのが、ハッブル望遠鏡の本でした。
ハッブル望遠鏡での美しさに衝撃を受け、流星電波観測を自分の手で行う。そう決意したころなちゃんの成長ぶりには、親心さ
ながら見守る気持ちでいっぱいでした。初めて自分でやりたいことを見つけられたころなちゃん。
(ここまで来れたきっかけと、世界へのデータ発信と、天体観測)
こうした成長の中で、ころなちゃんの一言で一番心にきたシーン。
゛昔から夢中になっていたものが一つだけあった。
それはアキ兄だよ。
初めて会ったときからずっと夢中だった。
だからここまで来れたんだよ。゛
ころなちゃんが自分でやりたことを見つけられたきっかけ。
それは、アキ兄がいたから。ずっと後ろを追っかけることができたから。
ころなちゃんの一途さと、笑顔が好きで、泣きそうになりました。
こうして、流星電波観測を実際に行うことによって、世界へデータ送信する中で、自分も世界の輪の中に入れた。同時に、かつて3人だけだった゛聖地゛の列車の中で自分の文字を刻むことで、主人公との思い出の中に新たな思い出を築くことができたころなちゃん。
そして、最後には自分のやりたいことを見つけられた。
輪の中に入ること、自分のやりたいことを見つけること、二つを天体というテーマの中で上手に描かれていて、素敵なお話でした。
幼馴染たちのルートに比べると、目で見えない「流星電波観測」という対照的なのも何か意味があるのかもしれません。きっと、幼馴染たちの「昔と今も変わらない目で見る夜空から連想させる思い出と変わらない3人」と比較して、「昔の目で見るだけの天体とは違って、新しい目で見えない天体だとしても、新たに輪に入ることができる」といった、比較したいという意図だからこそではないかと思います。
ころなルート、大好きです。
ころなちゃん良かった。
④幼馴染共通ルート
打って変わって幼馴染ルート。前者二人のルートとは変わって、ひかりが帰ってきたぶん、3人中心の話です。
自分なりにも、幼馴染のお話を整理したいと思います。(備忘録がてら、あらすじ説明調になるのですいません)
まず、ラブレターの話について。
沙夜ちゃんは、自分のオッドアイへのトラウマを抱えた少女でした。こうした中で、綺麗だと受け入れ認めてくれた暁斗に惚れます。(最初からこの感情に気づいていたと思う)
しかし、この感情が3人の幼馴染間を崩壊させてしまったという事実にトラウマになります。
ひかりは、沙夜の気持ちに気づいていて、主人公と沙夜が結ばれないのは、自分がいるとふざけたノリになってしまうから、自分は邪魔者だと考えました。その思いからでた言葉が「天体はもう飽きた」
これは、主人公にとって、3人で夜空を見ようと誓ったことへの裏切り行為であり、崩壊してしまいます。
同時に沙夜ちゃんは、この3人の中を崩壊させたのは、自分が暁斗に恋してしまったから、という恋愛感情に対してトラウマを抱えることになります。
この関係のまま、ひかりが卒業間際に、沙夜はひかりへ、暁斗へのラブレターを渡すように託します。
しかし、ひかりと主人公の関係は冷え切ったまま、ひかりはラブレターを渡しても誰からかも告げず、主人公は同時に読まないままでした。
こう思うと、だれも悪くないんですけどね……。後述する予定ですが、お互いに3人でいたいと願うからこそだったり、二人のためにという行動がすべてすれ違った結果だったりで。幼ないながらの悪運だとしか言い様がない。
舞台は高校に移ります。
沙夜は振られたと思い込み、主人公とは疎遠のままでした。しかし主人公の祖父の死別をきっかけに、その時支えた沙夜によって仲直りをします。こうした中でひかりが戻ってきて。また3人で空を見るようになる、という共通ルート。
とそこで終わればあれなんですが、さらに沙夜は手紙が読まれていなかった、振られていなかったという事実に気づいて。沙夜ちゃんは主人公とキス。目撃するひかり。
まだ共通ルートなんですけどどど。
このキスは同情になるから、ここで受け入れられても嬉しくないから、だからなしで。となるんですが。
さらにこのキスから1年後になりまして、ひかりが帰国。
スターライト・プロジェクト。
あの頃の夜空を取り戻したい。明るい夜空のために。
共通ルートで話は変わりますが、一緒に銭湯入るシーンはドキドキしました。
あのシーンを入れてくれたことに感謝を。
(暁斗、ひかり、沙夜の関係)
この3人の特徴として、バランスがいいですよね。
行動派の暁斗、フォローの沙夜、バックアップの暁斗。
誰が欠けてもうまくいかない、3人だからこそっていうのが丁寧に描かれていて。
また、3人とも、3人で星空を見る ということや、お互いのことを大事に思っているのが印象的でした。
主人公は、3人で星を見ることを大切に思っていたからこその、星を観れなくなったトラウマで。
ひかりは、二人のことを大切に思っているからこその行動。(特にひかりルートは顕著でしたね)
沙夜は、3人でいられることが大切だったからこそ恋愛感情にトラウマを持ってしまって。同時にひかりのことが好きだからこそ、自分に遠慮する素直になれないひかりが嫌いで。また、主人公には笑っていて欲しいから、幸せでいてほしいから、最後まで主人公のまで笑顔でいようと。選ばれなかったことで主人公の前で泣いたことって一回もありませんよね。記憶が正しければ。
同時に、沙夜は自分から行動できるひかりが羨ましく。
ひかりは、女の子らしい、沙夜が可愛くて、羨ましく。
ここまで丁寧に幼馴染だからこその関係性を描けるのは、紺野アスタ先生のすごいところだなぁと感服します。
⑤沙夜ルート
沙夜ちゃんの可愛さを一言で言うなら、「めんどくさい可愛い」
もう少し自分の気持ちを全面に出せばここまでぐちゃぐちゃにならなかっただろうけれど、でも沙夜ちゃん自身が優しいからこその結果。
このめんどくささ、人を選びそう。でも、だからこその普段の通い妻ちゃんだったりの姿が健気で可愛いんですよね。
単純に通い妻って呼ばれて赤面しながらもまんざらでもない顔だったり、「おっでーん♪」っていうのめっちゃ可愛いよね!!! あぅぅって感じの可愛さです。
もう一つの彼女の魅力はやっぱり、選ばれなかったからこその美しさ。
これ幼馴染スキーや、沙夜ちゃんスキーには怒られそうなんですけどもね。
やっぱり選ばれなかったときの、でも「主人公には笑顔でいてほしいから」、恋人ではなくても、たしかに二人の間に残っているものはあるから、っていう変わる物と変わらない物が表現されてて、幼馴染の矜持がよく描かれているんですよね。
悲劇のヒロインは言い過ぎですが、だからこその彼女だと思います。
ただ、彼女自身、我が強いと感じることもあります。
例えば、主人公が星を観なくなったとき、それでも主人公には星を観てほしいと願う理由。それは、主人公が夜空をみなくなることは、かつて自分を認めてくれた『冬のアルビレオ』を否定することになって、自分を否定されることになるからと。
思い出に関することと、主人公の幸せは譲らない。そんな彼女も可愛さの一つだと思います。
シナリオに関しては。
ひかりルートに比べて、沙夜ルートは、彼女自身の内罰的な胸中の解消がテーマでした。
3人がこれだけこじれた中核にあったのは、沙夜自身が自分のせいだからとトラウマになってしまった恋愛感情が周りに影響し合ったものがありました。
特にひかりに対する遠慮の表れは顕著です。
他ルートで、「ひかりに抜けがけして、あっくんの部屋に入れない」という、ひかりに対する罪悪感だったり。自分のせいで、3人で星を観ることができなくなったと。
こうした思いから、あっさり告白が上手くいって一緒になるものの、好きなはずで一緒にいたいはずなのに、一緒にはいられないと、複雑な思いを抱えることになります。
そして追い打ちにお守り喪失事件。これはバツだと、完全に心が折れます。
一緒にいられないと。
こうした中で、上手だったのが天体観測ノート。
天体観測ノートがあったからこそ、主人公は助けられたのだと。
沙夜自身が天体観測ノートをつけていたのは、あの3人で観た夜空を忘れられなかったからだと。
天体観測ノートから、夜空に瞬く星空が、思い出の欠片になって、過去の星空につながって。沙夜の内罰的な胸中を説かしていく。ここの構図がとても上手で素敵だった。
かつての思い出の場所で、もう一度やり直そうと。
『あの日かけ違えたボタンを留め直して 』
もう一度
゛いつでも。ここから。はじまる。゛
大人になっていく中で、変わっていくものはあるけれど、またもう一度はじめることができると。
幼馴染のお話として、かけ間違えた友情としてのお話。
心の機微を丁寧に描いていて、面白かったです。
⑥ひかりルート
沙夜に比べて、ひかりは、名前のとおり元気ハツラツ、リーダータイプの猪突猛進型。姫先輩とちょっと似てますね。彼女自身は、過去は少年気質で、そのことが気になって主人公は私のことが好きじゃないと決めつけてます。特にそばに沙夜ちゃんのような理想的な美少女がいたからこそ尚更。主人公には沙夜ちゃんがお似合いだと、自分の気持ちを覆い隠して(気づいていたとしても気づかないふりして)二人をくっつけようとする姿は、印象的でした。特に、沙夜ちゃんルートでのひかりは、3人でいた事の方が好きだからと、自分より3人を優先するところは、沙夜ちゃん同様。ひったすら逃げまくります。
ただしその分デレた後のひかりの可愛さはもう、ものすごい。子犬のように甘える仕草、
あまっあまですごい可愛かった……。
シナリオに関しては、沙夜ルートと対照的でありました。
沙夜ルートが、3人の中におけるこじれた沙夜ちゃんの胸中と天体観測ノートが中心だとしたら、ひかりルートは、スターライト・プロジェクトをきっかけにした部活としての天体観測の可能性と3人の関係性。
ひたすら逃げるひかりと、沙夜と暁斗の二人を無理やりくっつけようとするひかりに、沙夜ちゃんはブチギレて、絶縁。(に近い)
゛わたしはあなたに譲って欲しいんじゃない!
同情なんかしないでっ!!゛
ここのセリフは、見上げての中でも名セリフシーン出会ったと思います。
幼馴染であって、ひかりの本当の気持ちを知っていたのに、二人のことが好きで、だからこそ認められるのに、ふたりとも両思いなのにそれでも無理やりくっつけられようとする沙夜の気持ちはどれほどのものだったでしょうか。
その後、ひかりは大雨の電車の孤独の中で、自分の気持ちと向き合い、本当は好きだったと。その後もまだ素直じゃないんですが。それがひかりらしいと思いつつ。可愛い。
と、ここで、3人仲直りとなれば解決なんですが、逆に沙夜は自分がいるからこそ、ひかりはその気持ちを封じ込めてしまう、と沙夜が身を引きます。かつての過去のひかりのようで、本当に二人は対照的ですが似た者同士。
こうした中で、スターライト・プロジェクトが進められていきますが、森田さんの役回りがとても上手でした。光害というけれど、本当にそこまで害のあるものなのか?
むしろあなたたちも、街の光に恩恵を受けていないのか。防犯上の問題はどうなのか。
勢いだけで学生らしさの部活物で突っ走りそうなところを上手く山場として盛り上げていました。あの場に、沙夜がいればおそらく変わったのかもしれないとも思います。
森田さん、挫折した過去を持つ中で、若者たちの希望が輝くお話として。
反論としての理論もしっかり持ってて。説得力があって良かった。
(ここでこういうのって大人の言い分があまり説得力がないことが多いと思うので)
こうした中、スターライト・プロジェクトによって、かつての3人の明るい夜空を取り戻そうとするひかりにまさかの追い打ち炎上。こう解決策がSNS。
沙夜のフォローに、計画変更に、さらに全国規模へ。
なんというか斬新。ここの盛り上がり方はこちらもわくわくして面白かった。
少々ご都合主義的ではありますが。全然ありです。
゛星が見えるかはわからない。でも意味はあります。
人々の目を、夜空へ向けてもらうために
人知れず、星が隠されていってることを知ってもらうために゛
今までは私たちの思い出のためにしかなかった話を全国規模に。
星空の美しさを知ってもらうために。
そうしてふたご座流星群を迎える当日。
3人での自転車シーン。仲直りした3人。
ほんとこのシーンは卑怯。涙腺が緩む。
歌詞とのシンクロがものすごくて。演出が相まって。
大人になっていくこと。
二人とも大好きだけど、だからこそ一緒になれない。(沙夜)
子どもの頃の宝物をみ~んな持ったまま、大人にはなれないのかな……。(ひかり)
だけれど、やっとたどり着いた、ずっと観たかった宙へ。
゛穴の空いたポケットからポロポロとこぼれていった、大切なものやそうじゃないものたち。
空っぽになってしまったポケットは今、絶え間なく振り続ける星屑でパンパンに膨れ上がっている。゛
゛この列車は宙をゆく銀河鉄道天文台。
さあ、次なる目的地へ向かおう──゛
゛いつでも、ここから、はじまる。
謎を解き明かす旅を゛
゛見上げてごらん、夜空の星を。
そこに見える無数の光は、君たちの未来の可能性なんだよ。
暗闇を怖がることはない。
いつだってそこに星が輝いているのだから゛
過去に比べて変わったものはいくつもある。幼馴染の3人。かつてのダムに沈んだ街。
でも、それ以上に宙を見上げれば、変わらないものはそこにあって。
そこからまた始めることのできる旅は宙にあって。
子どもたちに、この感動はつながっていく。
あぁ、ひかりルート。
天体観測を、過去と現在、そして未来へつないでいく、素敵な物語でした。
変わったものを受け入れて、でも前向きになれる。
気持ちのいい最後でありました。
同時に少し残酷な気持ちもあるのが正直あります。
それは、3人でいた関係は変わっていくもので。
たしかに3人でいたものの、それはかつての3人ではなく。今までとは違った3人。
実際にEDでは3人の描写がないのが印象的。
でも星空がある限り、3人はまた違った関係性でこれから旅を続けるのだと思います。
ときには家族と。幼馴染と。違った旅を。
優しい3人の三角関係。ある意味優しすぎる三人関係。
⑦ひかりルート・沙夜ルートを比べて
既に上記でも述べましたが、ひかりルートは大きな視点で。
沙夜ルートは三人の関係の小さなところに視点を当てて話が進みました。
これらのルート、お互い似たような物になりがちなところで差をつけたところが本当に上手でした。
これらをどちらかグランドルートにしてしまうと、どうしても冗長しがちなところを、
二つそれぞれに着目するところを上手くわけることで、二つのルートが終わったあとに、納得ができるものになります。
きっと、沙夜ルートで、3人の特に沙夜の複雑な思いを知って、ひかりルートで、そのこれからのあり方を描いて
さらに沙夜ルートをそのあとにやると、また違った感触で楽しめることができるのだとおもいます。
まさに二つあって一つのお話。
⑧総評
天体観測をテーマにした作品。どのように青春部活物として描かれるのかな?と思っていましたが、いやはや。
さすが面白かった。
変わった街と変わらない星空。対照的な幼馴染。大人と子供。本当に上手な比較がより面白さを与えていて。
さらには丁寧に丁寧に重ねていく回想が、個別ルートでの説得力を与えていて。
気持ちのいい雰囲気に浸ることができました。
決して目立つものはないのだけれど、良いなぁとなれるエロゲ。
PULLTOPやるじゃん!ってなりました。
ここまでユーザー側を配慮したエロゲもなかなかにないかなと思います。
FDがやりたくなりました。
ひなみんパッチ間に合いませんでした・・・・・・・()
先生ルート楽しみです。
追記
ころなちゃん誕生日おめでとう