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merunoniaさんのセミラミスの天秤の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
セミラミスの天秤
ブランド
キャラメルBOX
得点
78
参照数
1105

一言コメント

天使と悪魔 倫理と疑心のお話。終わり方や印象は弱いものの、あや先生らしい文章と博識で、描かれる心理描写が面白かったです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前半はネタバレ無し、
後半はネタバレありの方向で感想を書いていきます。





 木洩れ陽のノスタルジーカ以来のコンビ作品でした。
 
 BADENDに90点 各ヒロインで75点といった作品。

 内容を簡単に言うと
倫理(正義)と疑心の価値観が交差していく中で繰り広げられるお話でしょうか。

 結論から言うと、目立った動きのある物語ではないものの、
サスペンスで揺れ動く心理描写だったりは面白かったです。
悲劇のBADENDは、必見の価値ありだと思います。
 まるでサスペンスドラマを見ているようでした。
 
 ただしキャラごとに山場を作るわけではなくて、
共通のお話に、メイン二人を絡ませる話になっているので、
ほかの3人がちょっと話弱くなったなぁと思いました。
 それに最後の終わり方があっさりしてしまっているので、
あまり余韻は残らないものでした(BADEND除く)




 シナリオには推理要素などは少しだけあるけれど、それよりも、相手の心理、自分の心理を
描かれていく作品になっています。
 嵩夜あや先生の文章の特徴が顕著に現れた作品だと思うので、体験版を推奨します。
 けっこう癖があるものの、だれることはなかったし、小説を読んでいるようでもありました。

 なにげに、本作品中やBGMに他作品の小ネタなどが挟んであったりしたり
某ゲーム(モンハ○)などにも、ゲームシステムに製作者の心理だったりなど、
独特の考察が描かれたりしていて、そういう面も 嵩夜あや先生らしくて面白い
と感じました。

 万人向けではないけれど、サスペンスが好きな方、心理な面で中二要素(ニヒル?とは違うけれど)
が好きな方は向いているのではないでしょうか。(中二?と言われるとうーんな気もしないでもない)
 ただ伏線回収をしっかりされる作品ではなく、むしろ読者にある程度残しつつ、あとはご想像に、、
という作品なので、そこが気になる方には不満が残るかもしれません。
 
 
 陵辱要素は確かにあるものの、ヒロインに直接関わる陵辱はないので、そこは安心してもいいし、
逆にそういう方向の快楽堕ちなどに期待はしない方がいいです。

 エロゲの種類でも、キャラ達に魅力を感じる作品、動きのある作品ではなく、
小説を読んでいくような、考察をしていくような、そういう作品であるため、そこに注意が必要だとおもいます。






※以下ネタバレありの感想になります。

 以下 シナリオ 音楽&システム Hシーン 最後のエピローグ と項目に分けて感想を書いていきます。



○シナリオ

・シナリオ全体
 聖女と悪魔、倫理と疑心の二つの価値観から描かれるお話。
シナリオ自体はあくまで、主人公に主観を任せ、繰り広げられる話は作りこまれてて面白かったです。
 主人公自身を読み手に重ねることで、どちらが正しいのかを考えさせられる、
特に共通でも繰り広げられる、解決方法への愛生と映瑠の口論だったりはけっこう好きでした。

 共通で選んできた選択肢の、行き過ぎた倫理と疑心(ロウとカオス)はBADENDへつながる
というコンセプトは面白かった。
 また作品中のBGMや所々の効果音の使い方が上手でした。
 以上の物が相まって、あまり動きがない物語にも臨場感がつけられていて良かったです。

 スタッフルームでも仰っていましたが、同性愛だったり半陰陽の内容を取り上げたことが
より現実味を帯びて面白かったのかなぁと今思いました。

 シナリオ中に現れる、単語も丁寧に解説されていることで、癖のある文章にも
理解がしやすいようにという配慮もあったし、本当に読むという面でも楽しかったです。

 それぞれの繰り広げられる価値観に、自分自身はどう考えるかを、とおもわせてくれるお話だっと思います。


 ・BADENDについて

 ○倫理の鉄槌END(ロウBAD)

 
 行き過ぎた「「正しい」」という正義、倫理だけがどういう結末を生むかというお話。
最後の終わり方は秀逸でした。

 主人公がしてしまったことに対する、映瑠の一言
「彼はもう殺してしまったのだから・・・」(ちょっとちがったかな?)
 
映瑠先輩のここまで、自分の一線を超えた人間に対する冷徹さと、
自分は間違ってない信念を見せ付けられると、恐怖を感じてくるものでした。
まだ愛生さんの悪魔的な要素が可愛く感じられるくらいに


 スタッフロール後の悪魔と聖女が談笑しているところも本当に怖くて不気味で。
愛生さんはまだ自覚があるけれど、映瑠さんは何の疑問も持っていなくて。
悪魔より聖女の方が怖いとは、ある意味皮肉だなと感じます。
 
 特に後半の二人の正義と救いを求める口論がとても印象的で
ある意味この作品の天使と悪魔を表しているシーンだと思います。


「犯罪者を罰するためなら、被害者はどうなってもいいのか?」
「では暴行するような人間を野放しにしても構わないというのか」

 愛生の「映瑠は映瑠の正義を、自分の欲望を押し付けることに利用している」という表現が印象的でした。

このBADENDだけで満足してしまっry

 


○愛生BADEND(カオスBAD)

 倫理の鉄槌に比べてわかりやすいBADENDでした。
ここまでされると主人公も何を信じればいいのか・・疑心に満ちたENDでした。
 愛生さんの人を信じきれない根底をよく表したBADENDであったと思います。
 倫理の鉄槌ほどインパクトが大きかったわけではないけれど、
 よく狂気が表された話で面白かったです

 
 

 ・各ルートシナリオとキャラクターについて(攻略順)

 
○直緒
 青山ゆかりさんの、低ボイス同級生(若干男勝り)キャラ。
久しぶりな感じの青山ゆかりさんでしたが、かっこいい感じが良かったですね。
 だからこそあたふたするところが可愛かったり。

 シナリオの方は、正直なこと言うとあまり覚えていないのが正直な感想。。
立ち位置がだけに仕方ない面もあるのだろうけれど、付き合ってからが短い....

 彼女の本領発揮はむしろおまけシナリオのスイカ劇場にry

 本編中の「悪いがホモは帰ってくれないか(ゆかりボイス)」
が今でも頭に残っています。

 

 ○芙美香
 ロリ!キャラ、たどたどしい喋りなのも鉄板ではあるけれど、めっちゃ可愛かった。
省略することに主人公が突っ込むネタだったり、野菜充実(だっけ?)を
主人公に買ってもらうエピソードだったりは良かったです。
 ちょこちょこ後ろついてくる仔犬な後輩のかわいさを思い知った感じです。

 シナリオ自体はちょっと重いかなぁと思いつつ、
ビバ愛生先生がすっきり解決してくれたので良かったかなと。
 一番解決方法の過程をしっかり描かれていたのでは、と思います。 

 キャラの中では一番だいすきです。
 
 Hシーンが全部おしっこを入れるところにはこだわりを感じました・・

 

 ○映瑠
 ギャップとデレの破壊力を思い知ったキャラでした。
特にシナリオ後半にあるお弁当を持ってくるシチュなど、一番最後の「温めてくれるから」
というエピローグだったりが良かった。
 本編が一貫して、興味ないクールキャラなだけに映えたキャラだと思います。

 シナリオ自体は、サッカー部の不祥事に対する正義の鉄槌と、
自分の正義にこだわるようになった理由(過去の呪縛という表現)が上手くリンクしてて
面白かったと思います。
 愛生と映瑠は似ているところがある、というのも、対比させているシーンは面白かったなと。

「人間は死んだものの思いにとらわれる
今回の断罪の為なら被害者なんてどうだっていい」

 完璧を求められる死んだ母親の過去の呪い=聖女という構成と
半陰陽による潔癖が、上手く噛み合ってて上手だなぁと感じました

 倫理の鉄槌END後にプレイしたので、映瑠さんが可愛いと思いつつ
愛生より、簡単に切り捨てる彼女が一番怖いです。

プレイしたことないけれど、おとぼくにこんなキャラいたようなry

ただやっぱり肝心の解決シーンはけっこうあっさり省かれてるなぁと思いつつ。

氷解というシナリオエンド名も合ってて好きです。

 
 

○愛生
 こっちもBADENDの印象が強すぎて・・・・
 彼女も映瑠とは違った方向の狂気でしたが、主人公が上手く人間に戻してあげられることを
願います。

 桐谷華さんの低ボイスの声がキャラによくあってて良かったと思います。
Hシーンも立ち位置から優遇されてて、多い、エロくて良かった。
桐谷華さんの万能さを思い知ったルートでもありました。

 シナリオ自体もある意味彼女の方が理解しやすい疑心ゆえの狂気だったりしたので、
理解しやすい方向で面白かったです。

こちらも解決シーンはあっさり。

「架空の庭」という表現が印象的です。

 

○塔子
 日常を守るために、友達も恋愛も守り抜くという話。
今までの二つのルートとは方向性が違うけれどこれはこれで
愛生さんがタジタジな姿なのもさすが塔子さん
Hシーンも可愛かったですね。

 なにより、体型がエロい。だからこそもっとHシーン欲しかったと思いつつ
最後にパイズリをいれたのはGJでした。 
 プレイ中に「なんでこの体でパイズリないんだよ!!」って思ってたら
スタッフロールの終わったあとに出てきたので、すぐさま心の中で謝りました。

 「日常というものは、護ろうとするその時点で、すでに毀(こわ)れてしまっているのじゃあないか」

 「幸福のAと選ばれなかったB」

 話の根幹に関わるフレーズが出てくる、日常と、主観の物語にたいする読み手、が描かれた
ある意味メタなルートだったと思います。

こちらもタイーホシーンまではあっさry

 


 ○音楽&システムについて

 サスペンスドラマに合うようなBGMは良かったです。
また効果音の使い方が本当に上手で、狂気をよく表現した臨場感あった話であったと思います。
 
 BGM名もノスタルジーカの時のように、小ネタが挟んであったり。

 ロウ&カオスの天秤を表したシステムも良かったと思います。

 ただ一つだけ。既読判定が厳しすぎて、せっかくの次までの選択肢スキップが使いにくかったなぁと。
選択肢スキップに既読判定がついていないので、もし間違えて押してしまった場合飛ばされてしまったことが
あり、そこが使いにくかったかなぁと。
 無難に手動スキップか普通のスキップを使うようにしました。


○Hシーンについて

 今回の、のり太先生。 よくアヘってたなあ・・・という印象。(といってもそこまで顕著ではないけれど)
よだれやらの表現は良かったけれど、アヘ顔は人を選びそうなと感じました。
 
 芙美香も可愛くて好きだけど、のり太先生の絵は
ムチムチした女の子がよくあっていると思ったので、塔子のHシーンは結構好きでした。
塔子のパイズリシーンを入れたことに感謝します。ありがとうございます。とても良かった。

 おしっこに何かこだわりを感じたのは私だけだったでしょうか・・

 陵辱シーンはそこまで興奮できるものではなかったです。
(そういう目的で挟まれたわけではないかもだけど)

 Hシーンではありませんが、この狂気を描くシーンなどは
のり太先生の絵と合ってて、そこも良かったなと思います。
特に狂気の表情を表した目などは印象的です。




○総評
 万人向けではないけれど、挑戦的な作品であったと思います。
主観ではありますが、嵩夜あや先生が楽しくノリノリに書かれたシナリオだったのかな
と感じられました。

 やはり特にBADENDは秀逸で、こういう方面ではなかなかエロゲで描かれることは少ないので
面白かったです。どうしても陵辱が絡んできたりすると難しいのかぁと。
 
 最初でも述べましたが、ヒロインごとに見てみると、
コンセプトになる悪魔の愛生と天使の映瑠がメインに置かれ、
ほかヒロインがおまけ程度になってしまっているので、仕方ないのかなぁとも思いつつ
もう少し盛り上げて欲しかったなと感じました。

 肝心の解決のところがあっさり終わるところも、終わってしまった と最後あっさりに感じる
一つの要因だったかなぁとも思います。 楽しかったけれど、余韻はあまりない(BADEND除く)
そんな作品でした。

 

 ○最後のエピローグについて

 ヒントが少ないのであれですが・・
「あなたは誰にペンネームがついてたら良かったかしら」
と 塔子シーンにあった「選ばれたAと選ばれなかったB」
というお話が鍵を握ってるのかなぁと思いつつ。

無難に雪井燈花が中立という目線でのお話がセミラミスの天秤でしょうか。
そこでBについて描き出される、雪井燈花のお話。
 
 また塔子の過去を描いた作品が、
「セミラミスの天秤」として
至ることができなかったBの日常を描かれた作品だったのかなぁと思いつつ

 幻聴は雪井燈花による介入?とも考えましたが、
他にも水城の声もありましたし、何とも言えず・・・というのが本音です。

 主人公への脅迫概念?や精神的な疾患だったりと片付けるのもありですけど
それだと面白くないなぁと思いつつ。

 最後まで、読み手に考えさせる作品だと感じました。

 

また次回の嵩夜あや先生&のり太先生の作品を楽しみにしています。
 ありがとうございました。