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merunoniaさんの聖学少女探偵舎 Vol.2 幾星霜、流る涯の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
聖学少女探偵舎 Vol.2 幾星霜、流る涯
ブランド
Sept Rivieres
得点
79
参照数
2

一言コメント

1巻が登場人物の紹介を踏まえつつの小さな事件集だったのに対し、2巻は前半ミステリー(長編)回&後半登場人物の過去に触れてくる回でした。徐々に登場人物(特に香織さんや探偵舎の過去)に触れてくることで、巴さんだけでなくみんなが主人公になっていくのが好み。徐々に広がっていく関係、明かされていく過去の『あの事件』の真相が楽しみです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前回の1巻が登場人物紹介という所で
2巻からは、巴が探偵舎に入ってからの始動回といった印象でしょうか。

10話~12話は、部活のメンバー全員で温泉旅行(という名の過去の事件を辿っていく)回。
その内容は今までの短編区切りと違って長編でした。
半世紀の時を経て継承される呪い。
『白蝋地獄』『紅き焔』『黒墨の帳に』の3つのお話を軸にしながら、
一見関係ない事件がそれぞれ繋がっていき、因縁の真相が繋がるお話で面白かったです。

ミステリーの核となった部分の登場人物達の相関図が正直分かり辛く
なかなか読み進めるのに苦労しましたが、最後のあの近親相姦だらけの狂った真相はなかなかでしたね……。
(その後のおまけで見られる相関図を見ると意外とすっきりしてはいたんですが……)

また同時にこの事件での巴さんの活躍ぶりもとても良かったです。
特に、ただ謎を『暴く』のではなくて、探偵役として『事件を解決』するとした、
矜持、葛藤を背景にしながらも、巴さんなりの姿を見せる話がとても好みです。

※以下作中より
──────────────────
『──私は、探偵になりたいんじゃない。
【そんなもの】になるつもりは無い』
──────────────────
私は、名探偵でも何でもない。
探偵、ですらない。でも、「探偵役」だ。
それを買って出た。押しつけられた、
と思っても良いけど、それを受け入れるかどうかは最終的には私自身の意志。
私は──もしそれが可能なら、考えすぎであれ、転ばぬ先の杖であれ、
【それ以上の悲劇は】阻止したい。
何もないなら、それでいい。
妄想心旺盛な小娘の、馬鹿な振る舞い、それだけで終わる。
以前にも、確かそう考えて、そのための行動ができたはず。
怯えて、引っ込んでばかりはいられない。
──────────────────

かつての過去の事件で名探偵が「あえて暴かなかった真相」。
時を超えて、巴自身はどうしたいのか、葛藤を抱え、それでも『謎を解決』するために挑む姿。
聖学少女探偵舎は、ミステリー的な面白さもありますが、
同時に『解決』に対しての様々な立場を描いてくれるのがすごい面白いなと思います。


13話~15話では、久しぶりの知弥子さん活躍回&巴小学生時代。
徐々に巴の過去の「あの事件」の情報が集まっていくのが面白かったですね。
特に『謎の女』の今後どんどん登場していくだろう所が楽しみ。
知弥子さんの信念しかり、謎の女の考え方なりも面白かったです。
(こんな小学生がいるかーーーーー!!と叫びつつ
個人的には、13話が一番2巻で好きでしたね。

16話~18話では、特に18話の香織さん回が印象的です。
慕っていた人の音信不通、そして自殺。不可解な謎。
そして聖学少女探偵舎に香織さんが入部してからの、過去のお話。
予想以上に香織さんが修羅の道を歩んでいることが分かる回でもありました。
巴さんだけではなく、香織さんが主人公になりつつあるのも面白いですね。
また、それ以外の16話の『犯人がいない』真相(知弥子さん&香織さん大活躍回)だったり
17話の哀しいお話も良かったです。(17話は何というか独特でしたが)


と2巻も様々な話が詰まった回でした。
1巻でもそうですが、ミステリー素人な自分には
暗号やらそもそも分野の話だったり、密室という歴史だったり、幅広い色んな知識の基礎部分がすごい興味深くて面白いです。
コラムの話だったりの作者さんの話も面白いです。(某ひぐらry、うみねryの話は笑いましたが)
3巻ではどんな話が待っているのか。
2巻最後のボリュームたっぷりな次回予告で楽しみが膨らみました。
また読んでいきたいです。

ありがとうございました。