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merunoniaさんのJ.Q.V 人類救済部 ~With love from isotope~ Episode:Ave Maria ~アルファベット・チルドレン~の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
J.Q.V 人類救済部 ~With love from isotope~ Episode:Ave Maria ~アルファベット・チルドレン~
ブランド
StudioBeast
得点
84
参照数
250

一言コメント

本編の補完となるアペンドだが、やって損なし これで無料だから素晴らしい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作のアペンド、補完となる作品
 無料でDLできるということでやってみましたが、無料でこのボリュームはすごいです。
 本作を解明はしていないけれど、補足、また別の視点から訴えかけるものでした。
 満足の一言です

以下ネタバレありの簡単な感想
※主観だったり、これは違うだろという点もあるとは思いますがご了承ください






 話の内容としては、ずばりナタリアの過去。
本作であった「誰にも観測されない世界から来た」というナタリアの過去について迫るお話でした。

 今回の作品は本編のように段階を踏んだ伏線回収などはありませんが、
その分ナタリアが確率世界の考え方に至った過程がある程度書かれています。

 またナタリア自身の人間への見方、心の変容が描かれており、
今回は本編と違った形だけれど、共通してまた人間への描かれ方があるように思います。

 









 まず印象的なシーンの中で10人の確率世界による観測結果が表れるシーンがあります。
個人的に印象的だったのは最初は観測結果から「色付き」で名前に意味を持たせたシーンでした。

 ここでは確率世界による可能性のある、シスターとそのアルファベットチルドレンが描かれています。
 弱虫な私、冷静な私、強気な私、とたくさんの観測結果された私が出てきます。
 このときの、それぞれの特徴があることに対し、シスターのセリフ
「私はどんなでこぼこがあるんだろう」
というセリフは、自分への観測のセリフのようでとても印象的でした。

 
 その後、10人しか存在できないのなら、他の人を観測するためには殺さなければならないという
10人存在説により、多数決の結果からバトルロワイヤルになり、結果シスターが生き残ります。
ここでシスターは化物側と人間側と表現していて、自分の心の一面を理解していたのでしょうか。


 さらに何回も観測を繰り返すことになりますが、シスターは何回も生き残るために殺していきます。
シスターはここで人間から化物に成り下がってしまいました。
ここでの化物の所業が、後にゴースト現象での自己嫌悪を抱いた気持ちへと繋がったのではないでしょうか。





別案になりますが、アルファベットチルドレンが魔物化し
シスターにどのアルファベットチルドレンか区別できなくなったとき、

「ヘザー(白)」(~~~セリフ)
「イルマ?(青)」
「グレイス?(青)」
「・・・・アイリーン?(緑)」

というセリフ主の演出は名前に色付け区別したからこその、
シスターの混乱さが表現されておりうまい!とかんじました。







 アルファベットチルドレンも同様に化物、魔物となっていきます。
ある意味シスターと同様心が変容していき、ある意味「みんな化物側」になります

 本編では進化を肯定的に捉えていましたが、ここでの進化はむしろ自己嫌悪に
なりうるほどのものでした。
 おそらく、本編の進化は島地が他者と関わる、他者を求めることでの、共存性(?)のあるものでしたが
ここでのシスターとアルファベットチルドレンの進化は孤独でのものでした。
 ある意味人間へと戻るには化物からの退化でしょうか。

 





 その後ゴースト化現象により、めーたんに触れ、そして島地と相対し
自身の自己嫌悪、同族嫌悪に罪悪感を持ち、人間へと還りたい思いを持ちます。
 めーたんに触れ、めーたんの希望、心に触れることで
人間になりたい、世界に還りたいと願いしますが、無情にも戻れず








ビデオ放送の少女、他の確率世界の両親の研究を手伝っていたナタリアが世界滅亡をさせてしまったことに絶望し
(これで本編の少女の謎がここで解けましたね。)
同じアルファベットチルドレンに討たれることになります。
私が結局人類をめーたんも苦しめてしまった、と思い込んでしまったときの絶望具合は大きいと思います。







 そして最後に聖母になれなかった・・ママになれなかった・・と思いつつ
けれど誕生としてナタリアの名を与えます。
この後
ナタリア「おやすみ・・・ママ」
というセリフは、シスターからの最後の思いがナタリアに伝わった、という表現でしょうか。

 






本編のアペンドとなりますが、この話でも本編島地と同様世界を呪いつつ、本当は人間になりたかった。

人間を救済したかった!
 
 という主軸から様々な思いのある話だと思います。
ただし島地(ある意味めーたん)の場合は人間を全く知らず、だからこそ人間を知りたい純粋な思いからでしたが、
 ナタリアの場合は孤独による心の変容しきった状態から、めーたんに出会い、そして人間性を取り戻す話だったと
 勝手に思ってます(多分少し違うかもだけど)

結論 めーたんは天使



ナタリア自身の謎がある程度解明されたわけではありませんが、
なぜナタリアは主人公に本編であのような態度をとったのか、
めーたんに対してあれほどの思いを持っていたのかわかってくるものでした。




 このアペンドの後にまた本編をやってみると、ナタリアの視点からも物語を楽しむことができ、
一層世界観に入り込むことができそうです。

ぜひ一回時間を置いてプレイしたいと思います。


PS.タイトル画面のM はM粒子(だっけ?)のMでしょうか
   ロリめーたんは可愛いと思います