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merunoniaさんのアステリズム -Astraythem-の長文感想

ユーザー
merunonia
ゲーム
アステリズム -Astraythem-
ブランド
Chuablesoft
得点
85
参照数
286

一言コメント

題材は聞いていたけれど、良い意味で予想外なテーマで面白かったです。見方を変えれば評価が変わりそうだと思う反面、一途な物語だとも感じました。『一途ってなんだろうか』とも同時に悩まされたりもしました。作品発売時の感想が漁りたくなるような作品だったなぁって思います。とにかく姉さんが可愛いに違いない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

タイムリープ物と聞いていたので、『過去を変えて、悲劇の未来から幸せの未来を作るため』だと最初は思っていたんですよね。でも実際にプレイして全然違った。
むしろ『どの世界、どの時間でも姉さんである彼女の存在を愛している』一つの一途な愛の証明の物語でした。
同時に、一度見方を変えれば、評価も変わりそうな難しい作品だとも感じます。でも面白かった。

〇アステリズム本編で印象だったこと(こういうお話だったのかなぁっていう自分の解釈)
〇総評(感想垂れ流し)
〇2章終了時の感想メモ(2章が一番大好きだったのでその時覚書きしていた感想です)

の3つに分けて書いていきます。




まずもってアステリズムって結局私にとって何が好きだったんだろうと考えると
いやぁもう姉さんが本当に可愛い……。どの姉さんも可愛くてねほんと可愛いに尽きる。
で終わっちゃうんですけども、それだとあれなので、私が好きな点。
それは
『どの世界線のどのような彼女でも、つくもはその世界の姉さんのことが好きになる』
という一途な恋の証明を壮大な話でしてくれたことだったんだなって思います。


まずその前段階である、2章が何よりも一番大好きです。
2章の話の中核に置かれたのは、『彼女の救い方』ではなくて
『彼女を救う中で描かれる、名月との恋の物語』でした。
もうこの時点で、このお話って『救うため』のお話じゃないんですよね。
2章があってこその、3章からエピローグの流れがあるのだと思っています。
そのため2章を起点として感想を書きます。

〇2章で語られた同一視しない『別の存在』について
2章で語られたのは
『現代の姉さんではなく、1999年の名月を恋する』という物語でした。
(その時の詳細な2章感想は最後に貼っておきます)

序盤、姉さんは、つくものことを最初「お兄ちゃんと同一の存在」だと認識していたけれど、
つくものことを、『今のつくも』と認識して恋をして。
次に、つくもは、姉さんのことを、『現代からみた過去の姉さん』だと認識して避けていたけれど
姉さんを『1999年の名月』として恋する物語でした。

そして、
2章の最後では、現代に帰るか、この時代に残り続けるか、の選択を迫られる。
もし、2章序盤のタイムリープをしてきたばかりのつくもだったら、現代に帰るの一択。
なぜなら、つくもにとって『1999年の名月』は『姉さんの過去』の存在にすぎないから。
だから、自分は『現代の姉さんと幸せになるために』帰る一択。

でも、2章最後ではその認識も変わり別の愛情がわいていました。
それは、つくもにとって、姉さんの過去ではなく『1999年の名月』を『名月』として愛していた証拠。
(特に2章途中から名称が姉さんから名月に変わる演出がとても大好きです)

正史では未来に帰る選択をするわけですが、それは『現代の姉さん』と『1999年の名月』を天秤にかけて選んだ苦渋の選択。
こうした2章は、『過去の同一人物』を、別の経験を経ていくことで、『別の存在』として愛情を持つこととなる証明の物語として、私のなかでとても新鮮でした。
タイムリープすることで見せた2章の結末は、過去を変え幸せな未来を見せることではなく、むしろタイムリープしたことによる『別の存在』となってしまった『1999年の名月さんにも恋をする』お話だったことが、私の中で一番の衝撃だったのです。

そしてこの『見方』を基準にこの物語を振り返ると、色んな点があったんだなって思います。
1章では、姉さんは『お兄ちゃん』の存在を受け入れた上で、『弟であるつくも』を好きになる姿。
これは2章で見せてくれた、名月の姿やつくもの姿と同じでした。



〇別存在が同時に存在するがゆえの残酷さ
ただ、『別存在であること』を注目して扱う今作は、タイムリープ物としては残酷な面が多いです。
例えば、3章序盤のお話。

3章序盤、つくもが1999年の名月を救った後に現代に戻ってきたあと、そこには『別の存在である』、『姉さんと現代のつくもの幸せな姿』があり、自分はそこに居場所がなく絶望する姿はその一つでした。
自分が苦労して1999年の姉さんを救ったのにも関わらず、そこにいるのは、『その世界線を生きてきた』
つくも。自分が姉さんに幸せになる姿はない。

しかし同時にこの場面でもうひとりのつくもと対峙することで、『この時代の姉さんの隣には、この時代のつくもがいるべき存在である』と、『姉さんを守りたい』自分と同じ想いを持つ、『自分と別存在のつくも』の想いを聞いて考え直します。
同時に、自分の存在がいることで、『過去のお兄ちゃんにより、この時代の姉さんとつくもの心を縛る存在である(自分がいなければ二人は幸せになれる)』と理解。
自分はいない方がいいとして、博士の手伝いをするために1996年にタイムリープするのが3章序盤です。

他の物語もそうでした。1章でも2章でも『お兄ちゃんの存在に心を縛られる姉さん』の存在がありました。それは、タイムリープしたことで彼女の心を縛ってしまったがゆえ。彼女を苦しませた一因でもありました。

(上記の残酷性も、どの世界線でも『つくもは姉さんを守る』という想いが存在しているお話として必要だったことも理解できる今だからわかりますが、心を縛られたり、自分の居場所がいないと悲痛になるつくもの姿はつらかったです……。)

〇エピローグに繋がる物語
2章で代表として見せてくれた『別の存在』との恋の物語、
それは1章、3章でも、どのような存在(時代)としても恋に落ちる物語の一つの証明として描かれました。

それが何のためにあったのか、最後に繋がったのがエピローグでした。
以下エピローグより抜粋

──────────────────
博士:君にも──以前の二人にも、同じように強い想いがあったのではないか。
つくも(あぁ、そうだ、『俺たち』は同じ想いを抱いていた。姉さんを心の底から愛してた!)
(元の世界で姉さんが死んだときには、胸が張りさけてしまいそうだった。
だからタイムトラベルした。1999年でも名月を愛し、守り切った。
そして、その様を見てた幼い日の『俺』もまた、姉さんを愛した。
姉さんが『お兄ちゃん』と『九十九(1999年タイムトラベルつくも)』のことを
ずっと想い続けていようとも、
『自分じゃ彼らに敵わない』って判ってても、それでも姉さんのことを愛してたんだ!)
つくも:それぞれの記憶はゴチャゴチャになっちまってはいるけど──
この想いに揺らぎはない!それだけは確かだ。
(中略)
九倫:あの二人、うまくいくのでしょうか?
博士:桜塚白雲はどの時空でも桜塚名月を愛していた。
そして、その逆もまた然り。私はそれを、この時の流れのなかで何度も見てきた。
今回も例外ではないだろう。
──────────────────

1章から、『別存在のつくもの存在が姉さんの心を縛っていた』としても、
姉さんのことを愛したつくも姿を見てきました。
同時に『自分が別存在にとらわれようとも、つくもの姿を見つめる姉さんの姿』、
また『限られた時間だと分かっていても愛し合いたい』と強く願う姉さんの姿も見てきました。

もちろん最初のきっかけは、現代で暮らす『姉さんの想い』であったのは確かです。
しかし、2章をはじめ、姉さんとつくもの姿から、
『例え過去に縛られたりしようとも、その時代の『あなたに恋をして愛した姿』を見てきた物語。

難しい言い方っぽくなってしまいましたが
タイムリープを通して
『どのような条件であれ、別の存在に過去にとらわれようとも、記憶がなくても、
姉さんとつくもは同じ強い想いを抱いて、『あなたに恋する』という証明』
をした物語であったと思います。

タイムリープが物語の主題ではなくて、
この『目の前のあなたを恋する一途な愛』を証明するがために、タイムリープがある物語。
このような物語だからこそ、自分にはとても新鮮でした。

ですから、タイムリープだったりの仕組みの説明が省略されていたり、
3章からエピローグのつなぎが短いのはさほど重要でもないと感じます。
この物語はそこに重点を置いていないからです。

〇最後の手紙
この物語は、最後の救済として、『つくもの記憶の融合』により、
今までの姉さんとの記憶をすべて継承した形で最後を迎えます。
そして、姉さんは博士から『最後の手紙』を渡されたうえですべての説明を受け、
最後の再会の約束の場所へ向かいます。

最後の手紙の内容は何だったでしょうか。
3章のタイムリープした後の説明では
──────────────────
『──俺はもう姉さんとは会えない。
この先も会うことはない。
姉さんの傍には俺と同じように姉さんのことを想っている白雲がいる
もし姉さんにその気があるんなら、これからは白雲を見てやってほしい。
あいつと幸せになってほしい──』
──────────────────
つくも『ただいま』
姉さん『おかえり』

最後の会話はこの挨拶の掛け合いだけでした。
つくもは長い旅を経て、すべての想いを受けて万感の想いを込めたこの言葉に。
姉さんは、この手紙の真意を受け取った上で、過去のすべての存在に思いをはせてこの言葉に。

それはタイトル通り、星々がつながって一つの星群になる一つの物語でした。
最後はとてもロマンのある終わり方だったと思います。
面白かったです。


〇総評(ここからは言葉を崩します)
面白かったーーーー!
最初に書いた通り、タイムリープだってわかったから、
あ~姉さんを救うために、主人公が奮闘しちゃうんだな~なるほど王道
って思ってたところで本当に予想外でしたね。
ここまでタイムリープすら利用した、『姉さんとつくも』の一途な恋の証明の物語っていうのもね
なかなかない。良い意味で予想を裏切られたというか。

しかし、これ姉ゲーとして私勧められたんですけど、姉ゲーじゃないな……。
姉と弟の背徳だったりは確かに一つのきっかけではあったけれど、むしろそれよりは
タイムリープによる『過去による心の縛り』と一途な恋のお話だったりして。
いや姉ゲーではないなこれ。いや姉さんのお話なんだけども。
姉さんゲー?
姉さんと言えば、
キャッチコピーの
『姉さんに恋をして、姉さんも恋をして、姉さんと恋をした』
も誰が考えたんでしょうね……天才か?
まさしくピッタリな、姉さんに恋をして、姉さんも恋をして、
そして、最後に姉さんと恋をした(終結)物語としてねこれほどマッチするキャッチコピーもない。

しかしこのお話、一つ見方を変えれば一気に評価分かれそうでもありますよね。
まず、タイムリープやその『過去を変える』っていう点は重視されてないですし。
また、読み手である自分はどうしても登場人物を俯瞰しちゃうから、
つくもや姉さんが捉えづらいんですよね。
姉さんの一途な恋は『その時代のつくも』を対象にしているのだけども、
2章なんて、つくもは明確に『姉さんではなく、この時代の名月を愛する』
だったり、姉さんも『過去の憧れの対象から現在のつくもを恋する』ってお話が
ちょっと見方を変えてしまうと、一途さにぶれがでてしまうようにも見えますからね。
ジレンマなんですけども。

私の解釈だとそれは上記で述べたように
『どの世界線でもつくも(姉さん)は過去(未来)の幻影(思い出)に関係なく、名月(つくも)という存在に恋をする』
同時に、どのような存在であれ『つくも、名月が抱く想いは同じである』
証明のために必要だったと思いますが
全ての事象が見えてしまう読み手の自分には、
彼女たちを同一存在だとどうしても見ちゃうから、何とも言えないジレンマですよね。
上手く説明できない……うーん。

あくまで私の解釈なんであれですけどね。
とはいえこのお話をするためにタイムリープを持ってきたのがやっぱり面白かったなぁって思います。

そして九倫さんのお話も。
彼女も可愛かったですよね……。もちろん姉さんがメインのお話なのであれですが、
あのクール毒舌男嫌いキャラなのに、2章でこの時代に残るって答えた後
泣き出しちゃう姿、本当に可愛くありませんか……可愛い。
しかもしかも、エピローグで再会した後の、あの反応。
彼女はもう一生彼氏ができませんね……あぁそのまま姉さんとつくものよき友人として
そのまま独身でいてほしい……。
あと九倫さんに足コキHシーンを付けた人には本当に拍手したい。本当に最高ありがとう。

美々ちゃんは何とも言えないのが正直な感想。
もちろん彼女の√が要らなかったとは言わない。
けれど彼女の存在は、弟と姉という関係でも恋人関係になりたい!という踏み台として存在
していたようで不憫だなぁ……って。彼女本当に良い子なのになぁって。

と、こうこう色々考えちゃうくらいには自分にとって新鮮で面白かったなぁっていう感想です。
何より難しいこと色々書きましたが、やはり『姉さん可愛い!!!』に尽きるんですよね。
アグミオンさんの声の使い分けといい、声優さんのすごさも思い知った作品でした。
こういう良い意味で予想が裏切られる作品は良いね。面白かったです。
ありがとうございました。



以下は、私がプレイ中の時の2章の感想メモ。
残しておきたいのでそのまま張ります。やっぱり2章が一番好きだったなぁって。
────────────────────────────────────
1章の終わりがかなり精神的に辛かったので、可愛い姉さんが癒し……な2章。
念願のお兄ちゃんに会えた!っていう3年間の想いが詰まったラブラブアタックがめちゃんこ可愛かったね……

姉さん『つくも、わたし、『あなた』が好きよ。あなたがわたしを好きじゃなくなっちゃったなら、もう一度好きにさせてみせる。だから……覚悟してね?こうなったら意地でもふりむかせてみせんだからっ』

もう何枚もスクショして可愛い~~~~!!ってなるくらい堪能しました。


その中で個人的に好きだったり、覚えておきたいことをピックアップ。
2章は話のテーマがもう大好きでした。

〇『名月』との時間を選ぶか、『姉さん』との時間を選ぶか
まず私の中で何よりも予想外だったのが、この選択肢部分。
『現代(未来)』に戻るか、『今の時間(過去)』に残るか。
1章の姉さんの最期がとても辛かったと同時に、この物語は、姉さんを救うためにタイムリープするお話として、
何度も姉さんを救うために奮闘するお話なのかな……という予想でした。
(もしかしたら、実際には次の章からはそういうお話なのかもしれませんが)

ただ、むしろ2章の主題は、救うこと自体ではなく、『救った後どうするのか』だったのが予想外だったなぁと。
救った後、では自分はどの時間を大切にしたいのか、の決断を迫られるお話がとても面白かった。
以下は、その感想を覚えておきたいので、備忘録で流れについて整理。

そもそも、最初の目的は、過去に戻って、姉さんを事故から救い、未来を変えるため。
しかし、そのために過ごした1999年の名月との時間はかけがいのない時間。
『名月』との時間を取るのか、『姉さん』との時間に帰るのか。
ここを最後の選択肢で問われるとは思わなくて、一番面白かったなぁって。

その選択肢までの過程として、名月、主人公のつくもの『考え方の変化』が良かったんですよね。
以下に、この考え方を覚えておくために物語を整理します。

最初の目的は、確かに現代の『姉さん』を救うために来た1999年。
そして出会ったのは、『1999年の姉さん』
もちろん、主人公のつくもにとっては、現代の『姉さん』の過去の姿。
だから、その姉さんが、自分にラブラブアタック()をしてくる姿に戸惑ってしまう。
しかもそれは、さらに『過去のお兄ちゃん(主人公はわかっていない)』の再会だと思ってアタックするわけだから
余計に主人公は戸惑い向き合うことができず。

でもここで良かったのは、姉さんである名月の考え方が変化したのが良い展開だったんですよね。
名月も主人公と同様に、『過去のお兄ちゃん』にとらわれてつくものことが好きだとアタックしていたわけですが、
それは、今記憶喪失(ということにしている)つくものことを考えていないと気付く。

────────────────────────────────────
姉さん:
でも、わたしはそうじゃなかった。『つくも』も『お兄ちゃん』も一緒にしてた。
わたしはお兄ちゃんが好きだった。
お兄ちゃんと過ごした日々はかけがえのない思い出で、あの恋があったから今のわたしがある。
そう胸を張って言える。わたしはお兄ちゃんを決して忘れない。
……ただ、逆を言えば、お兄ちゃんはもう『そういう存在』になっちゃってたんだ。
ふと気づいたら……『思い出のなかの人』になっちゃてたんだ。
今、わたしの目の前にいるのは、お兄ちゃんじゃない。
今、わたしの目の前にいるのは……つくも
だから、わたしはちゃんと『つくも』と向き合うの。
『つくも』のことを知って、『つくも』を好きになりたいの!
────────────────────────────────────

いやぁこのシーンめちゃくちゃ印象深いんですよね。
この姿、かつて1章の姉さんとある意味同じ姿なんです。
1章の姉さんは、『お兄ちゃん』がいるからと、弟のためを思って、あえて見ようとしなかった。
でも、1章では、そのお兄ちゃんにとらわれている自分を認めながら、弟であるつくもに向き合う姿。
まさしく、2章の姉さん、名月も同じ姿を見せてくれたことが、めっちゃ嬉しかったなぁって。
2章の好きなところって、1章で見てた姿を2章でも同じなんだなぁって感じたことなんですけど、
まさしくその、好きなシーンの一つです。

そして、ここでつくもの番。
つくもは、さらに本当の『自分』を見てくれることに戸惑うわけですが、
嬉しい反面『現代に帰る』ことが確定しているため、
好きになったとしても、その後ひとりぼっちにしてさらに悲しませる。
だから恋人関係になることはできないと考える(もうすでにある意味親しい関係になってますが)
ここで、名月さんと同じように、つくもも『区別』する考え方を利用するんですよね。

つくも:
この時代の彼女は『名月』であって『姉さん』じゃない……。
そして、俺が好きなのはあくまで『姉さん』だ……。
=だからラブラブアタックは避けられる!

私のさらに好きな演出の一つで、このシーンの後、名月さんの名称が
『姉さん』ではなく、『名月』になるんですよね……。
1章プレイしていたときに、『姉さん』の名称ままなんだなぁこだわりかなぁ
ぐらいで考えていたんですが、2章プレイしてそのためだったんかぁ!!!
ってなったのがすごい印象的。

でも、この考え方似ているようで違うのは、『逃避』なんですよね……。
名月は受け入れたうえで向き合ったのだけど、
つくもは『向き合おうとせず』区別して逃げているだけで。
案の定、九厘さんとの誤解から、自分のことを向き合ってくれないことに傷つく名月さん。
自分のことを向き合ってもらえず振られるのは、名月さんにとってとても辛いことだったと思います。

でもでも!!!ここでね!!!高島君の活躍がマジでもう上がる!!!!
放送室暴露大会。
高島君の活躍で、つくもを挑発して、つくもの本当の考えを吐露させるシーン。
つくも:『名月が、俺が世界で一番好きな人であることに変わりはないんだから……!!』

ここでつくもも、本当の自分の気持ちに向き合えるシーン。
高島君の活躍がもう……ほんとお前……最高だよ……。
高島君も名月さんに恋心があっただろうに……このお人好しさんが……。

でこうして本当の意味で『この時間のお互いの存在に向き合うことができるようになった二人』
またさらに重ねて大好きなシーンがあるんですよね。
それが、名月からつくもへの言葉。
つくもは、名月へ、『自分はずっと一緒にいられることはできない。』
と伝えるわけです。(その後、またずっと先で再会できるとも伝えるわけですが)
もうその時の、名月さんの答えがとても好きなんですよね……。

────────────────────────────────────
名月:
『三年前……お兄ちゃんもそうだったんだ。
彼はもうすぐ遠くに行っちゃう人だった。
彼と一緒に過ごせる時間はごくわずかだった。
でも、わたしはその恋と向き合った。
短い間しか一緒にいられないからこそ、悔いのない恋にしたかったの
お兄ちゃんとの恋をわたしは後悔してない。
彼と過ごした時間をわたしは忘れない。
お兄ちゃんともう会えないのはとっても寂しいけど……そう思うのは、
それだけ彼との時間が幸せだったからだよ』

『幸せだったからこそ寂しいの。
だから、わたしはこの寂しさを大事にしたい。
それが、あの日に出したわたしの答え……
つくも、わたしはあなたのことが好きだよ。
つくもと過ごせる時間が限られてるからって、この恋をあきらめたりしない
時間が限られてるからこそ、一生懸命、恋したいの。
めいっぱい幸せを詰み込みたいの』
────────────────────────────────────


時間が限られていることを知ってなお、過去と同じような寂しさを知ってそれでもなお
つくも、あなたのことを私は好きになりたい、と願うシーン。
どれだけつくもは、名月さんに想われているのか……想いの深さが語られるシーン。
名月さんのことがさらに好きになる、めちゃくちゃ大好きなシーンの一つです。

こうして最後の決断。それは『名月と1999年に留まるか』『姉さんの現代へ帰るか』
最初のつくもだったら、考えることもなく現代へ帰るんですよね。
なぜなら、姉さんが本命の大切な人であり、1999年の名月=姉さんと同一視の存在だと考えていたから
でも、1999年を過ごしてきた今、姉さんと名月の存在は一緒のようで、
同時に『別々の愛情』を育んだ別の存在。
また、現代へ帰るということは結果的に幸せにしても、10年の長い間、彼女を孤独にしてしまう。

この葛藤は、1999年を見てこなければ、決してあるはずもなかった。
でも、一緒に1999年の彼女たちを見てきた、私自身も、ここがそう選択肢で来たのかぁ……となりました。

────────────────
胸の奥底から熱いモノがこみあげてくる
姉さんと過ごした最期の日々が、脳裏に次々と浮かんでは消えていく。
俺はやったんだ。姉さんを守れたんだ。
これで姉さんを失わずに済むんだ。
もう、姉さんがんな目に遭うことはない。
死ぬ事もなければ、入院することもない。
そもそも病気で倒れることもない……。
あの流星群の夜から先も姉さんは生きていける。
『現代』に帰れば、元気な姉さんとまた会える──

──『現代』に帰れば。
それは『この時代を去る』ってことだ。
『名月と別れる』ってことだ。
(中略)
この時代の彼女は、年上の姉さんじゃなかった。
同い年の恋人だった。
一緒に過ごした日々はほんのわずかだったけど、ほんとに幸せな時間だった。
かけがえのない思い出だった。
『姉さん』への愛おしさとはまた別の愛おしさが胸のうちに渦巻いている。
離れたくない気持ちが満ちてくる。
『この時代に残って名月くんと結ばれる──そんな結末もあって良いはずだ』

いつか博士が言っていた言葉が脳裏をよぎる。俺の心をかき乱す。
それは、なんて魅力的な提案だろう。
俺がこの時代に残ることで、たしかに名月とずっと一緒にいられる、守ってやれる。
名月を10年以上も待たせ続けずに済む。
────────────

改めて最初の感想に戻りますが、やはり私にとってはとても予想外だったのがここでした。
最初はタイムリープ物だと思って、姉さんを救う物語だとおもった。
けれど、2章で見せてくれたのは、救うだけじゃなくて、『姉さん(名月)に恋する』お話だった。

九倫:
なぜ未来へ帰る?
なぜこの時代に留まらない?
なぜ名月の傍にいてやらない?
貴様がいなくなれば名月が悲しむ。
10年以上もの長い月日を、寂しさを抱えて生きねばならなくなる。
本来なら人生でもっとも輝かしくあるべき期間を、孤独で埋めることになってしまう
貴様がいてくれれば名月も笑顔でいられる。寂しい思いをすることもない。
輝かしい日々を幸せな思い出で満たすことができる。
……明暗ははっきりしている。どちらを選べばいいかなど判りきっている。
そうだろう、つくも?

それでも現代へ帰る、現代の姉さんのために戻るのが正史だろうとは思うのですが。
ただ名月さんの10年の孤独を受け入れたうえで選ばなければならない
『未来へ帰る』意味合いがここまで変わるとは、2章当初には思いもしなかった。
そして同時にこの物語は『本当の意味で今の時代のあなたと向き合う物語だった』
これが何度も言うけれど、私が2章で一番面白かった感想でした。
好きを詰め込んだら長文になってしまった……


ここまでが2章の感想でしたが、むしろこの2章で見せてくれた姿を
全ての世界線をも巻き込んで彼女たちの恋の証明のお話にしていくとか……。
面白かったなぁって思います。
(こんどこそおしまい)