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merrinさんのサナララRの長文感想

ユーザー
merrin
ゲーム
サナララR
ブランド
ねこねこソフト
得点
83
参照数
240

一言コメント

7章+おまけの構成からなる、心が浄化される物語。各章が短いので気軽に楽しめる良作。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

人生に一度、願いが叶うチャンスが到来したら、どんな願い事をするだろうか。
いろいろな願い事が思い浮かぶだろうけども、実際にお願いするのはそんなにたいしたことのない、小さくてささやかなお願いなのかもしれない。
そして、人生にはいくつもの選択肢があるけれど、最善の選択なんてものはなくて、その選択をした自分次第の行動次第で最善にも最悪にもなるんじゃないか。
そんなことを考えさせられる、心温まる作品でした。

最初にこのゲームをやって思ったのは、チャンスシステムとナビゲーターという設定が面白いなあ、と思いました。人には人生に一度、願いを叶えられるチャンスが巡ってきて、それを知らせるナビゲーターという存在がいて、願いを叶えると今度は自分がナビゲーターとなり次の人へチャンスを届けに行く。そしてナビゲーターの役目を終えると、チャンスシステムに関わる一切の記憶を無くす。
この設定がすでに泣かせにきてるなあ、という印象でした。

私的に良かったのは1章、4章、5章、6章、7章です。(後半全部ですね…)
話の内容的には、1章と4章は似てるかなと思います。
チャンスシステムの対象者とナビゲーターという関係で過ごしていくうちに、お互いが離れがたい大切な存在になって、チャンスシステムの記憶を失って一緒に過ごしていた時間を忘れてしまっても、願い事の力によって再び巡り合って結ばれる。
チャンスシステムの対象者とナビゲーターという関係だった頃の習慣とか行動を、ふとしたときにしてしまって、「あれ、なんでこんなことしているんだろう、だけど何か懐かしい感じがする」というような演出はかなり泣きました。
5章は、話的にはそんなに重くないんですけど、苦手なことやちょっと嫌だなあ、と思うことを少しでもいいから頑張ってみよう、そんな気持ちにさせてくれる、気持ちが前向きになるストーリーでした。
死生観に触れているのは、3章、6章ですかね。3章のヒロインである三重野涼は、重い病気で、叶わなかった憧れの高畑くんとの学園生活を夢見て、6章のナビゲーターとして登場する糸川美玖も、明るい性格の裏には自身の重い病気と闘っている辛い状態にあります。(美玖の場合はかな恵の願いによって間接的に救われることになりますが)。常に生死の境を彷徨っているからこそ、三重野や美玖の言葉には重みがあったように感じます。そして、そんな境遇のヒロインを救うためにどうチャンスシステムを使うか苦悩する主人公。多少重い設定ではあるかと思いますが、終わってみると心が温かくなるような、そんな話だったと思います。
余談ですが、3章で宮沢賢治の『よだかの星』が引用されていましたが、あれの意味がいまいち分かりづらかったです。
星にたどり着こうとして燃え尽きるよだかと、重病で先の長くない涼を重ねていたのでしょうか?

また、本作のボーカル曲で特にお気に入りなのは、『希望 ~NOZOMI・明日への架け橋~』と『春風』ですね。OPである『希望 ~NOZOMI・明日への架け橋~』は爽やかな曲調にアニメーションのムービーが付いていて、キャラも可愛くとても好きになりました。『春風』は、ちょっと切ない片想いソングですが、聴くと優しい気持ちになれる。そんな曲だと思います。

クリア後に解禁されるおまけも充実していて、ねこねこソフトの他の作品の一部キャラも登場しますし、ねこねこソフトの作品をある程度やっている人ならおまけも十分楽しめるのではないかと思います。私は本作以外だとスカーレットしかやったことがなかったのですが、明人が出てきたときはテンション上がりましたね。

とにかく、各章が短くまとめられていてプレイ時間も全体的に長くないので、サクッとプレイして手軽に感動したいなあというときにはピッタリの作品だと思います。