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meroronさんの蜉蝣の長文感想

ユーザー
meroron
ゲーム
蜉蝣
ブランド
鴨mile
得点
70
参照数
355

一言コメント

評価の分かれ目はやはり心に沁みるか沁みないか、かなぁ。 全体主義に対する風刺が本作の主軸となっていると思うのだが、これが刺さる人って今はどれだけいるのだろう。 本筋はそこではないのかもしれないが……。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

本作では主に3人の主要人物が全体主義に囚われている。
主人公である吉野征治、その盟友である十波、そしてヒロインの浮柚。

正直に言ってしまうと自分は彼らの信念にピンとこなかったのだ。
いや、そのようなことを今まで一切考えなかったわけではない。彼らのような全体主義的な考えを抱いたことは確かにあった。

けれども、社会に飲まれるにつれてそのような考えは霧散してゆく。
現代のほとんどの人は意識せずとも個人主義ではないだろうか。(というより自分や家族のことで精一杯ではないだろうか)

だから彼らに対して何をそんなに悩む必要があるのだろう、と思ってしまう。
いや、そういう時代だから悩んで当たり前であり、そういう人がいても不思議ではない。
けれども、我々はそういう時代を身に感じる事ができず、それを身近に感じることができない。
故に、この3人の心情との隔たりを強く感じてしまう。

主観としての文章を読んでいても没頭することができないのだ。
恐らくだが、この没頭度によって本作の評価が大きく変わってくると思う。

ただ、本質はそこではなく明治時代において苦悩する人間を描いたことが本作最大の持ち味なのかもしれない……。
けれども、やはりキャラクターに没頭することによって面白さが変わってしまう自分は深く入り込むことができなかった。


続いてテーマを抜きにした話をしましょうか。
ルートとしては2つありますが、まさかどちらも修羅の道だったとは(白目

これには結構驚きました。 虚を突く話運びでしたし「おっ」ってなりました。
自分としては復讐者ルートの方が好きだったのでまずはアンジェリカルート(というより十波ルート?w)の方から。

それまでの共通部分は後半2ルートのための準備。 プロローグでした。
そして十波と浮柚は死に、十波と行動をする征治……。
アンジェリカ自体はそれなりに好きだったのですが……このルートであかんな、と思ったのは弥十郎。
血気盛んな性格が悪いとは言わないし、こういう人間が話の展開い必要なのはわかる、わかるが……こいつを村長として認めた周りの人間が理解し難い。
感情を抑える術を持たず、アンジェの静止を振り切って自分勝手な行動ばかり。
結果的に事なきを得るものの、これは天の神によって運良く助けられたとしか思えない。
(最終的には死んでしまったが、それが征治と助けたことに繋がったりでかなり優遇された展開だと思う)

自分は問題児は嫌いなわけではないし、性格悪いキャラが好きだと思うことも多々ある。
けれども周りの対応に違和感があると、唸ってしまう。 そしてそのキャラに対していい感情を持てない。

アンジェのやろうとしていること、彼女が最後に辿り着いた信念など、終着点はとても良いと思ったのですが弥十郎の存在がどうもプレイ中のイライラを高めていたような気がしてならない。


そしてもう一方の復讐者ルート(というより浮柚ルートなのか結那ルートなのか)
これも最後の終着点自体は良いと思いました。 やはり最後の十波との決着での台詞はなかなか深いものがある。
(明治を浪漫と言うところです)

けれども、問題となるのは結那ちゃんの主観で動く推理パートでしょうか。
何が問題かって、プレイヤーはその時何が起こっているのかはもう知っているんですよ。
十波の手によって村は焼かれ、征治はそれの復讐をしようとしているということを。

細かい部分は説明が必要とはいえ、その既に知っていることを改めて推理して追う……というのが少々気だるさを感じてしまった。
そういったミステリー・サスペンス要素を入れるのであればプレイヤーも巻き込んで煙に巻いたほうがよかったんじゃないかなー……と。
その過程を経て逞しくなる結那ちゃんを描くのがメインだったのでしょうが……。

だからこそ前半の推理部分の方が読んでて面白く感じた。(祟りの正体を探る部分)
プレイヤーに「え、あの放火って吉野さんがやったの!?」とまで勘違いさせることができれば、自分もハラハラしながら読み進めていたかもしれない。


という感じで、話の根幹部分はよくまとまっていたと思うのですが、エンターテイメントの部分で物足りなさを覚えました。



最後に、話以外の部分での感想。


平岡氏の絵がめっちゃかわいいですね!!!!!(急にどうした
特に浮柚さんの立ち絵! あの笑った顔がめっちゃかわいい!!!
め、雌の顔じゃ~~~~、これは雌の顔やで~~~。

浮柚さんの絵は新しく描き直したのだろうか……?
人物ごとにクオリティの差が感じられたりしてしまうのだが、やはり後半の絵のほうが可愛らしい。
けれども浮柚さんだけは前半も雌のk……ゲフンゲフン……可愛らしくて渾身の立ち絵だったのかなと。

うん、平岡氏の絵は是非ともまた見たいです。
絵買いリストに入るレベルでGoodでした。 ありがとうございます!