作者いわく「集大成」として作られた大河歴史浪漫ファンタジーSRPG。 本作はゲームであり、またファンタジーであるが、自分がやった作品の中では圧倒的なリアリティがあり、現実の重みというのをとても感じさせた。 「戦争をするな」「殺戮兵器を使うな」と言葉で言うのは簡単だが、それを真に伝えるのは難しい。 グレイメルカの最大の見所はそういったことを言葉で教えられるのではなく、物語を通して感じさせてくれることだ。
Ver0.7時点で一度クリアし、Ver1.0になってから完成してもう一度再クリアいたしました。
ゲームプレイの利便性は格段に向上し、グラフィックも美麗に生まれ変わりました。
個人的にクレミトやマテルは前回の方が好きなのだけど、ファテナ姫とかグレミア双子の美人っぷりがすごい。
ハッキリ言って隙のないSRPGです。耳に残る名曲もありながら戦闘アニメーションはちゃんと動き、絵も上質でありながらなによりシナリオが素晴らしい。
エンディングもちゃんとキャラ全員のエピローグを完備しており、読後の満足感も随一。
ここまでやる作品ってなかなかありません。
内容に関してネタバレ無しで言及すると、本当に一言感想の通りなんですよ。
クレンフゥやカピンのようなギャグ要因の馬鹿はいるけれども、それでも現実的な側面が強い。(理由は後述)
プレイ時間は長いけれども、名作を求める人にはぜひともやってみてほしい作品です。
ノーマルモードならまだ楽にクリアできるはず……。
以下、少しだけネタバレ含む内容の感想。
個人的なブログの文章の大半そのまま引用する形となります。
同じ文を何処かで見かけた場合は本人なのでご安心ください。
どこまでいっても人間の物語だった。
ファンタジーな世界だが、ファンタジーじゃない。
唐突に未知の敵が現れるわけではなく、戦う相手は人同士。
それぞれの人物像や展開模様に繋がりがあり、作者の無理矢理な意図を感じさせない作りは見事。
それはまるで、ひとつの歴史を見ているかのように。
グレイメルカの展開っていうのは何も驚くようなことはほとんどない。
どれも、我々がいる現実の歴史上での出来事を彷彿させるような展開で構成されている。
けれども面白い。 だからこそ面白い。
なにより考えさせられるのはタイトルにもなっている「グレイメルカ」だ。
細菌兵器としてのそれは、現実でいうところのベトナム戦争の枯葉剤、第二次世界大戦での原爆に近いものを感じさせる。
また、戦争以外で言うと水俣病も思い出す。
細菌兵器を用いない戦争に関しては、「戦争をしてはいけない」という気持ちよりもやるせない気持ちのほうが強かった。
敵を殺すのも、戦争を仕掛けるのも多い作品だが、それにはそこに至る理由というのがしっかりと描写されており一言に否定できるものではなかった。
ただただ、悲しい。 「戦争をしてはいけない」というより、「戦争は悲しい」というのが彷彿させられた。
(ハルカのデミライトを守るための人殺しや、フィアカルタの復讐心、カレンケェスの怨念など)
ただ、はっきりと、細菌兵器のような後世にまで影響をおよぼすようなものは決して認めてはいけないと強く思った。
そして、復讐のために利用されるキルスイハと、それと対になるハルカの立ち位置が絶妙。
未だに現実で解決できていない様々な国際問題がこの作品で浮かび上がってきていたのだ。
そういった面で言うと、人種の違いもとても良く描き分けられていたと思う。
ビジュアル的なところでは髪の色。 性格的な面でもそれぞれ国によって特徴が異なっているのがはっきりと分かる。
そういった細かいところが本作のリアリティをより強めていく。
確かに突っ込みどころはいろいろあるかもしれないが、そういった無粋な気持ちが沸かないほどに熱中してしまった。
逆に、それ故の欠点も確かにあった。
あまりにもの深い重みにより、爽快感というのはほとんどない。 しかしそれは作品のテーマとしては正しいのかもしれない。
敵に勝っても、復讐ができても、ただただ悲しいのだ。 戦いの先に見えてくるのが悲しみしかないというのが物語を通して伝わってきた。
けれども、過ちを繰り返さないためにもグレイメルカを通して我々は学ぶことが出来る。
命の大切さを物語で描き切った本作を傑作と言わずして何を傑作と言えようか。