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meroronさんのローズガンズデイズ ラストシーズンの長文感想

ユーザー
meroron
ゲーム
ローズガンズデイズ ラストシーズン
ブランド
07th Expansion
得点
92
参照数
983

一言コメント

うみねこの呪縛をおいて本作をプレイすることが出来なくて2年近くが経過しました。ようやくプレイしましたが、自分が他作品で面白いと感じた要素がふんだんに盛り込まれていた。うみねこの呪縛から抜けれない元ファンの方がいたら、漫画版読むことをオススメします。自分はそれでようやく本作を素直な気持ちで読むことが出来ました。中盤以降だけネタバレ感想。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ローズガンズデイズは読むの怖かったんですよ。
うみねこの惨状を差し置いてプレイする気にはどうしてもなれなかった。
少ない感想を読む限りでも「あ、これは面白いんだろうな」と思ったからこそ、うみねこを差し置いて本作を楽しむ訳にはいかない。

自分のような、ここまで面倒くさく拗れた元ファンって少なくないんじゃないかと思います。
ローズガンズとは関係がありませんが、うみねこを素晴らしい作品にしてくれた夏海ケイさんには感謝してもしきれません。
かつて原作EP8の出来に失望し当時65点(現在は基準変更により55点)をつけた自分でさえも、90点を超えるかと思えるまでのEP8を描いていただけました。

完全にエロゲーでもノベルゲーでもない話をしてしまいましたが、もしこれを目した元ファンの方がいれば興味を持っていただければ幸いです。




さて、ローズガンズデイズの話をしましょうか。
推理とかはなく、ただただ純粋な一本道の物語。
エンターテイメントに特化していますが、このローズガンズデイズはただのエンターテイメントに終わらない様々な要素を含んでいます。

まずキャラクター。魅力的なやつらが多すぎます。
全エピソードを総括するメインヒロインであるローズ・灰原は、最初こそ青臭い夢想家でしかないが、1948にもなると威厳を持ち彼女の真摯な言葉に心打たれる方も多いはず。
また各年代の主人公であるレオ・獅子神、ラプレンツェル、アラン・新巻、ジャンヌ・天川の魅力も随一。
甲乙付けがたい良さをそれぞれ持っており、またそれ以外のキャラクターも良い味を出しており群像劇として文句ないレベルの出来になっています。

ひぐらしは全然でしたが、うみねこではこのキャラクター使いの上手さが発揮されていていました。
竜ちゃんの本領って次々に新しいキャラを出してくるけれども、ちゃんとキャラ立てをして魅力を持たせることだと思うんですよね。
それが、このローズガンズでは存分に発揮されています。
ヱリカ狂である自分はヱリカを超えるまでのキャラはいませんでしたが、それ以外でしたらうみねこを圧倒しています。それほどまでにキャラクターに生命力を感じた。
なにより自分がこれまでにプレイした中でも、ガブリエル・鏑谷の邪悪さが凄まじい。
後述のキャラ個別完走でも書きますけれども彼の本作での功績というのは凄まじく、悍ましく憎たらしくもあり許すことが出来ない絶対的な存在であると同時に魅力的なキャラであることも理解できる。

時折BL的な台詞は確かに見られますが、実際の男同士の距離感はそこまで密接したものではないので個人的には程良かったです。
(アラキーとかリチャサイとか、相棒っていうのはれくらいの距離感が普通じゃないかな。
ミゲルは恋慕にも等しい感情に感じるし、ガブリエルさんはもう性別超越している感あるけど……)

ただ少しでもそういう要素があると駄目な人にとってはやっぱり駄目だと思いますけどね。
作中での処女率は著しく低いだろうし初恋=初体験なんて皆無にも等しいので、一般的な美少女ゲーマーにはオススメできません。
逆にいろんなものを好み、雑食性のある人には文句ないレベルでオススメできます。


そう、いろいろな要素と言いましたがキャラクターだけではないんですよ。
各年代のドラマチック性もさることながら、現実の歴史を準えたような民族間のテーマ性が素晴らしい。
個人的には、これらは説教臭いというよりは淡々と事実を書いているだけのように思えました。
1948年の醤油戦争の読み応えは随一。マネーゲーム要素などもあってかなり好きなエピソードです。
日中における謝罪の意味の違いなども、すごく納得できます。
日本の良い部分も悪い部分も書き、中国の良い部分も悪い部分も書いており、最近の07th作品のプチ海外ブームが納得できるような国際色を感じられます。
自分が見た限りでは決して、どちらに偏っているわけでもないと思いました。

その上での、マダム・ローズの決断がある。
かの一部で話題となったフリーノベル『悪の教科書』と同様です。
どうしようもならない現実を描いたうえで、作者としての結論を描く必要がある。
有耶無耶にするだけよりよっぽど良いと思います。
なによりローズは言っているじゃありませんか。「正しいのかどうかなんてわからない」って。

また、うみねこからの『恋は素晴らしい』のト書きはイラッとする人もいるでしょうが、恋をしたからこその悲劇というのも描かれているから個人的にはそこまで嫌味に感じませんでした。
文章ではああ書いているけれども、恋したからこそあそこまでの悲しみに溢れた展開ですからね。


熱い要素もあります。1947年の終盤はもちろんのこと、1948年にワンダリングドックが活躍していく様も燃えます。
鬱要素もあります。1949年の鬱度は他の作品と比べてもトップクラスのもので自分はかなり後遺症ありました。
1947年と1948年があったからこその落ち込みようなのですが、キャラクターに感情移入できる人の大半はやられるんじゃないかと思います。

あと、ローズガンズデイズが過去作と比べて良くなった点として、戦闘シーンの文をまるまるカットして漫画的CGの演出をしたことでしょうか。
自分はミニゲームとしてではなく、オート演出でやっていたのでより強く感じましたが、ひぐらし・うみねこでのお世辞にもあまり上手いとはいえない竜ちゃんの戦闘描写文が丸々なくなり一枚の絵だけで表現することによりテンポが格段によくなっています。

本場の戦闘ノベルに比べると物足りなさはありますが、肉を切らせて骨を断つ。
文章形式がノベル形式からADV形式になったことも相まって、今までより数倍テンポが良いです。
このテンポの良さも本作で褒めるところでしょう。とにかくダレない。どんどん読ませてくる。
(SEは時折うるさいけど)


とまぁ、褒めちぎってますが不満がないわけじゃありません。
ラストエピソードがもうちょっと面白い展開作れたんじゃないのってことと、各キャラのアフターストーリーが一切描かれていないことです。
逆にそれくらいしか不満点がなく、1947~1949年までは絶賛したい程の出来だと思いました。
1950年も、それまでの過去作と比べると超展開でもなく変に暈したりするわけでもないので及第点ではないでしょうか。


ローズガンズデイズの話を読むと、竜ちゃんもこの数年間大変だったんだなぁと感じるところがあります。
だからこそここまで真に迫って書けるのだろうなと。
今でもネットで検索すると嫌な話が出てきたりしますし、当時の07thはゴダゴダの嵐だったことは想像するのに容易いです。
けれども、このローズガンズデイズで放った言葉は、彼の魂が篭っていると信じたい。


話は変わって。
今度の新作で不安なのはまた竜ちゃんが絵をやることです。
ローズガンズの売れ行きが悪くて勘違いしてるのか知りませんが、ローズガンズが売れなかった理由は間違いなくうみねこの反動であってそれ以外のなんでもありません。
うみねこが漫画版のような終わり方をしていればふつーに大ヒットしていたタイトルだと思いますローガンは。

もう資金がないのか、自分の絵じゃないから売れなかったと勘違いしているのか知りませんが、ローガンでの漫画家さんたちの採用は紛れも無く07thの進化系です。
うかうかしている間に同人界隈全体で面白い作品が次々に生まれ、創意工夫しています。マンパワーだけで生み出すのはもう苦しい時期になってきています。
あなた、作中で金を回して雇用することの大事さを説いていたじゃありませんか!
金を動かしましょうよ! 力とコネクションがあるんだから良い物にしましょうよ!
うみねこ漫画版やローズガンズデイズを読んで確信しましたが、彼の絵ではプロの技には到底勝てない。

BGMの方も、うみねこの頃に比べて作曲者が減っていて残念でした。
特にzts氏の功績はあまりにも大きかったと思うので。
ローガンでは六弦アリスが特に良い働きをしており、界隈でもトップクラスの上質な音を提供していましたが、今までのコネクションを大事にしないと作中の方々のようになってしまいます。
それを知っているからこそ、今作が出来上がったのかもしれませんが。
うみねこでの既存メロディの使い回しも目立つし、ちゃんとお金を渡して時間をかけてまた新しいものを依頼しても良いのではないでしょうか……?


ともあれ、自分はローガンは本物であったことを伝えて回るだけです……。
それ以外については結局、彼自信の作品を読んでいくしかないのだ。




さて、魅力的すぎるキャラクターたちへの感想でも書こうか。
それと同時に話の内容のネタバレ感想となります。



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・レオ・獅子神
圧倒的な安心感とイケメン力。
いやこれもう男でも惚れますわ。
いわゆるTUEEEE系主人公に分類されるんだけど出番があったのがSeason1と4だけってのが良いね。
困ったときの最終兵器のような立ち位置が絶妙なバランスをとっている。
どんなピンチでも落ち着いている。のに過去の戦争に引きずられているところが妙にそそるのよね。

まるで乙女ゲームの攻略キャラのような佇まいは老若男女を虜にしてしまう。
ただ、シナリオ的に残念なのはSeason4でのローズとの再会をもっとドラマティックにしてほしかったな、と。
作中の再会って結構あっけなくて、劇場的になって臭くなるだろうけど、もっと感動的にしてよかったんじゃないかな。
そういった意味では、ひぐらしの徹甲弾のようにね。レオほどの男だからこそ、あれくらいの大袈裟感あっても大丈夫だったんじゃないかな。



・メリル・田無
Season1での持ち前の明るさは作中屈指の癒やしキャラでした。
ひぐらしの鷹野というよりは、うみねこのラムダデルタを髣髴とさせるよね。
最後までローズの味方でいながらも、馬鹿だからと自分の無力さに葛藤する立ち位置は身近に感じる人も多いのではないか。

最終的にウェインの嫁さんになったのってメリルだと思うんだけれども、どうなんでしょうかね。
終盤の「馬鹿はやめよう」のところとかすごく好きだしお似合いだと思うのだけれども。



・ケイレブ・敬礼寺 & ミゲル・倉敷
ローガン3大人気CPの一角。
ケイレブさんはそこまで賢くないけれども、確かなカリスマを感じるんですよね。
宗一郎さんの立ち絵も本当に格好いい。正直竜ちゃんの絵じゃここまでの大物感は出せない。
Season1の終盤はとことん暴走してしまうけれども、ふと我に返ったような「それまでだッ 倉敷一等兵ッ!!」でつい涙を流してしまう。

そして、なんだかんだでローズとの理想は同じなのがSeason1の安心感に繋がっています。
横暴だけれども、彼のやったことは非道だけれどもそれがあったからこそ1948年のユートピアが実現できたって筋書きがとても良かった。

ミゲルの感情は明らかに忠誠を超えて恋慕に感じるんだけれどもそれをどっしりと受け止めるケイレブの大物感よ。
そこまでホモ作品に傾倒していないはずの自分でもこの2人の組み合わせは良いと思ってしまった。
ミゲルが乙女すぎるんだよな~w 最初はゲス野郎かと思ったのに後半に行くにつれなんか可愛く思えてくる。
特にケイレブが危機の時に必死になるのがポイント高い。あとはウェインくんのことを認めたときに、彼にも筋が通ったものがあるんだなと実感した。

ケイレブには死んだ奥さんもいるし、アマンダさんとの濡れ場的なシーンを匂わせたりもしたけど、ミゲルは動じない。
ただただケイレブの忠実な兵士でいようとするのが、男同士の深い絆を感じてよかった。
別に交わってはいないけれども、男女の絆では見られない同性同士で通じ合うものがよく分かっているな竜ちゃん。
人気なのがよく分かる2人でした。あとのSeasonで登場するのもおいしい役どころ。
メインキャラたちより全然幸せそうだよなこいつら……w



・李梅九
時には味方、時には敵と、一筋縄ではいかない難敵としての立ち位置が作品全体に緊張感をもたらしていました。
一番敵にしたくないタイプです。
Season3では雪ちゃんが彼の弱点であることが分かりましたが、それでもキース狙撃の場面でよく耐えたと思います。
まぁあそこでのMVPはアランだと思うのですが、彼も人間であったことがよく分かるシーンでもありました。
しかしその後は仕返しとばかりにガブリエルとの対談で鋭利な言葉のナイフを投げたり、米軍内の自滅を狙ってバトラーの妹を殺したか攫ったかを匂わせるような言動にはゾクっとしました。
やはりこの人は敵にしてはいけないタイプなんだな、と。
あそこでのテーマって、やられたからやり返すってのは不毛である……ということのはずが、無関係なバトラー妹をやってしまうのは正直怖いと思った。

ただし民族の壁を超えての、アランを認めて「弟」と呼ぶのはやはりグッとくる。
こういう絶妙な関係性を描くのが今作の竜ちゃんはものすごく上手いのよな~~~。
梅九はあくまでも中国人としての人々を同胞として扱い、それを守ろうとするがアランに対する感情は同胞を上回って兄弟となっている。日本人であるにも関わらずだ。

それはアランが決死の覚悟で行動をしたから。そしてそれに梅九も応えた。
ローズガンズでかなり好きなシーンのひとつです。



・王元洪
小物と言われることは多いですが、いやいや……強敵だったと思いますよ。
金龍会のバックがあったからこそ、あそこまで上手くやれたんでしょうけれども彼の策略は確実に23番区を追い詰めていました。
その嫌らしい言動は本当に読んででムカッとするし、それこそ彼に乗せられているだけだとわかっていても感情が怒りに満ちてしまう。
竜ちゃん、こういう嫌らしいキャラ作るのも上手いよね。

正直、竜ちゃんの絵じゃなければ大物感でた気がするんだけど、嫌らしさは竜ちゃんの絵だからこそ、ってのはあるかもしれない。
にしても梅九への「ボクのものになってよ」発言はキモかったな~w いやキモい!w
王のキモ攻めシチュ探しても需要なさそうで残念だ!(キモいもの見たさ



・小蘭
数少ないド直球癒やしキャラだったのではないでしょうか。
戦う姿はカッコイイし、桃山ひなせさんの立ち絵は可愛いし、餅をくっちゃくっちゃ食べてるところとかはホント見ていて和む。
生まれ考えていろいろされた後なんだろうけれども、とにかく義理人情に厚い子だったなと思います。
民族間の隔たりとかも気にせず、彼女は境遇や人柄を見ています。
ツェルへの情もそうだし、アランとの軽快な掛け合いもそう。
暗殺者でありながらも一番根が素直な子だったのではないでしょうか。



・李雪
妹属性もつだけで死亡フラグが立つのはローズガンだけで十分よ……。
彼女もすごく良いキャラしてたんですよ。色んな恋をしてって言うように、初恋=初体験思考じゃないし萌え萌えゲーマーにとってはとんでもないキャラかもしれないけれども。
民族間の溝を感じる中ちゃんと前を見ようとしていて、この子ええ子すぎでしょ……。
普通の女の子だし、普通に良い子なんですよ。だからこそ、無慈悲に狩られる瞬間は見ていて心苦しかった。

もっと色んな描写があって、兄の梅九やアランとの絡みがいろいろとあるはずなのに。
彼女は将来の23番区の将来を背負う有望株だったのに。

それが無慈悲にも失われるから、Season3はあまりにも残酷すぎるのだ。



・アラン・荒巻 & キース・如月
キースはやってはいけないことをしたし、責められるべきキャラクターなんだけれども、どうも嫌いになれなかった。
お前らちゃんと話しあえよ! とは思うんだけれども、アランが変にキースを理解していて「言ってもわからない」と思い込んでいるのが駄目だよね~。
キースとアランの対比はすごく上手いなぁと思った。復讐に駆られるキースと、駆られないアラン。
アランは、なんとか雪ちゃんを守れたからこそだと思うが、雪ちゃんの死亡シーンで泣かずに冷静に判断できるあたりアランの感情ってのはどこか麻痺してるのかもしれないとは思うけど。
間違いなくSeason3で最高のファインプレーをしたアラン。
彼が身を呈して雪ちゃんの元へ駆け寄ったから、梅九が踏みとどまり戦争を回避することが出来た。

雪ちゃんはもう死んでいると分かっているのに、あそこで飛び込めたのは誰よりも雪ちゃんの願いを理解し、それを守ろうとしたからなんだよなぁ。
あそこのアランは男前すぎて一気に好きになりましたね。

だからなんであそこで死んちゃうんだよおおおおおおおお!!!
ローガンは未来を繋げそうな人ほど死んでゆくから鬱るんだよなぁ……。
でも眠ってるだけの可能性もあるよね……明言されてないよね………。
あそこは竜ちゃんにとっての「好きに解釈してください」ってことなんだろうけど………。



・ラプレンツェルと愉快な仲間たち
やっぱ竜ちゃんうめぇなぁと思ったのはこのワンダリングドックの面々のキャラクターたち。
新キャラって、ギャンブルですよね。魅力なかったらそれまでのキャラの出番奪うことで面白さとして致命的になる。
けれども彼らの魅力は伝説の7人となったプリマヴェールの面々に劣らないどころか、個人的にはそれ以上に好きなときもあった。
とくにオリバーのツェルに対する信頼がすごく愛おしくて、プライドの高い彼がまるで忠誠を誓う騎士のようにしているのが萌えポイント高すぎる。NLでは一番好きな組み合わせでした。
ツェルは過去に酷い仕打ちを受け、多分下種な想像をするならば色んな男に犯されてもいるでしょう。
それでも強く気高い彼女の姿は輝いて見えるし、それでも彼女を受け入れようとするオリバーの器の広さが好きだった。
だからこそ、なんであそこでオリバー死ななあかんねん………。

いや、分かるのだ。あそこでオリバーが死んだのは、圧倒的なまでの理不尽さを演出するため。
本当に死ぬ必要性皆無なのに死んだ。あそこで死ぬのが無関係なキャラだったら、我々はリチャードやモーリスの行いをそこまで非難する気になれないだろう。
オリバーだからこそ、あの作戦は最悪なものだったと思える。

だからといって、Season2でのあの輝きを忘れられない自分にとってはつらすぎるんですよ。
せっかくそれぞれが決意を秘めて別れるあのラスト。感動的でした。
それでツェルが戻ってきたのに、オリバーは死んでるというあの呆気なさはあんまりじゃありません!?
なんて報われねぇんだよ………。
あのSeason2はオリバーとツェルのボイーミーツガールとしても良かったし、落ちこぼれが出世してゆく成長物語としても良かったのだ。

彼らには間違いなく未来があったし、オリバーとツェルももっと仲を深めていくはず……はずだったのに………!!!!!
ああ、元凶であるガブリエルが憎たらしい。
この作品を通して憎しみを感じさられてしまっている。これでは思う壺じゃないか。



・舞扇ファミリー
本作で最も被害者だったのではなかろうか。
Season1の時からリチャードさんもステラさんも好きでした。
苦労役でローズと意見が対立することは多く、けれどもしっかりとサポートをする彼は間違いなく伝説の7人のうちの一人。
ローズの主張もリチャードの主張も、どっちが極端に駄目だというわけではないと思うんですよね。
当時の感情を考えたら彼のように思うのも無理はない。(外国人共存不可能説)
けれども、彼は一線を超えることはなかった。あの事件までは。

ステラさんも好きだったから大正義作戦はショックでしたよ。
信じられないくらいに無慈悲に遂行されていって、まさか撃つはずないと思った矢先に撃たれる裕司くん。

それだけでも信じられなかったのに、本当に死んでしまうステラさん。
それまでなんだかんだで死人は出てないので衝撃的でした。

ただ、リチャードさんは憤るもののその時点では復讐の鬼とならない。
自分としてはここで耐えただけでも大したもんだと思うのに、更なる追い打ちのプリン事件……。
いや、あれはね……。 寒気したし、この展開を実行するガブリエルもとい竜ちゃんの正気を疑ったレベルですよ。
加えて度重なる証拠の群れで、ここまでされて耐えられる人っているでしょうか。
オリバーを間接的に殺したのは紛れも無くリチャードだけど、それでも彼のことを悪く言う気にもなれない。

それほどまでにあの追いつめられ方は酷すぎる。
うみねこが「魔女を否定し続けられるか?」と挑発していたのならば、ローガンは「復讐をせずにいられるか?」と挑発してきてる気がする。

サイラスは最後まで味方でいてくれた親友だったわけで、彼にとって唯一の救い。
けれどもやっぱり、7人の侍をイメージしたかのような、伝説の7人が最後でああやってぶつかるのは見ていて辛かった。
ローガンが鬱作品だと小耳に挟んではいましたが、正直甘く見てました。
ひぐらしの祟殺し編以来の、ドン底具合を味わいました。 それにひぐらしと違って最終的にハッピーエンドならないから余計にたちが悪い。
最後まで、自らの手で仇を討てない哀れな人生であったリチャード。
オリバーを殺したのは許されないが、どうか彼に、救いをください。



・ガブリエル・鏑谷
何から何まで信じられない。ここまでの吐き気を催す邪悪は久々に見た。
鷹野三四も、ベルンカステルも、このガブリエルに比べたら随分優しいなと思えた程に、この男の醜悪さは尋常じゃない。
本当に憎たらしい。術中にはまってオリバーやアランやリチャードが好きになってしまった自分にとって、ガブリエルは許すことの出来ない存在だ。
だからこそ、このキャラメイクの上手さには感嘆せざるを得ないのだ。

本当にこいつさえいなければ、誰も死んでいなかったはずなのに。
こいつさえいなければ、胃が痛い思いをせずにすんだのに。
こいつさえ……こいつさえ……と、ここまで一身にヘイト集める悪役は見たことがない。
なんでそんな命令が下せる? なんでそんな事できる? と、疑問の尽きないキャラクターだった。
彼の動機はちゃんと説明しているのに、なぜその苦しみを他人にまで与えるのか。なぜそこまで傲慢でいられるのか。
神と天使と正義の名を使い行われる邪悪な行為という矛盾模様が、芸術的とまで言える歪みとなっているのが凄まじい。

そんな彼はローズガンズ屈指の人気キャラです。いや、憎たらしいけどこれ人気出るのは分かるわ……。
嫌だけど、最も印象残るキャラは? って聞かれたら間違いなくガブリエル・鏑谷だもん。

けれども、最後はあっけなくて……勿体無いなという気持ちも残る。
なにより、彼がレオと垣間見えた時にどういう物語が動くのかがすごく気になった。
最強の男と最凶の男。 「誰も悪くないさ」とリチャードに語りかけたレオは、この男を見てもなおそれが言えるのだろうか。



・ローズ・灰原
彼女の行動が正しいのかなんて自分もわかりません。
けれども彼女のマダムとしての思いは受け継がれるものだし、彼女の言葉には何回か泣かされた。
Season4ではジャンヌが上げられたけど、それでも自分にとってのマダムはやっぱりローズさんなんですよね。

Season1では青臭いだけの理想論でしたけど、Season2では風格を身に着けてすごくかっこ良いと思った。
決断するときに決断し、決して動じない彼女の強さがすごく好き。
Season1ではなぜみんながここまで彼女についていくのかわからなかったけど、Season2になってからはよく分かるようになりました。
リチャードのような人は絶対必要ですけどね。彼が反対意見も言ってくれるからこそ、ローズは悩んで自身の行動を吟味する。

あとは決して復讐の連鎖を繰り返さないとする意思の強さですよね。
ローズはSeason1でミゲルに随分酷いことされてます。
これも下種な想像ですが、彼女の初体験はあそこで失われているとしか思えません。
けれども彼女はミゲルに復讐しようともしないし、軽蔑もしない。
本当に、許せる心をもったマダムなのだ。

だからローズがリチャードを止めようとするのは決して偽善でも綺麗事はなくて、彼女の強い意志に基づいた行動なのがよく分かる。
とにかく山場での、彼女の言葉がどれも良い。
「1948年のカビ臭い時代の~」とかは一番感動した。自分もこんなことが言えるような大人でありたい。

紛れも無く本作通してのメインヒロインでした。
流石に初回人気投票の13位は何かの間違いだから完結した今もう一度やってくれ……。



・総評
Season1:87
→とにかく爽快。ケイレブもローズもただ真摯な思いでぶつかっただけに、熱い話だった。
Season2:90
→ワンダリングドックの成長や、ローズがマダムとしての格を身につけた姿が圧巻。
 マネーゲーム要素なども話の面白さに一役買っているし、醤油で国に対する思いを感じられるところとか未来の子どもたちのために行動するという思いが胸に響いた。
Season3:89
→鬱鬱鬱。ここまで落ち込んだのは久しぶり。悔しいけど惹きこまれた。
Season4:83
→もともとSeason5まであったのを凝縮したせいか消化不良感が残るが、最後の締め方は好き。

補足:BGM要素で全体に+3点。うみねこの方が好きだが、名曲多し。やはりノベルゲ界隈ではトップクラスのクオリティ。


最後は物足りなさあったものの、今年プレイした中ではでカオチャに並ぶぐらいに熱中しました。
魅力的すぎるキャラクターたちと、様々なテーマ性、感情を揺さぶる鬱展開や熱い展開。
またここの作品をやって名作だといえる日が来て嬉しいです。




※追記

ベスト版の最後の絵が良かったので+1