このレベルの作品が新作で出ているうちは、業界もまだまだ大丈夫だと思っています。
【プレイ時期】 2022/12〜2023/1月
※本感想は、創作彼女の恋愛公式「本編」のみの感想です。アペンドは含みませんのでご了承ください。
【グラフィック】5/5
新作のサイトが公開された時点での感想は、すっげぇ綺麗…でした。その後、あかべぇを手掛ける有葉さんと知り、再度驚くわけですが。
実際プレイしても、ものすごく綺麗でした。特に、目。こんなにもキラキラと輝く目は初めて見たかもしれません。このイラストを楽しむだけでも、プレイの価値があると思います。
【サウンド】BGM 4/5 ボーカル 5/5
BGMについては、おおよそ高レベルでした。特にヒロインのテーマ曲、作品タイトルを付けられた曲は良かったです。惜しむらくは、盛り上げるところで盛り上がりきらなかったと感じた点です。もう1曲強烈なインパクトを残す曲があれば完璧でした。
ボーカルは、今のご時世には珍しく4曲も。OPタイトルは、全クリ後には泣けてくる仕様なのがズルいですね。
また、エピソードEDも何度も聞くうちにどんどん良さがわかる曲であり、総じて素晴らしかったと思います。
【システム】5/5
新しい作品ということもあり、非常に使いやすいシステムでした。文句なしです。
【シナリオ】72.5/80
<共通> 10/10
第8話までです。
こんなにも面白く、読み進める手が止まらない共通ルートは久しぶりで、すでに勝ちを確信しました。
逢桜、桐葉、ゆめみ、エレナの4ヒロインに対しそれぞれ2話ずつの構成でしたが、お見事です。それぞれのテーマが分かりやすく、読み手としても素直に楽しみやすいシナリオになっていたと思います。
正統派ボーイミーツガールで、最高でした。
<エレナ> 12.5/15
孤高の天才たるヒロインと、努力はできるものの(突き抜けた)才能に欠ける主人公。そんなヒロインから猛烈に愛されて…
よくある構成かもしれませんが、安定した面白さになっていたと思います。
また、悩む主人公やヒロインに対して、周りの大人たちや他のヒロインがヒントを与えてくれるのも良い展開だったと思います。
強いて言えば、劇的さに欠けてしまったのが欠点でしょうか。とはいえ、魔法などのない現実的な世界であることから、十分だったとも思います。
あと、他ヒロインのルートでも変わらずに愛情を向け続けてくれるのは素敵だと思いました。
<ゆめみ> 13/15
エレナとは逆に、とても親しみやすい偽妹でしたね。まあ、元引きこもりのコミュ障ですが…
元々のクリエイター度が一番低いキャラだけに、結末の持って行き方には納得できました。嫌われたくない、愛されたい。それもまた、一つのエネルギーですよね。
表情がコロコロ変わるので、視覚的に楽しめるヒロインでした。泣き顔、うしし顔などなど。最高ですね。
また、お祭りで髪型を変えた時は思わず美少女や…と思ってしまいました笑
日頃の髪型だとそこまで思わないのですが…
クオリティには充分満足ですが、一つ言わせてください。結菜ルートはどこですかッッッ!!
となこいの莉奈といい、こういうキャラクターに秋野花さんは卑怯ですって…
どうにかして、結菜も含めたFDを出してほしいものです。まあ、望み薄ですが…
<桐葉> 15/15
このキャラは色んな意味で強いですね…。読み手としてこんなにも好感の持てるキャラ、という意味でも強いですし、桐葉自身の心の強さというものも感じられる作りになっていました。
何より、覆い隠してきた感情がとめどなく溢れた告白シーンは最高でした。桐葉のキャラだからこそ輝くシーンだったと思います。
個人的には、個別後半は芸能人キャラでもっとも忌み嫌う展開ではありました。それでも、共通を含めた桐葉の魅力にメロメロになってしまっていたため、充分読み進めることができました。個別後半のマイナスを差し引いても、有り余るほどにそれまでのプラスが大きかったです。
共通ルートから、負けヒロインムーブが続いていた桐葉。漫画などの単一エンドならきっと結ばれなかったと思います。そんな彼女でも主人公と結ばれることができる、pcゲームという媒体に感謝したルートでした。
<逢桜> 22/25
いや、うん…
分かってはいたんです。共通から丁寧な伏線が張られていたので、こういう話の流れになりそうだな、というのは。
でも、それでも…読み手としては辛いエンドでした。
徹頭徹尾、この作品はクリエイターとは何たるものかについて描いていたのだなと、終わった今なら思えます。残念ながら自分はクリエイターではなくただのプレイヤーなので、彼彼女らほどの熱意や命を懸けることを十全に理解できたとは思えません。
それでも、彼らなりに目の前を精一杯、一片の悔いもなく過ごしているのは理解できました。プレイヤー視点ではハッピーエンドとは言えないかもしれませんが、本人たちが納得しているのであれば、少なくともバッドエンドではなかったのではないでしょうか。
余談ですが、ゲームを終わる時の逢桜のボイス「お疲れ様、また、どこかで…」ですら泣けてきそうになるのは、そこまで意図していたのかなぁ。
【総評】91.5/100→5点刻みにするため、90点とします。
本当に楽しかった。
この一言に尽きると思います。ヒロインも主人公も、そしてサブキャラや大人たち、登場する全ての人に好感を持てるゲームというのは非常に稀で、いかにハイレベルな作品であったかが分かりました。
特に、裏テーマみたいになっていた大人たち(エリカ、ちなみ、姫子、芽衣)の意思や成長はとても良かったと思います。学生だけでない世界もあることで、作品に深みが加えられていたと感じました。
このレベルの作品が発売されるようならまだまだこの業界は大丈夫。そんな風に思わせてくれた本作に感謝です。
なんと、無料でアペンドまで作っていただけたとのこと。FDとしての販売でもおかしくないだけに、嬉しすぎますね。
唯一後悔していることがあるとすれば、通常版で買ったことですね。この出来なら、間違いなく豪華限定版を買うべきでした。まだまだ見る目がないなあと痛感した次第です。
ライターの工藤啓介さんはあかべぇを退社したものの次回作を製作中と目にした記憶があります。必ず次回作も購入するので、また素晴らしい作品を制作していただきたいですね。