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memoffさんのATRI -My Dear Moments-の長文感想

ユーザー
memoff
ゲーム
ATRI -My Dear Moments-
ブランド
ANIPLEX.EXE
得点
80
参照数
392

一言コメント

美味しいは、嬉しいなのです!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【プレイ時期】 2020年6.7月

【グラフィック】5/5
一目見ただけで分かる美しさ。キャラの可愛さ、背景の美しさ…文句のつけるところがありませんね。特に、舞台の中心ともなる海面の描写は素晴らしいです。

【サウンド】BGM 5/5 ボーカル 4/5
舞台を彩る、素晴らしい音楽の数々。
この作品の一つとして、見事に溶け込んでいました。

ボーカルは数回聴いただけではなんとも言えず。光放て!はテーマ的にもすごく好みの曲になりそうではあるんですが…

【システム】5/5
ロープライスの作品とは思えないほど充実したシステム面。さすがに大御所が関わってるだけありますね…

【シナリオ】62/80
序盤は主人公・夏生くんが町や学校になじむ経緯やATRIについての大まかな説明(というかヒロインとしての魅力が中心だが)、さらには学校の発電問題となかなか詰め込まれたストーリー展開でした。
さすがは紺野アスタ先生と思わせるような展開であり、青春を書かせたら未だにハイレベルであることがよく分かります。

発電問題が解決すると、ATRIとの恋愛について語られていきます。
あっさりくっついたな…と思ったりもしたのですが、やはりそんなわけもなく、一気に奈落の底へ叩き落とされることになります。
やはり、あのなんとも言えない「気持ち悪さ」が味わえる作品というのは良いものが多いですね。
また、奈落の底へ落とされている時間が比較的長いのも、結果的には良かったんじゃないでしょうか。あまりあっさりしすぎていてもカタルシスは生まれませんし。

終盤、一気に畳みかけてきます。
とある悪役が出てきてバトル…?のようになるのですが、相手側の言っていることもまるっきり意味のわからないわけではなく、むしろ理解できてしまうことが、ATRIへの愛着と相まって苦しさの原因となります。
その解決策はちょっとご都合的ではありましたが、まあ及第点といったところでしょう。

最大の見所はここから。
ATRI自身に感情があることを知り、理解した上での夏生への初心な反応がいじらしいのなんの。これを見るためにここまでプレイしたってもんです。
とはいえこれで終わりではなく、最後にもう一山来ます。終わりが見えているATRIと、夏生くんの判断はいかに…

そんなこんなでEDを聞いた後、いよいよTRUEへと話は進みます。
このTRUEは、賛否両論となっても仕方ない部分はあると思います。主に、水菜萌について。あの手法は僕としてはアリなんですが、水菜萌を気に入った人からすると酷い仕打ちをしているように思われても仕方ないです。
ただ、最後の1日を希望を持って過ごすラストのCG、あれは素晴らしかった。
この作品をプレイして良かったと思わせられるだけのインパクトのある一枚絵でした。

【総評】81/100→5点刻みのため80点とします。
コストパフォーマンスという意味では、半端でないリターンが得られる作品だったと思います。
ただ、そういった観点を除いて単体としての作品評価となると、どこか小さくまとまってしまった印象もあります。
それでも、限られたリソースのなかからこのクオリティにまとめあげてきたことには感服しますし、ANIPLEX.EXEがまた作品を出すようなら購入を検討したいですね。

ちなみに、8月には同じ紺野アスタ先生がライターを務める「あの日の旅人、ふれあう未来」が発売されるんですよね…
これもそれなりのクオリティにまとめてくることが予想されますし、うーん…買うべきか悩んでしまいますね。