ErogameScape -エロゲー批評空間-

memoffさんのCLANNADの長文感想

ユーザー
memoff
ゲーム
CLANNAD
ブランド
PROTOTYPE
得点
85
参照数
79

一言コメント

「人生」まで至らなかったのが残念でした。間違いなく良い作品ではあるのですが…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【プレイ時期】2023年5月〜9月

【グラフィック】4.5/5
古さは感じるし、特別美麗なわけではない…けれども、唯一無二の魅力があるという一風変わったイラスト達でした。癖は間違いなく強いので好みは分かれそうですが、個人的にはアリ。最近はネクストンに移ったと聞いたので、まだまだ活躍して欲しいものです。

【サウンド】BGM 5/5 ボーカル 5/5
サウンド面については、言うことなしです。さすがJun Maeda。
BGMも頭に残る曲ばかりで、ボーカルも各曲が強い。これは神ですね。

【システム】4/5
プレイする上で特段の不満はありませんでした。が、ややカスタムが使いにくかったような。switch版ならもう少し改良できたような気がします。

【シナリオ】69.6/80
<共通> 4.5/5
無気力に過ごしながらも、悪友+様々出会える女の子たちのおかげで楽しく読み進められたと思います。
特段人死にが出たり魔法が飛び交ったりするような世界では無いですが、特有の「優しさ」を感じられて安心できる世界観でした。

<美佐枝> 5/5
寮母さん(20代前半)。
正直、サブヒロイン的な扱いでしょとかなり穿った視点で始めたのですが、期待を大幅に上回るシナリオでした。

というか、個別ルート?はほぼ全て過去編という斬新な構成でしたね。普通のゲームみたいに、主人公がどうやってヒロインと付き合うのかを楽しみにしていたら、全然違くてビックリしました。最終的に美佐枝さんと朋也くんが結ばれたのかも分からないエンディングでしたし…

とはいえ、物語に引き込まれてとても楽しく読めたのは事実。志麻くんという謎のキャラクター(兼ネコ?)も今後重要な役割がありそうで、期待が高まります。

<ことみ> 7.6/8
ひらがなみっつで、ことみ。呼ぶときは、ことみちゃん。
最初の印象は「なんだこいつ…」と思いました。図書室にこもり、蔵書をハサミで切るという。ザ・変人としか言いようがなく、不安を覚えるスタートでした。

それでも、主人公の尽力で徐々に人間らしさを覚えてからは加速的に話が面白くなっていきました。藤林姉妹と渚たちとの友情で、ぽかぽかするような展開でした。優しい世界、とても良かったです。

<風子> 6/8
謎の彫刻大好き後輩。
ポケ〜としてる割には主人公にキツく当たることが多く、つかみどころのない子でしたね。

そして、シナリオは…またも渚の優しさに救われるタイプの話でしたね。
結局、どういうオチだったのか。個人的には、意識不明で入院していた風子が息を吹き返したという認識ですが、イマイチ記憶が繋がっている原理は分からず。奇跡です!ってことならそれはそれで良いんですけどね。

どこかスッキリしないというか、ラストあたりでひっくり返りそうな印象の残るルートでした。

<春原兄妹> 4.5/5
王道、されど正道。
共通ルートで朋也くんとバカやってた春原からは想像もできないほどの、よくできた妹でした。正直ここまでの女性陣の中で一番まともで魅力的なのでは…?ロリだけどね!

そして、兄。人妻に恋するところが残念さを際立たせていましたが、最後にきっちり締めるべきところは締めてくれたので、概ね満足だったり。もっとできただろ感もありますが、根底には朋也くんへの信頼があるので、こうなるのも必然だったのかも。
どうか、いつまでもバカやっててほしいですね。

<有紀寧> 3.5/5
資料室の主。
とっても可愛い普通の女の子。本作の中では癖のない性格だったと思います。とはいえ、周りにいる人たちは個性の塊でしたが…春原ともども、有紀寧に惹かれるのも分かります。

シナリオとしては兄との内容を中心に据えた割には、どっちつかずの印象でした。個別の序盤までは最高レベルだっただけに、終盤もっと盛り上げられればパーフェクトに近づけたのにと勿体無い気持ちです。

<勝平> 4.5/5
とっても可愛い男の子(あれ?)。
春原が恋するのもわかるくらい、言われなきゃ男とは思えないキャラクターでした。かくいう自分も、終盤まで「実は女でした」な展開があるんじゃないかと身構えてました。

ここにきて椋に脚光が当たるとは思わなかったです。正直ただのサブヒロインかと…。キャラ的にも杏の影に隠れがちでしたしね。
CLANNADらしく、温かい結末で満足できました。明確な幸せが見られるのは良きですね。

<智代> 8/8
なんだこの可愛い生き物は…
いやほんと、とんでもない魅力に溢れたヒロインでした。真っ直ぐに、でも誰よりも女の子らしく。最初は春原を蹴る要員かと思ったりもしましたが、本作の中でもかなりしっかり恋愛をしていた印象です。
朋也くんがここまでヒロインに夢中になるのは今までなかったのでびっくりでしたが、それも納得の素晴らしい女性でした。

第三者目線で言えば、朋也くんの決断に対してもったいない。とか、いいからそのまま仲良くしてなさい!とか思ったりもしましたが、いざ当人の立場になると難しい問題ですよね。
かたや授業もろくに出ない不良一歩手前、かたや品行方正な生徒会長様。あれやこれや言われるのは想像するに難くないですもんね…
それだけに、最後元に戻って本当に嬉しかったですね。生涯添い遂げてほしいです。

あと、ここにきて美佐枝さんの伏線が回収されてて泣きそうでした。どうにか美佐枝さんにも幸せになってほしいですね。

<杏・椋> 7.6/8
古き良き暴力ヒロインな姉と、大人しい妹。
浮いているだけに、気楽に接してくれる杏は主人公にとって特別なんだろうなあと勝手に想像してました。

椋のルートは思った以上にあっさり終わって笑っちゃいました。まあそうだよね、ハッピーなあのタイミングからさらに続けてもしょうがないよね。

逆に、杏は椋ルートが終わったところからかなーり長く続きました。やはり本筋はこっちかと。パケ絵に出てるのも杏だもんね。
内容もかなりドロドロした展開に。このタイプは落とすところまで落とすことでより真価を発揮するものだと思うので、本当に効果的でした。

ナヨっとした終わり方ではなく、しっかりケジメを付けたのも好感が持てます。姉妹二股を続けるのは良くないからね、うん。

<渚> 6.4/8
バスケに演劇にと色々詰め込んだ印象のルートです。特に演劇の最後はとても美しく、感動しました。主人公の家がアレなだけに、古河家の良さが際立ちますね。

それだけに、演劇後に続いた展開は少々寂しさも。というのも、完全にハッピーになってくれるものと思っていたので。これ以上渚に苦難を与えることもないだろうと油断していました。
最後の解釈は読者に委ねられる感じでしたが、どう受け取って良いんですかね。完全に治って、再び坂を登れるようになっていれば良いんですが。渚に幸福を。祈っています。

<AFTER STORY> 12/15
幻想世界がテーマになるかなと思っていたら、まさかの渚エンドの続きでした。

なんというか…もう…
渚にどれだけの苦難を与えるのかと痛ましい気持ちでした。
いい加減シンプルに幸せになってくれよと。そんなことを思いながら汐エンドを読み終えました。(汐も亡くなったとしたらあまりにも救いがなさすぎませんかねこのルート)

続いて秋生エンド。シンプルにクソかっけぇよこのオッサン…
人生の目標というか、こういう人を思い遣れる人間になりたいなぁと強く思える人でした。

そして最後のTRUE STORY。渚が幸せになれたのはよかったですが、理解できないことが多すぎて感動するに至らなかったことがひたすらに残念です。結局のところ、一番感動したのは朋也くんの父親との和解シーンでした。

幻想世界の最後に出てきた「パパっ」を言ったのは汐?であればなぜあのような世界に?
結局幻想世界と普通の世界の繋がりはどういうことだったのか?街が幸福を祈っているのは分かりましたが…

クリア画面で病院の木の下で横たわっていた女の子は誰?成長した汐?それとも幻想世界から抜け出したあの女の子?

残念な自分の脳みそでは読み解けなかったのが悲しいです。考察サイト等、探してみたいと思います。

【総評】88.1/100→5点刻みとするため、85点とします。
間違いなくやってよかった作品。そう断言できます。
ただ、当初の期待や「人生」という言葉ほどは入れ込めなかったのも事実です。もっとボロ泣きして、心に刻み込まれるようなものを予想していたので。少々ハードルを上げすぎたのかもしれませんね。

個人的には古河両親や智代、杏なんかはすごく気に入ったキャラクターでした。これだけの長編な物語なので、必ず気にいるキャラクターは出てくるはず。お勧めしやすいですね。
後は、期待値を上げすぎずに。ほどほどの気持ちでプレイすれば、きっとそれ以上の物語が帰ってくるはずです。