ErogameScape -エロゲー批評空間-

memoffさんの千の刃濤、桃花染の皇姫の長文感想

ユーザー
memoff
ゲーム
千の刃濤、桃花染の皇姫
ブランド
AUGUST
得点
80
参照数
748

一言コメント

友人がユースティアと大図書館の中間と言ってたのですが、まさにその通りでした。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【プレイ時期】 2019年12月、2020年1月

【グラフィック】5/5
文句のつけようがないレベルでしたね。Augustの作品を時系列順にプレイしてきましたが、正統に進化していて素晴らしいです。

【サウンド】BGM 4/5 ボーカル 5/5
BGMは、とにかくテーマの笛の音楽(うまく言い表せない)が素晴らしかったです。もう少し和を強く打ち出したものも聞いてみたかったですね…

ボーカルは、OP・EDともに非常に高いレベルでした。和ロックは初めてのジャンルでしたが、良いものですねぇ!

【システム】5/5
相変わらずのAugustクオリティ。
この機能の全てを使いこなせてる人っているんですかね…?

【シナリオ】61/80
<OP前まで> 9/10
どんな作品でも、物語の最初で引き込めるかどうかという点は大事だと思うのですが、その点本作は非常に良いスタートを切っていました。
初プレイで2時間もぶっ続けでやるなんて自分ではかなり珍しいですし。
朱璃と宗仁の出逢いから、国の現状なども分かる、良い序盤でした。

<滸> 8/10
アイドル兼頭領ですか…すっごい良いキャラですねぇ…
滸が独り立ちするまでという話でしたが、そこまでの展開といい、槇といい、良いストーリーでした。
2点引いたのは、あまりに個別が投げっぱなしENDなのと、宗仁の監察を強調していた割に心情に流されまくっていたためです。

<奏海> 7/10
翡翠帝って書いたほうが良いですかね?
奏海がどうこうというより、竜胆作戦に主眼が置かれていました。
なかなか大胆な子で、すべてを台無しにするようなことも平気でしていましたが、そこまでの愛情を持ってやることですし、まあ良いのかなと割と好意的に解釈していました。
ここまでの愛情は才能だよねえ…

<エルザ> 8/8
本作で1番好きなルートでした…
すっげぇいい子やないですか…
キャラといい強さといい態度といい、どこをとっても一流でした。
信念を持って取り組む姿に心惹かれました。

ちなみに1番エッッッッ(略)だったのもエルザでしたねえ…

<古杜音> 7/12
竜胆作戦後、過去編に突入したわけですが、過去編はとても良い出来でした。
日本神話をモチーフにしたであろう舞台で、とても美しかったですし、過去編の終わり方も見事でした。

それだけに、その後古杜音を選ぶのかよ…となったのも事実でして…
いや古杜音自体はとても可愛くて良い子なんですよ⁉︎
ただあの過去編の後には朱璃を選んで欲しかったなあと強く思ってしまうのです…

<朱璃> 22/30
ユースティアと同様階段分岐だったことから、本作は朱璃のためにあったといっても過言ではないでしょう。
そんなメインルートですが…なんと評価して良いか…

ストーリー自体は好みでしたし、出来も良かったと思います。朱璃も可愛い&カッコ良かったし。
また、ユースティアで賛否両論だったことを考えると、今回の平和な終わり方もまあアリだと思います。

ただ、呪力や神様の使い勝手が良すぎて、少々「安っぽく」感じてしまったのも事実。
また純粋なハッピーエンドかと言われるとなんとも言えない部分もあって(主にミツルギ)、なんだかモヤモヤしています。

【総評】 80/100
全体を通してみれば、十分に高いレベルの良い作品でした。
終戦後の日本かと思いきや、生活のレベルは妙に現代的という難しい世界観でしたが、なかなかしっかり書けていました。
強いて文句をつけるなら、この世界は「楽しすぎた」。シナリオゲーとして見れば、もっと残酷な世界観でも良かったかもしれません。

ヨーロッパ神話をもとにしたユースティアに対して、日本神話をもとにした本作を持ってきたあたりに、老舗ブランドAugustの強みを感じます。

次の新作がキャラゲーかシナリオゲーかは分かりませんが、今後もついていこうと思わせるだけの良い作品でした。

誠忠‼︎