「超展開ゲー」と呼ばれているようにシナリオはかなり滅茶苦茶なことをやっているんですけど、それでも一つの物語として完成しているのが素晴らしいと感じました。ただ、聞き慣れない単語が頻出してくることと、それに対する蘊蓄が長いことがあり、話のテンポとしては悪い、とまではいかないもののそれほど良くないです。その蘊蓄が伏線になったりしているので、全く無意味なものだとは言えないのですが。あと、事実関係が複雑なので、物語の全容を把握するのが難しい作品ではあると思います。
シナリオの中身は前述したように「超展開ゲー」。
前半では普通の学園物かと思わせておいて実は……っていう感じです。
各√に入るとほとんどシリアスな展開で進んでいくので、ヒロインとのイチャラブを期待していた人は騙されたように感じるでしょうね。
そんな中でもふたみ√は「ふたみが可愛すぎて辛い……」と言えるくらいに、ふたみというキャラクターの良さが引き出されていたと思います。
ただ、もうちょっとイチャイチャするシーンが多かったら良かったんですけどね。
そのこととは別でシナリオについて思ったのは、この話は各√において全てのヒロインが幸せにはなれていないんだということです。
普通に考えて、主人公は一人で付き合うヒロインも各ルートにおいて一人なので他のヒロインが平等に幸せにはなれないのですが、そうではなくて、あるヒロインの√に入った場合、他のヒロインはほぼ確実に不幸な結末を辿ります。
特に、此芽は主人公に自分の命を与え続けているわけで、もちろん此芽√ではそれが報われる形になるのですが、他のヒロインの√ではただ主人公に命を分け与えるだけで、その事実は主人公に知られることはないまま死んでしまうわけですから、なんとも報われないなあと思いました。
あとは良かった部分を雑多に書いていきますが、まず目を惹くのが絵ですね。
萌木原ふみたけさんの絵はキャラ造形がしっかりしていて良かったです。
立ち絵でもCGでも絵がそれほど崩れていなかったのも高評価です。
この人の絵は可愛い系の絵柄なのでシリアス展開の作品には合わない感じがしますが、個人的にはそれほど違和感は無かったかなと。
逆にその可愛いキャラでシリアス展開というアンバランスさが超展開であるこの作品に嵌っていたのかもしれません。
BGMは凄く耳に残るものはなかったものの、作品を綺麗に彩っていて良質だったと思います。
システム周りは普通です。特に不満は無かったです。
ちなみに「前の選択肢に戻る」というのが当たり前のようにあるのですが、そもそも選択肢が少ない作品なので使うことはなかったです。
朱門優さんの作品をやってみたかったので買った作品なのですが、予想以上に楽しめました。
私はこの人のテキストは嗜好に合ったのですが、遠回しな表現が多いことなどもあり、癖があるテキストだとは思います。
そのため、決して万人に受ける作品ではないと思います。
体験版をやってみて面白そうだと感じた上で、超展開を許せる人はプレイしてみてはいかがでしょうか。