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melodicarcさんの銀色 完全版の長文感想

ユーザー
melodicarc
ゲーム
銀色 完全版
ブランド
ねこねこソフト
得点
73
参照数
219

一言コメント

良作の部類には入ると思うんですが、どうもグッと来るものがなかったというか微妙でした。『銀糸』っていうアイテムが文字通り登場人物を繋ぐ『糸』になっているわけですが、このアイテムだけで話全体を繋げるのには少し無理がある感じがしました。また、章ごとに登場人物や視点がころころ変わるし、時間軸も一緒ではないので、どこに向かっているのか分かりにくかったです。ただ、まあいろんな意味で心に残る作品ではありましたけど。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

願いを叶える銀糸とそれにまつわる人々の話を章ごとに描いた作品でした。
鬱ゲーと言われているように救いのない展開が多かったです。
特に3章はドロドロな展開でなかなかきついものがありました。
ただ、さんざん銀糸によって起こる鬱展開を見せた割には、最後は銀糸の力によって願い叶えてハッピーエンドなんですよね。
結局、「銀糸の力に頼るのではなく自分で叶えようとすることが大切だ」っていう話だと思うのですが、最後はこう終わるのねっていう感じでした。
むしろ、最後まで鬱展開でぶっちぎるか、それでなくても声は戻らない方が面白かったかなーと思いました。
そこまでの展開があの展開だっただけに、最後ぐらいは救いを与えようとしたからかもしれませんけどね。

絵の方に関してですが、いかんせん昔の作品なのであんまり良いとは思いませんでした。
ここは仕方ないかなっていう感じですけど、10年近く前になるとさすがに今の絵とは全く違うんだなと感じました。
まあそんな絵でも、Hシーンでの絵を見たら体の一部が反応してしまうのは男の性ですね。
あとはシステム面ですが、『前の選択肢に戻る』ってやつぐらいは欲しかった気がします。
これも昔の作品だから仕方ないって感じですが。

この作品は章を越えての登場人物の縦の繋がりがなくて、別に現代の登場人物が過去に銀糸をもっていた人の子孫というわけでもないので、この銀糸が葬り去られること無くどのように後世まで伝わっていったかもよく分からなかったです。
こんなものがあったらこの長い年月の間にもっと悪用されていてもおかしくないと思うのですが、意外と身の回りに起こる不幸話だけで済んでいますね。
あと、『あやめ』っていう人物の名前が多いんですけど、これってあんまり意味があったようには思えないんですよね、この名前の人同士の血の繋がりはないと思いますし。
最後のあやめの花が咲くっていう場面だけに意味があっただけで、そこでもっと感動出来たらよかったのですが、いまひとつ感動できなかったです。
全体的に見てそんなに酷い作品ではないんですけど、ちょっと楽しんでプレイするまでには至らなかったです。

最後に、この作品の続きとして「朱 -Aka-」がありますが、こちらも購入してあるので一応やろうかなと思っています。
また、感想を書くかもしれないのでそのときは読んでやってください。