テーマが物凄くはっきりしている作品。ある意味『極論』とも取れるストーリーが伝えるメッセージ性は高い。
「自由を縛って創り上げた平和は本当の平和と呼べるのか?」というのがこの作品のテーマ。
言うまでもなく昨今の規制に対するアンチテーゼ、またその問題に皮肉を込めて作られた作品です。
内容はというと、倫理機関によって統制された世界、その中で自由を獲得しようと戦う東京の人たちを描いているのですが、
主人公であり倫理機関に洗脳された徹というイレギュラーな存在を入れて物語を展開したのはいい発想だと思います。
ただ見せ方には少し問題があり、周りが少し主人公に対して意見を押しつけているようには感じました。
特に序盤は、倫理機関について、世界の在り方についての説明が多いので、
「なんで世界はこんな風になってしまったの?」
「倫理機関が~~したからよ」
「そうなんだ~。倫理機関って悪い奴らだね!」
という流れが多く、教育用のビデオ教材を見ている気分になりました。
あと周りの人たちのセリフが結構くさいです。
特に前田竜二はよくそんな暑苦しいこと言えるな、と思うことがよくありました。
中盤から終盤にかけては物語が大きく展開していくので面白かったし、最後のシーンでは感動しました。
倫理圏を抜け出して、琴莉の記憶が戻って終わるというこの終わり方がよかったと思います。
日常会話のシーンに関してはそれなりにはよかったですが、めちゃくちゃ面白いってわけではないです。
とりあえず物語を退屈させない『つなぎ』にはなっているのではないでしょうか。
そしてラストシーンを迎えて終わり――というわけではなく2週目に突入します。
正直1週目でも十分物語は完結しているとは思いますが、私なりに2週目に対して作者が込めた意味を考えると、
それは自ら考えて行動することの大切さではないかと思います。
2週目からは会話の節目に選択肢が出現します。
この選択肢を正しいものを選んでいくことでハッピーエンドへと向かいます。
この正しい選択肢が、主人公が考えることを促すようなものだったので、私はそこに作者の意図があったのかなと思います。
これによって1週目に死んでいた人たちも救われて、最後はハッピーエンドとなりました。
まあこれだけ書いといてなんですが、多少2週目は蛇足である感も否めません。
1週目であれだけ主要人物が死んだのはこのハッピーエンドのためだったのかと少し思いました。
結局1週目はトゥルーエンド、2週目はハッピーエンドといった感じでしょうか。
2週目をやらないと分からない事もあるので、オールクリアは必須です。
しかしながら、同人ゲームということを考慮するとCGも結構良いですし、
シナリオも魅力的でオリジナリティ溢れるものだったのでよかったです。
BGMはロックすぎてシーンに合わないものが少しありましたが、
全体的にかっこよかったし良質だったと思います。
あと、このゲームは18禁ではなくHシーンはないので、それ目的の人は悪しからず。
この作品は昨今の規制問題をただ批判するわけではなく、私たち自身も考えさせられるものだったと思いました。
私たちにとって自由は当然の権利ではありますが、それなりの節度をもって行動していかなければならないですね。
本当に自分の考えが正しいのか、主張する前に相手の考えも聞いてしっかりと真実を捉えなければならないと思います。
でもやっぱりエロゲが禁止とかになったりしたら嫌ですから、最後に「エロゲ最高!」と私の意見を主張しておきます。