しっかりと仕上げられている今年でも屈指の作品。強力な妹キャラである「さくや」を筆頭に豊かな登場人物が作品を彩っています。正直、手放しで褒め称えたかったんだけど、少し不満点もあったりするのでその辺を含めて長文感想で。(本当にネタバレだらけなのでクリア後推奨)
まず、この作品をクリアし終わった後に感じたのは満足感でした。
私はだいたいの場合「なんでこのキャラ攻略できないんだよ」とか「ルート短くね?もっといちゃいちゃさせろよ」とかけっこう思ってしまうのですが、この作品の場合はボリュームも十分でその点で不満に思うことはほぼありませんでした。
なんといってもサブキャラクターを攻略できるのが大きいし、フローチャートも付いていて自分がどのルートのどの辺りを進んでいるのかが分かりやすくて、非常にユーザーフレンドリーな作品だと感じましたね。
そして、この作品を彩る登場人物たち。その中でもひときわ大きな存在感を放っているのがメインヒロインである「さくや」です。
妹キャラというのはだいたい「主人公にべったりくっついているタイプ」か「主人公を思いっきり突き放しているタイプ」かに二極化しやすい……と個人的には思っているのですが、このさくやは主人公に対して非常に良い距離感を取っていると感じました。
主人公のことを盲目的に信じているわけではなく、いざという時は意見したりもするので、本当に良い妹キャラだなと思います。
でも実は私が一番好きなキャラはさくやではなく銀子さんです。
銀子さんみたいな普段はふざけてエロいこと言っているけど実は性についての知識が無いっていうキャラ最高です。
はい、変態ですね。
で、何が言いたいのかというと、この作品「さくやゲー」と言われていますがそんなにさくやの事が好きでなくても十分楽しめるということです。(もちろん、さくやを嫌いだったら話になりませんが)
シナリオの終幕はさくやで締めくくられているので「さくやゲー」なのは確かですが、他のキャラにも十分な良さがあります。
よくある言い方をすればキャラが立ってる、ということです。
例えば周りのキャラを少し悪い性格にすることで相対的にさくやを良く見せようとするといった手法は取っていません。
それだけにメインヒロインはさくやではあるが、ヒロインがさくやだけではないことを明確にしています。
シナリオを進めていて、この作品のライターである桐月さんはキャラを描くのが上手いなあと感じました。
そうそうキャラといえば主人公の孝介も非常に良かったです。
こういう自分で考えて行動できる主人公はやはり好感が持てますね。
そして、ここからは各シナリオについての感想を。
攻略順は、銀子→さくや→沙智子→美里→翔子→朱音→いろは、そして最後のエピソードであるシンセミアの順でした。
【銀子√】
まず攻略したこのルートですが、攻略した後に思ったのは「あれ?攻略順ミスったかな?」ということ。
このルートはいろいろなことについてのネタばらし(銀子さんの正体や孝介とさくやが昔のことを覚えていない理由)が多いのでもしかしたら攻略は最後の方がいいんじゃないかと思いました。
で、銀子さんですが本当に良いキャラです。可愛すぎます。
裸を見られて「うきゅー」と倒れるところなんか最高ですw
今までやったエロゲの中でもかなり好きなキャラでした。
銀子さんマジ天女。
【さくや√】
この作品のメインヒロインであるさくやのルートですが兄妹の恋愛を上手く描いていた……とは少し言えないです。
それはその禁断の恋愛というところの背徳感があまり出ていなかったからです。
二人の父親も叔母である皐月もそこまで何も言っていないので、障害を乗り越えたという感じが無かったですね。
あと、このルートだけ見ると実はそんなに天女伝説に絡んでいないですね。
どのようにして兄と妹がお互いに惹かれていったかというところが中心に描かれていたルートだと思います。
【沙智子√】
サブキャラですが話はけっこう感動しました。
母親が孝介とさくやをどれだけ想っていたかというのが分かるルートでしたね。
沙智子自体は典型的ツンデレキャラって感じですかね。
正直私はツンデレがちょっと苦手なのでまあ……ね。嫌いではなかったですけどね。
【美里】
意外とシナリオに関係してくるこの人。
母親が死んだ時の孝介に救いの手を差し伸べた人物ですね。
キャラとしてもメインキャラに匹敵する可愛さを持っています。
【翔子】
全国のロリスキーたちがこの作品に求めた希望――――――それが、この翔子です。
えー可愛いです。実に子供っぽいですが、それが愛らしさを感じさせてくれますね。
どなたかの感想で「ジャコスいくの!?」はやばい的なことを書いていましたが、うん、やばいね。
声優さんが私の好きな夏野こおりさんだったのでその点でも好きなキャラクターでした。
私はロリコンじゃないけど、このロリキャラはかなり評価されるべきじゃないかと思います。ロリコンじゃないけど。
っていうか沙智子もだけどこの二人どう考えても小学s……ゲフンゲフン。
シナリオの方はどうかというと赤い石というのがキーワードになっていますね。
この赤い石の説明がシナリオの中でされているのですが、どうもいまひとつ理解できなかったです。
まあその辺のことはまた後で。
【朱音】
なんと第一回人気投票では3位にくいこんだという朱音さん。
大人な落ち着いた感じのキャラでしかも巫女属性なのでそりゃあ人気あるわね。
シナリオ自体は天女伝説にまつわる謎には全くと言っていいほど絡んできませんでしたし、他のサブキャラより短くてちょっと不遇?なのかな。
それでもなのかそれだからなのか人気あるキャラですね。
個人的には声があんまり好きではなかったかな。
【いろは】
他のルートとはまた違った角度から天女伝説に関して挑んでいるというルートです。
それはいろはの両親についてのことですがその結末は少し可哀想ではありましたね。
あと、いろはの父親の手記のところでは感動しました。
親が子を想う気持ちが伝わってきましたね。
ちなみにこのルートは他のメインヒロインの中では一番まともな恋愛という感じですね。
まあ他が妹・幼女・天女だからねえ……w
【シンセミア】
そしてこれらのルートをクリアしたあと(正確にはメインの4人をクリアしたあと?)に出てくるのが「シンセミア」というエピソードです。
「シンセミア」とはこの作品の設定資料集にも書いてありましたが強力な麻薬の一種です。
それを人々の心を惑わせる不老不死の薬になぞらえているわけですね。
このエピソードの中身は今までのまとめと天女伝説にまつわる謎の決着。
前半はほとんど今までの復習といった感じです。
ここで青い石と赤い石についてのしっかりとした説明がなされるのですがこれがちょっと分かりにくい。
コンピューターのOSとアプリという比喩で説明しているのですが、完璧に理解できたかというとそうではなかったですね。
たぶん分かりにくかった人も多いと思うので最後に青い石と赤い石の説明を載せているので見てみてください。
そして後半はついに天女が動き出してこの村に最後の復讐を仕掛けます。
そこで孝介とさくやの二人の絆が試されるわけです。
で、感動のラスト……となるはずなのですかその前段階であまり理解できていないまま話が進むのでそこまで感動できませんでしたね。
めちゃくちゃ捻っている終わり方でもないので少し拍子抜けという感じでもありました。
ただしっかりまとめてはいるのでそこはさすがだなと思いました。
それと一つ疑問に思ったのですが結局、孝介が男の子として皆神家に生まれたのは単なる偶然だったんですかね?
その辺の説明が無かったので、疑問に感じていました。
あと、今まで女の子ばかり生まれた皆神家にいきなり男の子が生まれたら「これはなんかの不吉の始まりじゃあ!」的な展開になってもおかしくない気はするんですけど、その辺どうなんだろう……?
シナリオに関してはこんな感じですね。
設定がすこしややこしいところもありましたが、それぞれのルートで感動させるところはしっかり感動させてくれました。
ちょっと中盤がだれるのが残念だったりしますかね。
あとはその他の要素についてですが一番良かったのはなんといってもBGMです。
主題歌や挿入歌はもちろん、各場面で流れるBGMが非常に良い雰囲気を醸し出していました。
また、Hシーンですがさくやには4回、残りのメインヒロインの3人は3回ずつ、あと皐月を含めたサブキャラが1回ずつで翔子と沙智子との3Pシーンが1つありますね。
システムに関してはやはりフローチャートが目を引きますね。
フローチャートでそれぞれのフラグメントにカーソルを合わせるとシーンが再生されるというのは素晴らしかったです。
全体的に見て本当に欠点が少ない作品だと感じました。
良い所があまりにも目立ちすぎて最初はマジで完璧な作品だと思ってしまいましたね。
シナリオは実は最後よりも銀子√の方が感動しました。銀子√だけ2周してたりしますw
この作品はぜひ最後まで、フローチャートを100%全部埋めるまでやってほしいと思います。
100%を達成すると素敵なプレゼントが……っていうかあの演出はせこいですねwww
本当に素晴らしい作品を作っていただいてありがとうと言いたいです。
あっぷりけの他作品をやったことが無いので機会があったらやりたいですね。
――――――<おまけ>――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【青い石と赤い石について】
この二つについて少し分かりにくいと感じたので、設定資料集などを元にしてまとめてみました。
めっちゃ長いので注意です。
(青い石)
いわゆる不老不死の薬と呼ばれていた物ですね、天女の羽衣でもあります。
天女が男のために残しましたが、湖に撒かれてしまいました。
水に触れると溶けてしまうため、それが長い年月をかけて村全体に広がっていきました。
赤い石の命令によって体内に入ると呪いとなって活動を始めるため、様々な動物の中に入り込んで怪物が発生するきっかけを作ってしまいましたね。
また、青い石は元が天女の羽衣なので身体に対する修復効果があることも重要です。
現在、青い石の能力はさくやと孝介が持っています。
青い石を作中のように携帯などのアプリに例えたとき、さくやは「起動」と「安定」、孝介は「終了」を行うことができます。
赤い石を砕くことが出来たのはさくやが赤い石を壊すというアプリを起動、安定させたから。
そのアプリを発動させた状態で孝介が触ると赤い石の機能を停止させることができるので、赤い石を砕くことができるわけです。
これで孝介が赤い石を砕けるわけを説明できた……かな?
孝介が怪物の中にある青い石の方を砕くことが出来るのは、青い石がすでに起動しているアプリだからというわけですね。
銀子さんが言っていましたが孝介の「終了」という能力はどちらかというと「正常化」という解釈の方が分かりやすいかもしれません。
(赤い石)
天女が呪いを込めた羽衣の欠片。
天女を看取った女性の体内に入り、そのあとの世代は生まれ持ってその赤い石を受け継ぐことになった。
つまり、その看取った女性こそが岩永家の祖というわけです。
ここで謎なのが、岩永家って皐月が嫁いだほうのところなのになんで皐月が岩永家の祖に似てるんだよというところ。
これは歴史を辿ると岩永家が実は皆神家の分家にあたるから。
あまりにも遠い昔の話なのでみんなは知らなかったというわけです。
で、赤い石の話に戻ると、この赤い石は青い石を動かす命令という電波を出すアンテナにあたるものです。
こいつが青い石に命令することによって怪物たちを思い通りに動かせるわけです。
孝介たちが赤い石を壊せば大丈夫だと考えたのはそのためで、実際赤い石を壊せば呪いの効果は発動しなくなるってことなんですね。
そして、この赤い石の持ち主に関する話。
この赤い石は最初は皆神家に受け継がれていたため、天女と同じ情報を持つさくやの物でした。
しかし、水難事故の際にさくやが一度死亡したため赤い石が体外に出ました。
ここでさくやと孝介の手によって崖下に捨てられたというわけです。
ちなみにさくやが生き返ったのは、母親からさくやへと与えられた青い石の修復効果のためです。
その後、赤い石は翔子によって集められるわけですが、翔子が赤い石を見つけられたのは前述したように岩永家が皆神家からの分家であり、翔子には僅かではあるが適性があったから。
翔子は赤い石を起動して持ち主になり、ここから物語のプロローグへと繋がっていきます。
あと、御奈神村に帰って来た時、さくやが赤い石を見つけることができなかったのは、この時点でさくやは持ち主ではないから。
赤い石にはステルス機能があり、そのためさくやはいくら適性があるとはいえ見えなかったというわけです。
流れとしてはこんな感じ?
これだけ書いておきながらやっぱりいまひとつ分かりにくいですねw
うーん、あと書くとしたら最後の辺り、結局さくやはなんでまた天女に体を乗っ取られたのかってところですかね。
あれは翔子が暴走した際、翔子に触れたときに天女の記憶を垣間見たことで、さくやは自分の兄への思いは天女が村の男に対して思っていたものと同じ、つまり兄への思いは天女の借り物ではないかと思ってしまったんです。
その隙をつかれて意識を再び呪いに乗っ取られたわけですね。
なんかこういう風に全体をまとめて書いてみると翔子って可哀想なキャラだったと思いますね。
結局、運命に翻弄されて最終的には自分の孝介に対する思いも成就してないわけですしね。
まあいろいろ書きましたが思ったよりも複雑な話でしたね。
正直、解釈が間違っている所も多々あると思いますが……。
これだけじゃ分かんねーよって人は「黄昏のシンセミア」のホームページにある御奈神村報でも見てみたらどうでしょうか。
かなりいろいろと設定について書いていたと思います。
なんか最後は宣伝みたいになってますけど、それではこれで。