不完全燃焼感が強く、Not For Me, でもSummer編は完璧。
事前情報ナシの完全初見でオールクリア後の感想です。
点数はシナリオに偏重。
■DREAM編
非常に人を選ぶシナリオと感じた。
主な原因は主人公にあり。この銀髪男に感情移入できるかどうかで総評価が相当ブレる。自分はできなかった…。
主人公はかなり感情移入させにくい人物設定。
生い立ちはイレギュラーだし、常識のほどは不明(というか不安定)
ヒロインを叩くことも多いし、一人芝居で変なボケが多いのもキツい。
一番の問題は、目的と行動が一致できていないところか。
少女を探すという確固たる目的があるが、
漠然としすぎているため、その目的に直結した行動は(終盤まで)起こせず。
プレイヤーの感情と主人公の行動が結びつかないのは、ADVゲームとして致命傷だと感じた。
夏の気怠い暑さの描写も伴って、自分のモチベーションをどんどん削いでしまっていた…
ルート分岐が複雑すぎることも、熱中度を落とす要因に。
ひたすらにセーブ&ロードを繰り返して、未読部分を総当りで発見するという退屈なプレイに。
この状態になると、心構えができていない状態で重要な話に進むから感情移入できなくなる…
(スキップせずに毎回全部読めよ(怒)という話だが、自分にそんな根気はなく…)
結局30~40回はゼロからスタートする羽目に。かかった時間は大したものではないけれど、一気に熱が冷めてしまった。
●観鈴シナリオ
完璧なBGM, 良質な背景イラストも相まって、湿度たっぷりの夏の雰囲気を体感できる。
何よりも観鈴が可愛らしい。徹底的に観鈴ゲー。かと思ったら神奈ゲー。でもやっぱり観鈴ゲー。
キャラとしての芯が通っており、あざとさも感じず、素直に愛でられるキャラクター。
涼元氏がシナリオ講座本に書いていた『ヒロインは愛玩動物であれ』という心得を思い出す。
終盤の、ひたすらに衰弱していく展開もまた好み。
ルート分岐があるエロゲーだからこその、良いBADENDだと感じた。
ただ…いくらなんでもこんな場面でHする!?と思った。HしたせいでBADENDになったのかと思った。
●佳乃シナリオ
いまいちパッとしない・・・。
佳乃のキャラが良くも悪くも王道的少女で、むしろ聖のほうが魅力的に感じた。
佳乃や羽根は最終シナリオで重要な役目を果たすんだろうなあと予想してたが、そんなことはなく・・・。
メタ的な話をすると、パッケージイラスト等で『羽のある少女=観鈴』と描写しているので、
観鈴以外のキャラは物語として冗長に感じる。
●美凪シナリオ
日常パートのダルさが半端ない。
前作Kanonの日常パートが結構好みで、AIRにもそれを期待していたので残念。
Kanonと比べるとギャグのキレはないし、同じボケを何度も使うしで…。
終盤では巻き返しを図ってくるが、前半での失速を取り返すほどの追い上げはできず、総合的に微妙。
どうでもいいけど、美凪が結構な長身であることに驚き。立ち絵では全然感じないのに。
あとHシーンがあっさりすぎ。
■SUMMER編
完璧。
ガラッと変わる世界観、物語の核心を過不足なく語る、練り込まれたシナリオ。
テキストレベルも明らかに上昇している。ライターの切り替わりを感じる。
DREAM編の(複雑な分岐による)気怠さ・マンネリ感を一気に解消させてくれた。
DREAM編と異なり、主人公の目的が明瞭であることも大きい。
裏葉とのHシーンは物語の核心のひとつであり、情緒も感じられる、本作随一の良いHだった。
この章で本作への熱は一気に高まり、最高潮の気分でAIR編に臨んだのだが…
■AIR編
クリア時の感想『えっ、これで終わり!?』
相変わらず可哀想な観鈴は可愛いし、晴子との関係は魅力的だったのだが…
不完全燃焼感が強く、個人的に最も残念だった編。
プレイ中はずっと下記を考えていた。
・ポテトもそらと同じ元人間で、重要な役目を果たすのではないか?
・他シナリオのヒロインも登場して大団円になるのではないか?
・前作Kanonでは無理矢理にでもハッピーエンドになったんだから今作もそうなるのでは?
・主人公の遺品となった人形が、Kanonのそれのように奇跡を起こすのではないか?
・DREAM編のように複雑なルート分岐や隠しエンディングがあるのではないか?
・主人公の『人形使い』の布石は?
・主人公の法術により、観鈴が生き返った…と思ったら結局また死ぬの?
・なんで晴子だけは呪いに冒されないの?
『AIR編2周目でハッピーエンドになるんだろうな~』と思ってたので
唐突感がエグかった…。名作だからって期待しすぎ?
観鈴が死んでしまうことを最初から知ってれば、もっと熱中できたのかもしれない…
エピローグはさらに難解。
相当真剣に考察しなければ楽しめないENDだと思った。考察推奨ではなく考察必須。
・最後に登場した少年少女は、消去法的にそら&神奈なのだろうけど、断定できずモヤモヤする。
・大空を飛んでいた神奈は、観鈴の幸せな記憶を受け継いだので開放されたということ?現代の話?
・なぜ時間が遡った?
・『彼らには、過酷な日々を』というセリフより、神奈が転生(?)したとしても観鈴の人生は辛いまま?
・なぜ過酷な日々のことを観鈴に言わない? この世界の観鈴にはそらがいない(?)ためBADEND確定?
・神奈の魂は観鈴にあるのだから、神奈の魂が2つ存在してることに?
・星の記憶ってそんなに重要なの?言ってしまえば、神奈の魂(=観鈴)だけの問題じゃないの?そんなに壮大な話?
・観鈴が幸せになれなかった世界(佳乃・美凪シナリオ)では、地球に何かしらの悪影響があるの?
■システム
ディスクレス起動、非アクティブ時動作、既読判定、CGモードなどは一通り実装しており満足
■BGM
完璧すぎる……
名曲と名高い"鳥の詩"はもちろん、
夏影、夢語り、縁…と通常BGMも名曲の目白押し。
冗長すぎる日常パートを乗り越えられたのはBGMの力だと断言できる…。
サウンドモードがあるのも○
■グラフィック
背景:高品質。夏の気怠い感じが伝って好き。
立ち絵:普通に好き。細かい表情差分が多いし、夜間の色調変化が印象的で素晴らしい。
CG:玉石混交。腕や足の長さがおかしいものが多く残念。
一部のCGは気合が入っており文句なしに美しい。たぶんCS版で追加されたものなのだろうけど。
■そのほか
自分に合わなかっただけで、合う人にはガッツリ合うであろう作品。
前作Kanonが非常に楽しめたので、PC版AIRに加えてSwitch版CLANNAD+外伝2つも購入してしまった…
CLANNADは楽しめることに期待…