痛ましいほどに純粋な愛(情)。 メインヒロイン2名は後回し推奨。
事前情報ナシの完全初見でオールクリア後の感想です。
46時間でクリア。
■シナリオ
◎物語構造が面白い
平穏で不穏な幸せを描いた夢幻篇、
日常が一瞬で崩れ去る深淵篇、
唐突に始まる回想篇、
脆弱体質の主人公が苦悩しながら現実を生きていく現代篇、
謎の少女と山あり谷ありの数日間を過ごす旅情篇。
グランドエンディングとなる2つの最終シナリオ。
いずれも世界観がバラバラなので飽きない。
・夢幻篇
不穏さの演出が素晴らしい。1日目ラストのクラクション音で一気に物語に引き込まれた。
このチャプターはそんなに長くないので、"不穏さを感じるも、なかなか解消しない"といったもどかしさを感じないのも良い。
長くないぶん、サブヒロインとの交流が少なすぎという問題があるが…
・深淵篇
急転直下で怒涛の展開。およそ思いつく限り最悪の呪いにかかっていると思う…。
初見時は泣いてしまった。勇介の前世で、生まれてすぐの赤子が死んでしまったときの母親たちのことを想うと…
・回想篇
テキストが最高クラス。後述。
・現代篇
虚弱体質である主人公が現実と闘っていく、特に印象的な篇。
どのキャラの話もあまり盛り上がらずに幕を閉じたが、真エンドの前座だし仕方ないのかも。
(意外とあっさり目覚められたな…)と思ったけど、そんなことは無かった…
・旅情篇
短いながらも、バイトの話は印象的。丸戸史明氏の作風のような"厳しいけど、自分が思うよりも優しい社会"を感じた。
・最終章
キャラ項目で後述。
○家族愛というテーマ
家族愛>恋愛という価値観がこの物語の大正義。これが自分に刺さった。
また、"愛"と"情"という普遍的なワードが独特な意味を持つのが印象的。きちんと説明されてようやく理解。
X 夢幻編では、サブヒロイン連中の描写があっさり目。
テンポの良さを重視したのはわかるが、もうちょっと交流は欲しかった。
彩ユリとかちょっとした知人レベルだし。
■テキスト
最高すぎる。このゲームの最大の魅力。
流暢な文章ではなく、ウィットに富んだ会話は少なく、唸るような言い回しも多くない。
文章はかなり拙い部類ではあるが、
だからこそ、キャラクターの想いが過不足なくダイレクトに伝わってきた。
その魅力を最大限に発揮したのが過去篇。
頭が弱く、生活力もないが、
息子に対する、純粋で、真摯で、無尽蔵の愛(情)をこれでもかと表現している。
息子のことを想うだけで幸せな気持ちが溢れてくることが、痛ましいほどに伝わってきた。
キャラクター、世界観、エロゲの特徴(実況調一人称かつ、1行が短くてもいい)のすべてが噛み合ったチャプターだった。
■キャラクター&個別シナリオ感想
全体的に好印象。クリア順に記載。
●勇介:○
クセは少なく、素直に共感できるキャラクター。
●晴子&もえみ:○
一周目ということもあり、現実の辛さを存分に味わえた。
Hシーンが挿入なしなのが残念。抜けなくはない。
●雪江:○
シナリオは良くもなく悪くもない。
作中で最も抜けた。
盲目である大人の女性に、"私をおもちゃにしていいよ"とか言われたらそりゃね。
●さえか:○
サブヒロイン連中の中では一番好き。
喋れないヒロインっていいっすね。
しかし終盤で失速。なぜそうなった…全然抜けない。
●彩&ユリ:△
彩はギリギリ同情できないレベルだった…
Hシーン周辺がコピペなのも良くない。しかも抜けない。
●恵:◎
作中で最も性的な魅力のあるキャラクター。なんで個別シナリオがないんだか。はぁ…
気丈で利口で頼れる妹。最高じゃないか。
このゲーム、家族とのHはNGという価値観は捨てていいと思う(テーマ全否定)
●マナ:◎◎◎
母親のようでもあり、恋人のようでもあり、家族でもあるメインヒロイン。
最後の赤髪マナの疲れきった顔のCGがすご~く好き。
マナ篇ラストは作中で一番じぃんと来てしまった…
マナだけHシーンが特別なのも良い。勇介なら絶対やらない行為だし、そこそこ抜ける。
HするルートがBADENDなのも印象的。情>愛の価値観の体現か。
しかし…地毛が赤髪っていう設定は何故に?
●ミルカ:◎◎◎◎◎
前述の通り、本作を象徴するキャラクター。最高。抜けない。
●マノ:◎
やっていること(母親を裏切る)はむごいが、それはそれとして共感できるキャラクター。
いずれ親離れするのが普通、という現実社会の価値観のためか。
●シエ:○
サブヒロイン連中の存在を一蹴しかねない爆弾発言シナリオ。
スシのキャラが良かったので真回想篇より旅情篇のほうが好きだったり。抜けない。
●柏木家:○
あまりにも不憫な役回りだったが、最後の最後でようやく報われた…
でも恵シナリオがないのは本当に残念。何度でも言う。
■音楽
素晴らしいの一言。
特に日常系BGMがいい味出してる。
サウンドモードがないのが実に残念。
■グラフィック
背景:微妙~普通。幻想的な部分はいいが、現実篇は酷い。クソデカ"○X駅"はギャグでやってんのか!?
立ち絵:普通。キャラデザも普通。
CG:微妙~普通。最終章のエンドイラストは良かった。
■システム
古いゲームだから仕方がないとはいえ、不満は多い。
セーブ数が30しかない、既読判定がない、非アクティブ時にオートモードが発動しない、モノローグの速度がバグじみた早さ。
■そのほか
AIRを思い出すシナリオ構造。
突然物語がガラリと変わったり、逃亡の果てに悲劇があったり、別キャラ視点で物語の核心に迫ったり、家族愛がテーマだったり。
どっちが先とか、どっちが良いとかって話ではないです。