丁寧に作られたシナリオが最高。ユーザーの求めていた以上のものがあった、そんな作品。
このゲームは、至って親切にプレイヤーの期待を裏切らず、エロゲーの王道を守っています。タイトルこそ奇抜ですが、終わってみればこれほど内容を表していて、かつインパクトに残るタイトルはこれだったと理解しました。
エロゲーの王道、といっても、その時代にあったものがあるわけですが、
基本、メインヒロインは主人公と以外エッチしない。
テンプレ通りの学園もの、眼鏡委員長、生徒会長も奇抜ではあれ「学園モノ」によくあるおなじみの立ち位置です。カリスマ性、風紀委員長の規則への厳しさなど。
両親のいない兄妹、お互いが大好きな兄妹。
朝起きるのが苦手、PC、プログラミングに強い、日常生活に介護を要する妹も、エロゲ世界では何度も見たテンプレです。
ヒロインみんなの水着も、みんなで温泉もあり、ちゃんと押さえてます。
しかし。
この作品から得られる楽しさは、それらテンプレ、王道に乗っ取りながら、「他とは違う」面白さ、楽しさを作ったのは、ひとえに、
「抜きゲーみたいな島」という、少し常識をずらしたどころか、世界を反転させた世界観です。ここにプレイヤー(=主人公)が放り込まれてさてどうするのか。
この設定の上手さと、その設定を生かし切ったシナリオがこの作品の素晴らしさであり、
製作者が苦労しつつプロットを切りセリフを考え、色を付けて独自の世界を作り上げ、
気が付けば主人公と一緒に悩み、苦しみ、カタルシスを得る。本当に素晴らしい作品でした。
王道エロゲポイントを押さえて物語を作り、そこに抜きゲー要素を加えて、
セリフやイベントを作って。こういったところの芸の細かさと努力は、楽しみと苦労があったところかと思いますが、大変楽しめました。
主人公も、流されるだけのヘタレでなく、努力して失敗して、苦労して鍛えて、
なんとか勝利を掴もうとする頑張りなところが丁寧に描写され、愛すべきヒーローとなります。主人公、高得点です。そりゃ惚れられるわ(チンポの大きさとは別に)
チートとしては、主人公の(女性をあそこまでも満足させられるゲームにとっては都合のいい、本人にとってはコンプレックスな)チンポと、戦闘時の謎アイテムくらいでしょうか。
で、ネタばれ含むルートについて。
1)ヒナミ先輩。
明るくて、大事なところでいろいろ気が付いて、とってもいい子。
ただ、個別で語られる礼先輩のほうが身の上話かわいそうで…(´・ω・`)
礼先輩ルートが欲しいけど、処女厨主人公のルートにいきなり持ってくるのはあかんのやろなと…
2)奈々瀬。
最高! 女神! 幼馴染枠だけど主人公に忘れられてて。ビッチと誤解されつつ否定せずこらえて身の回りのお世話して、家事全般できて。最高だわ嫁に欲しいわ!
3)美岬
青藍島育ちの処女だが業が深い…勝手にオナニーするわアナルが弱いわ、いや訳が分からないってところですが、でもかわいいよね。
乗り物系全般運転できるという不思議能力付き。
他、たくさん魅力的なキャラ。
敵たるSS、SHOのメンバーも。
大人の男たちも。まともな大人がいるとゲームの軸がしっかりするとかシナリオが立つとか言われてますが、まともかどうかはともかく、信念をもってぶつかることができる大人たちもかっこいいです。
4)文乃
かわいいよ!
できればお母さんも生きてて3Pしたかったよ?
いやむしろお母さんを寝取りたかったよ?
ルートとしてはオーラス。よくある「みんなで頑張る」みたいな。HHGのtrueとか、ワールド・エレクションの最後とか、他にもいっぱいある、
「みんなが出てきて主人公を助けて盛り上げる」という。でもこれが良く描かれていて、(どうして都合よくお前はそこにいるんだよ!というツッコミはあるものの)テンプレだから、お約束ですし、と思いながら進めて、一度離れたキャラたちとの再会を喜びながら進めました。
この物語の真の見どころは、主人公の目的がかなった後のところからですね。
「ドスケベ条例」が撤廃されたあとのところですね。
ある意見が通った場合。それによって不都合となる立場の人、逆にマイノリティになってしまう人たち。どの社会でも、何らかのルール、善悪があればやむを得ない事情によってでも弱者が生まれてしまうこと。
主人公やこの登場人物たちがかっこいいのは、それらを何とかしようと頑張る最後のところですね。
マイノリティの生きにくさとか、極論に走るとあぶれた人が~とか、そういった社会学の問題を取り上げることもできるのですが、
この主人公たちが選んだのは。共存。それを掲げるというのは、相手の価値観を認めること。
自分の価値観も、相手の価値観も認める。どちらも尊重するが、相容れない場合もある。その場合に、どういった落としどころを作るか、それを考えられるか、実行できるか。
どこにも、そういった相容れない価値観同士の争いがあるわけですが、双方尊重しつつ歩みよれればいいなと思います(私の理想)。
話し合いによる解決を求めれば、決定は何十年後になるかわからない。
武力による解決ならすぐに終わる。どちらがよいのか。
そういった話が確かセミラミスの天秤にあったような気がしますが、
本作は力で方向を決定しつつ、程よい落としどころに落ち着いたと思います。
途中、見え見えの山あり谷ありで、ああまた失敗して苦労して頑張るのかなぁ、とワンパターンに感じられた部分もあり、
そこは次回への期待ですが、この企画、プロットを考えた人、シナリオのセリフ考えた人のすさまじい努力を考えれば些細なことです。
あのパターン豊富な喘ぎ声は爆笑もの。もしかしたらこの世界なら俺はモブでもよかったかもしれないぜと思わせてしまう。
というか、モブのほうがセックス回数多いし楽しんでるし。
ああ、楽しかった。
私は、作者の過去作(同人)のほうもプレイしてみようと思います。
この作品だけでは底知れぬ才能、まだ見ぬ世界が楽しみで仕方がないのです!
次回作(FD)を作成することになったとのこと、期待して待っています。
ここからは追記)
最初に勢いでいっぱい書いたけど、書き足りないことがいっぱいあるので、周回プレイしながら気が付いたことなど。
どの部分を見てもなんだけど、言葉選びのセンスがすごい。手間がかかっている。このセリフの数々のアイディア、さぞ大変だっただろうなあと思うわけです。
例えれば、王雀孫氏の「それは舞い散る桜のように」とか、「俺たちに翼はない」のような、一言がすごく時間とをかけて描かれたような。
シナリオと絡む、という点や、個性とか出すところなど。美岬のセリフなんか、すごく楽しいですね。
あるいは、わたちゃん先輩√。
ハートマン先任軍曹も真っ青なあの罵倒の数々、愛を感じます。こういうことができるところがエロゲの魅力というか…
ネタいじるのがいいのかはさておき、すごくよかった。
礼先輩の過去とか成り立ちを知ると泣けるんですけど(´;ω;`)
IFストーリーとして、SSに入ったままSSを洗脳して、NLNSと一緒に敵を倒す、そんなルートがあればなあ、などと思ってしまいました。
SSがメインヒロインで、ハーレムルートもあって、みたいなのがあればいいなぁ。