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matgoyさんの魔法使いの夜 -WITCH ON THE HOLY NIGHT-の長文感想

ユーザー
matgoy
ゲーム
魔法使いの夜 -WITCH ON THE HOLY NIGHT-
ブランド
TYPE-MOON
得点
80
参照数
1534

一言コメント

5章終了時までなら90点はあったと思う。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この会社のゲーム等にはほぼ全て手をだしているため信者補正がかかっているかもしれません。
「分岐なし」、「声なし」ということは発売前からHPで発表されていた内容であり、わかってて突撃したので減点の対象にはならないと考えています。

このゲームをプレイして最初から最後まで言えることは演出が凄い、ということです。
それは映像、音楽ともに一級品といえるでしょう。
よくパソゲは紙芝居と評されますが、本作品を紙芝居などと自分は決して言えないです。
演出面に関しては手抜き一切なしの魂を感じました。

一方、シナリオについてですが、5章がピークであとは下り坂といった印象を受けました。
1~4章までは世界観の説明と日常を描くため、やや盛り上がりには欠けますが先が気になる描き方です。
そして、5章に入るとガラリと内容が変わりバトル展開となります。
いつものように言い回しがくどい文章も、熱い展開と勢いで気にならなくさせます。
さすがはタイプムーンと大満足して5章を終えました。


それ以降はまた平穏な日々に戻ります。
5章の盛り上がりの反動かもしれませんが、これが恐ろしく退屈です。

この日常を退屈なものとさせている一番の問題点は、今何が起きているのかが曖昧な点にあります。
支点が落とされていっていること、敵がいつもとは違うことは描かれていても、それが具体的にどう危険なのかがさっぱり伝わってこない。
支点が全部落とされたらヤバイって説明を青子は草十郎にしていますが、プレイヤーに与えられる情報も草十郎同様それだけに近いです。
青子やアリスの見えない敵への焦りや危機感といった感情はまったく伝わってこないです。
結局、プレイヤーは草十郎と同様この事件に関して蚊帳の外に置かれてしまいます。

そんな中、黒幕は姉の橙子さんでした~と突然現れて言われたところで、何を感じろというのでしょう。
そもそも今までの作品をしてきた人ならば、姉が黒幕なんてことはわかりきっていることです。
「あぁやっぱり」というより、「そらそうだろ」と言いたくなりました。

草十郎に関しても、首の布の詳しい説明や生い立ちといった人物の掘り下げが希薄なまま話が進んでいくため、感情移入がどうもし辛いです。
結果として草十郎にも、青子やアリスにも感情移入できないため、プレイヤーと各キャラクターが乖離した状況になってしまいました。
そんな状態で最終決戦を迎えても話に入り込めないのは自明の理です。

ベオを素手で倒すというトンデモ設定が気にならなかったのはきっと信者補正なのでしょう。
しかし、話の核となる魔法に関しての説明がぶっ飛びすぎてます。
というか、人に説明する気があるのか疑いたくなる内容でした。
今作で第五魔法について理解することは諦めました。

結局この話の主人公は誰だったのでしょうかね。
おそらく、草十郎と青子の二人と思われます。
価値観が完全に異なる二人が、少しずつだが近づいていく。
理解はできないまでも、知ろうと試みる二人を両者の視点から描きたかったのかなと思います。
しかし、その試みも前述の通り人物の掘り下げが浅く上手く伝わってこないため、読み手が置き去りにされてる印象が強いです。


これは延期の弊害ですが、エンディングの曲は1年以上前の曲です。
シングルだけでなくアルバムにも収録されているため。supercellが好きな人ならば何度も聞いたことのある曲で、今さら感がいっぱいです。何とかならなかったんでしょうかね。

本編終了時点では75点といったところでしたが、その後の番外編(内容とアリスのペンギンの着ぐるみ)を思いのほか気にいってしまったため、5点追加の80点となりました。