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mana1117さんの11月のアルカディアの長文感想

ユーザー
mana1117
ゲーム
11月のアルカディア
ブランド
LevoL
得点
70
参照数
1465

一言コメント

そこそこの良シナリオ。ただ主人公の性格ゆえか、裏切ってまで叶えるべき願いの切実さに比べて割り切りが悪くあれもこれもと望みだして「こいつやる気あんのかな」と思ってしまうことが少々。リミットがあるためそれで行動が止まったりはしないので基本はストレスの少ない良主人公の部類ですがね

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

妹の命とそれに対する自罰。
というダークヒーロー的な主人公設定の割に善人すぎ、かつ八方美人すぎてあれもほしいこれもほしい状態に
一応本人も分かってはいるみたいですが、裏切って全てをなかったことにするのが目的なのに、あの子に傷ついて欲しくないホントはみんな幸せになってほしい的な事を個別の度に何度も何度も葛藤しまくり
結果リセットが少ない状況でも迂闊な言動、行動、詰めの甘さをホイホイ量産します
主人公という制約のためやり過ぎた外道や悪道はできなかったのでしょうが、葛藤はまだしもこの辺の迂闊さはどうにかならなかったのか…


獅のおっさんとのラストバトルは正直微妙
言い方変えると薬キメてバーサーク状態なのでガアアアア!とか殺すうううううう!みたいな感じで、本人にきちんとした信念がある割に全く燃えない
それに関しても間接的に語られるだけでそこまで深く掘り下げがあるわけでもないのでただの邪魔者くらいにしか思えない。

こういうのは戦いながら自分の理屈とか信念をペラ回しながら叩きつけ合うのが醍醐味というか、ただ叫んでどっかんどっかんやられても燃えないんですよね。
もちろんやり過ぎというか技出す度にその仕組みをべらべら暴露とか始めると一気にダメになるので調整も難しいですが

主人公には妹や仲間、おっさんはアリスというきちんとした理由があるのに勿体無い。
オーブが砕けるとアリスは死んでしまう。それでもいいとアリスは望んでくれている、というのが主人公側の状況ですが、これに対して
「なんだそれは巫山戯るな知った事か。誰が何と言おうが俺はアリスが大事だ、生きていて欲しいんだ。ゆえにここは一歩も譲らない」
くらいのことを言ってくれれば大分見栄えが違ったと思うんですがね…
エピローグで妻子持ちになったっぽいが転生アリスと結婚したのか子供がアリスなのかいまいちわからん
アリスにストラップ持たせたなら最後のシーンで出せよと思う

あと眼鏡の小物臭もプンプンで分かりやすすぎる
どこかで協力させたり彼なりの夢や理想をキチンと語る場面があれば意外性とか「敵」として存在感あったのに

そして明確な敵対者である糸
体験版以降存在感はどんどん希薄に
特にシナリオ自体に関わらず、ライターの都合でその場その場の邪魔者や主人公のピンチ、EDまでの〆の区切りを都合よく作り出すための便利な駒程度の印象に
最後にポット出て掻っ攫おうとしましたが「あ、お前まだいたの?」くらいの認識
それと結局手引したの誰だったんだ
てっきり1月かヒロインの誰かかと思っていたのに特に語られなかった


全体的にシナリオ自体は悪くないのですが敵対者の描写不足や使い方のせいで戦闘シーンが総じて微妙な出来というか盛り上がりに欠ける感じでした。