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mana1117さんの時計仕掛けのレイライン -朝霧に散る花-の長文感想

ユーザー
mana1117
ゲーム
時計仕掛けのレイライン -朝霧に散る花-
ブランド
UNiSONSHIFT:Blossom
得点
90
参照数
430

一言コメント

正直出ないのではと思っていた三部作ラスト。暁やらグリザイアやら三部作の最後はうーん…なのが多い中、伏線回収といいきちんと終めてくれたので満足。黄昏の時点で伏線撒いてたってことは最初から大筋は決まってたのかな?だからこそ物語に無理なく完結できたのか。しいて言うなら出すの遅いよ!ってくらい

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

他で言ってる方も多いが2作目にあたる残影ほどにひっくり返される展開はない。まぁあちらは起承転結でいう「転」の部分が一番強いので、あれ以上に二転三転するのも中だるみする可能性があるわけで。
約2年?の間があいた朝霧に一番求められるのはきちんとした結末だと思っているので、そういう意味ではしっかりと終わらせてくれたと思う。

伏線によるどんでん返しはなかったが終盤の「真実」を明かされるあたりからの感動や盛り上がりでは過去作に引けを取らなかったと思うし、あのBGMからのモー子への告白と満流とのやり取りは最高に素敵でした。


個人的には満足しているがもちろん不満点というかこうしてほしかった、みたいなのは多々ある
・前回で復活した睦月ことおむつの出番
序盤で天然でちょいちょい過去に対する違和感を見つけたりもしますが、途中から攫われてフェードアウト。
裏でなにかに関わるでもなくラストまで出番なし。
これ、という役割もなく、しいて言えばみっちーとモー子に烏丸を意識させる、程度の存在になってしまっている。
・烏丸ことおまるの出番
これは仕方ないとは思うが、PVやOPのラストで意味ありげに背を向けて佇んでいる絵を持ってこられると、真相に何かしらの深い関わりがあるのではと思ってしまうわけで…
エピローグで20年後に再開して特査復活!はもちろん嬉しいのですが、本筋終盤でもうひと波乱起きて再び揃った特査で…というのが正直見たかった
・歩く失態さん
味方に魔女4人という既にチート気味なパーティの調整役なのだろうが、それ以外何もないという
味方として復活した際になにかしら活躍というか、兄であり当主に仕える者としての熱いなにかを見せてほしかった。
最後にルイが罵倒してるまんまで、完全に有能な無能というだけの存在になってしまっている。
・春霞と椿姫ちゃん
こちらは睦月ほどじゃないが途中抜けと終盤復帰。魔女とはいえルイほど物理的脅威じゃないのだからもう少しなんとかならなかったのかな、と
無駄なキャラがいなかったのはいいが、結果敵の人材不足になってしまい、その解決論が味方側を減らすというのが勿体ない
・アフターのリト
リトにシナリオやエロがあるのは嬉しい
嬉しいが、これじゃない
本編の後だと同じ過ちをして結末がBADに近いうえ、モー子やおまると出会わなかったどころか過去の人生そのものが違うせいでみっちーの口調や態度が丁寧というかオドオド気味というか「誰だコイツ?」状態
・他エロシーン
なぜスミちゃんをレズらせたし
満流は別にないままでいい。が、アフターとかで村雲とのちょっとしたやり取りが見たかったかな。不器用な2人の距離を見てニヨニヨしたい

細かい不満はまぁどのゲームにおいてもわんさか出てくるので、これは仕方ない。最後に、
・完全な『悪役』が不在
このシリーズ、シナリオはかなり読める部類だと思うが、雰囲気ゲーの側面が濃い。
なのであくまで優しい物語であるためか、真相・原因・黒幕は存在すれど、悪役やラスボスとまで言うべき者はいない(だいたい理事長のせい。みたいなところはあるけど)
おそらくプレイした方で「納得・満足」してもどこか「物足りなさ」を感じた人が多いのはこれが原因なのかなと
一作品が短いのもあるけど
ついでに雛さんだと発覚するのも本人の言動や行動に伏線があったわけじゃないのが残念
言われてみれば、な部分はあれどモブキャラの範疇ですし
気付いた時にゾクリとするような違和感や発覚の仕方が欲しかった

アフターのモー子は本当によかった
あの一枚絵はずるい
シリーズ3作通して嫌いにならず、少しずつ魅力が増していくメインヒロインって案外貴重だと思うの
この手の分割モノってよくどっかで(だいたいラスト)やらかしてコケるし、シナリオが良くてもヒロインは肝心のメインよりサブのが魅力的ってのが多いし


そんなわけで、間違いなく面白かったと言えるが、もう少しあの世界観に浸りたかったな
という感じ