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malkerusさんの群青の空を越えての長文感想

ユーザー
malkerus
ゲーム
群青の空を越えて
ブランド
light
得点
86
参照数
277

一言コメント

久しぶりにゲームやって泣いた作品(鬼畜エロゲーばっかりやってるんで当然といえば当然なのかもしれないが・・・)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

一年ぶりにココに書き込もうかなどと思うぐらい感動した作品。よかった点は他の方が色々書き込まれてますので、あえてこの作品に物申したいと思います(少々長すぎるが・・・・・・)。

民族と遺伝子の関係

 このゲームをやってみて特に違和感を感じたのがこの点です。
 民族とは「言語」「宗教」「文化」「歴史」を共有している集団のことを指します。しかし、この物語の前半に萩野憲二氏が「遺伝子統計学を用いて、弥生人・縄文人の人種的差異を発見」なる文章が登場します。
 可能性の問題として、現実に弥生人と縄文人の遺伝子的差異が見つかる可能性はわずかながらありますが、現在の民族のカテゴリーに当てはめるのは無理があります。
 何故なら、遺伝子情報から得られることは案外限られているからです。
 例えば、白人と黒人の遺伝子的差異はまったくといっていい程ありません。こういうと語弊があると思いますので、多少詳細を述べておきます。
 遺伝学でほぼ最初に学ぶのは「メンデルの遺伝」だと思います。
 ここでまた例を一つ、花の色で優性遺伝子Aが青、劣性遺伝子aが白と仮定して、AA遺伝子を持つ青色の花とaa遺伝子を持つ白色の花を交雑すれば、すべて青になるという奴です。
 ここでいうAA遺伝子の青色の花とaa遺伝子の白色の花の違いというのは遺伝的差異と言わず、形質の差異といいます。要するに黒人と白人の違いというは遺伝的差異ではなく、形質の差異です。背の高い人と低い人の違いと同じです。
 でもって、今地球上で生きる人間は特殊な遺伝病にかかってない限り、遺伝的差異はありません(もちろん、今後見つかる可能性はありますが・・・)。ということで、遺伝子レベルで民族をカテゴリーナイズことは出来ず、さらには形質レベルにおいて分類することは出来ることはできますが、その精度は人間を見た目で判断するのとほとんど同じです(これについての説明は字数の関係から省略)。この物語上では、遺伝子情報だけで、民族のカテゴナライズが出来るように書かれていますが、実際には出来ません。

10/10付記

民族と遺伝学について
考えてみたら、何で私がこのことを述べてるのか理由を書いてなかったので、述べることとする。
この作品中に出てきた遺伝学の認識は、現実の未来に新たな「差別」を生み出す可能性があります。もしこの間違った遺伝学知識が流布されたために、遠いか近いか分からないが、新たな「紛争」小規模的には「いじめ」ようなものが発生するかもしれません。正直、私はこのことを危惧してます。
 大分前に、遺伝子情報で将来人が「殺人」を犯す確率を導き出すということをテレビでやっていたのを思い出しました。これも上記と少々視点が異なりますが、これもいつか比較的簡便に遺伝子診断などが出来るようになると、一つの差別、偏見をもたらす一つの要因になりうるかと思います。この場合、遺伝子情報で知りえるのは、感情的になりやすい素因をもっているか分かる程度ですし、長年の経験あるいは努力によりこういった遺伝的な性格素因の影響はほとんど取り除くことが出来ます。それなのに、テレビでは、こういった点にはほとんど触れずに、「感情的になりやすい遺伝子」をどれだけ多く持っているかだけで、確率を求めようとしてました。
 とまあ、ゲームの内容と関わりのないことを永遠と述べるのは忍びないですので、この辺で・・・・・・ちなみに、社が長田圭子を見て「典型的な弥生人顔だ」などという文章がありましたが、どんなに遺伝学が発達してもこんなことは起こりえません)。